情報師
視点アキさんです
「逃げろ! 逃げろぉぉお!!」
「きゃぁぁああ!!」「助けてぇえ!」
たくさんの爆発音が聞こえ始めて三十分以上が経っている。
「皆様! 今すぐロピアルズシェルターへとお急ぎ下さい!」
道行く人達は全員ロピアルズの人に指示をされてロピアルズシェルターへと向かっている。
こんなに大きな避難を見るのは人生で初めてだ。
ロピアルズの人に言われて逃げてる人は全員一般市民。魔力は持ってても、力が弱い市民達。
そんな中で私は……。
――どこへ向かっている?
簡単だ。私もその後をついて行けばいい。だけど足が動かない。
本当にそれでいいのかと自問自答してしまう。
おそらく今回の爆発音はヘレスティアの襲撃だ。戦争を仕掛けるつもりだったのだから今回の件に説明がつく。
だから何の『力』も持たない一般市民である私はこのままシェルターへと逃げればいいのだ。
逃げれば、いいのだ……。
だけど足が一歩も動かない。立ち尽くしたまま足が一歩も動いてくれない。
どうしてと問いかけてみても動かない。
足が動かないまま三十分ぐらいが経過して爆発してから一時間以上経過された。
もはや周りに人なんていない。
「……こんな所で何をしているのアキ」
聞いた事がある声が聞こえてシェルターとは反対側から来た人物を見た。
いつものように見慣れた漆黒の黒髪。その手に持つは銃槍という珍しい武器を顕現している。
「白夜ちゃん……」
物静かで無表情な白夜。そんな白夜の銃槍を持つ右手には返り血が浴びられている。おそらく戦ったのだろう。それでこの場所まで来た。
白夜は戦ってる。それは力があるから?
「白夜ちゃん。白夜ちゃんはどうして戦うの? 怖くないの?」
私は思いのまま白夜にぶつけてみる。
「……それは取材?」
「ううん。新聞にこんな事書けないよ……」
そう言うと、白夜は左手で顎に当てて、それからまたこちらへと視線を戻した。
「……私には目的がある」
「どんな?」
「……それは言えない。……でも、とても大切な目的」
そっか。白夜は自分の目的のために戦うんだ。力があるからとかじゃないんだ。
「じゃあさ、どうして動けるの? 私、怖くて動けない……。リクちゃんの助けにはなりたい。でも、神様にも見捨てられた私なんかじゃ……ダメなのかな……」
「……神様に見捨てられた?」
白夜が訝しげな声をあげる。何か癪に障った所でもあったのだろか。
私は疑問を浮かべていると、白夜は口を開く。
「……アキはまだ見捨てられてなんて無い。……それだったら、神聖な力がこんな所に集まるはずが無い」
白夜の左手が、人差し指が私の額に伸びる。
トンッと白夜が触る。
その時だった。
「……眠ってる記憶。……その封印を壊してあげる。〈ブレイクキャンセル〉」
白夜の手から急激に伸びる魔力。それが私の頭の中へと入ってきた。
次の瞬間に頭の中に響くガラスが割れる音。
――掛けられていた魔法が、壊れた音。
私は目を見開く。
たくさんのフラッシュバック。あの守護十二剣士の試練を受けていた時の記憶。
そのすべてが頭の中に浮かんでくる。
「あ、ああああ…………」
小さな小屋。
その前に居るヘル。
ヘルから放たれる魔法。
飲み込まれる私。
そこで見た両親の夢。
そして、両親の死体とその犯人――。
『こんな所で何をしているのね? 〈狂い咲く腐敗花〉』
小さい頃のハナ。
ハナはいつものような楽しそうな顔で私を見ていて、楽しそうに枯れているとしか形容できない数々の植物が鋭い堅さを持って私の体を複数回突き刺したんだ。
「い、いやああぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!」
私は頭を抱え込み、そして地面へと塞ぎこんでしまいそうになる。
そこを白夜が抱きかかえてくれる。
「……落ち着いてアキ」
「無理……無理、無理だよぉ! だって! だって!! お父さんと、お母さんが……おじさんと、おばさんが……ハナに!! ハナに殺されて!!」
信じられないし信じたくない!!
ハナはいつも私の後ろをついてきていて、いつも笑って話してくれて、いつも一緒に過ごしていて、いつも一緒に新聞作って、いつも一緒に……。
「……レナだって、風香という専属メイドがいた」
「まだいいじゃない! 私は従姉妹なのよ!? それでいて、双子のように遊んで来たのよ!? そんな簡単に受け止めれるわけ無いでしょ!!」
いつの間にか白夜の胸倉を掴んでいる。
白夜は悪くないのに。悪くないのにどうしてもこの手は放したくない。放したら、まるで自分が認めてしまったみたいで、そんなのが嫌で……。
「……それだけじゃない。……裏切りなんてたくさんいる。……世の中はいつだって信頼し、裏切るなんて当たり前。……力がある方につく方が賢明」
「それって、ハナがヘレスティアについた理由がヘレスティアの方が強いと考えたから!? そうなの!?」
「……それは当然。……だってライコウに強者はいないから」
「それだったらカナさんがいるじゃない! 英名がいるじゃない!!」
その人達と、ロピアルズの面々がいれば、勝てる戦いのはずだ。
特に、あの底しれない力を持つリクの母であるカナとそれと同等と言われている英名が――。
「……いない。……ただの英名だと相手にならない。……英名の中で相手になるのは【終焉を知らせる者】と【自由な白銀】だけ。……その内、【自由な白銀】は戦えない理由がある」
きっぱりと言い放つ白夜。その瞳は無表情なだけでまったく読み取れない。
「カナさんに、戦えない理由……? こんなときに、こんな国が大変になっている時に戦えない理由ってなんなのよ一体!!」
「……それは本人から聞くといい」
白夜はそう言うと、私が胸倉へと握っていた手をゆっくりと引き剥がした。
それから、私の手を取って白夜が黒い宝石を渡してきた。
「……これを持って行くといい。……力が手に入るし、ハナを殺しに行ける」
殺しに……?
私が、アキが、従姉妹の妹である、『ハナ』を、殺す?
「……これは破壊の力。……悪魔や神なんかを簡単に砕き、粉々にする魔法。……その手に宿らせ、破壊したい相手を触ればいい」
触れば……壊せる……。
「……アキ。……貴方は復讐者。……復讐するために、アキはハナを壊すの」
私が……ハナを……。
――でも、そんなことできるハズが無いじゃない!!
「できる訳ないじゃない! どうしてそんなこと言うの!? 白夜ちゃん……本当に、白夜ちゃんなんだよね……?」
私は心底怖くなった。今目の前に居る人が、まるで別の人のようで……。
ふっと、今一瞬だけ白夜が笑ったように感じた。
「……抵抗、できるじゃない」
へ? と、私は今までの空気が突然ぽかんと浮かび上がったような気がした。重かった空気が、なぜか軽い。
「……ほら、貴女は今のトラウマを自分で乗り越えれた。……少し力貸したけど。……上出来」
白夜が指さす。私はその指が指された場所を目で追った。それは私の後ろを指しているようで……。
急に、後ろに向けなくなった。腰に何か抱きついているのだ。
私はあげていた視線を下へを向ける。そこには、白髪の少女が抱きついていた。
その少女は……。
「ヘル、ちゃ、ん……?」
「ヘル、の、マネ?」
見上げる少女。どこからどう見てもあの自分でヘルと名乗った神様で……。
「詠、を、歌って。貴方、はもう、試練、はクリア、した、から」
「詠? そんなの、どうやって……」
そう言うと、ヘルは無言で指を指した。
そこはロピアルズシェルターとは真反対。学校でも無く、有名どころでは無いただの無名のビル。
「ヘル、の場所、家、は、空。一番、高い、所、が、一番、呼びや、すい」
そう言うと、ヘルはスーっと消えていった。
「まって、る」
それだけの言葉を残して。
一番高いビル。その屋上で詠を歌う。
今さっきまで力が無いために物語からリタイア寸前だった私に戦えって言うの?
私は白夜へと視線を戻した。
白夜は何も言わずにコクンと頷いてくれた。
私はそれが嬉しくて、白夜の横を走り抜けた。
「待っててヘルちゃん! すぐに行ってあげるから! 〈ジャンプ〉!」
足に魔力を溜めた魔法を発動。
先程とは比べられないほどの清々しい気分で、ライコウの一番高いビルへと走って行った。
力を得ようと思ったのはほかでもない。
ハナに……。
自分の従姉妹である妹を説教をするためだ!
一人残った白夜はそのアキの背中を見えなくなるまで見続けた。
「……残り自らが解放していない守り人は修羅と魔神と創巫か。……どうやって覚醒させようか」
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