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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第六章 開戦
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死神(ゴットオブデス)

視点はキリさんです


 突然の爆発音。それに気がついた俺は家に入ろうとした足を止めて振り返る。


「キリ、今のは……」


 家の中で俺を待っていた弦は不思議そうに俺と同じように爆発音のした方向を向いた。

 一体誰が戦っていやがる? 最近は落ち着いてきただろうライコウの街並みで戦闘をする輩なんて誰が……。


 ヘレスティア。


 その単語が俺の頭の中に浮かんできた。

 そう言えば五刑囚はすでにライコウへと来ている事は知っている。まさか戦争を始めるためにまず内側で始めるつもりか?


「弦。わりぃが俺はまた外出する。留守番頼む」

「いいのか? なんなら俺も行くが」


 弦が来る、か。確かに【雷豪】の二つ名は伊達じゃない。だがその力はヘレスティアに通じるか?

 相手は悪魔を使っている。弦は神や悪魔などの力なんて一つも持っていない。

だけどそれは俺も同じだ。まだ契約はしていない。この力がどれだけ通じるか……。


「どうした? 俺が行くと何かマズイ事があるのか?」


 心配そうに覗きこんでくる家のメイドに、俺はやはり行かせるよりも家を守らせた方がいいなと考えた。


「いや、大丈夫だろ。だけど弦は留守番頼む。家を壊されちゃ困るからな」

「わかった。主人の命令は聞かなくてはな。行ってらっしゃいませキリ様」


 俺は弦が頭を深く下げて見送るのを黙って頷き、その場で魔力を解放してまずは一番初めに爆発音がした場所に向かおうとしたのだが、またも爆発音。しかも今回は病院がある方面とあっちは……桜花魔法学校がある方面だ。


「……チッ」


 それぞれ三か所から魔力を感じる。

 だけど、一番大きい魔力を感じるのは桜花魔法学校だ。一番小さいのは市街地。次に病院。ただ、それを覆い尽くすように桜花魔法学校に居る何者かが魔力を放っているのだ。まるで誘っているように。

 走っていると、上空に見た事のある鮮やかな深紅の翼を持つ鷲が飛んでいる。


「マナ!!」

「この声……キリ!?」


 俺の声に気づいたようで、上に飛んでいた鷲が下へと降りてきた。


「上空から見たらどうだ!? どこが一番やべぇ!」

「あんたも気づいてるかもしれないけど学校が一番強い奴! 次に病院! だけど一番被害が大きいのが病院なの!」


 病院か。こっから一番遠い。


「あと、市街地だとリクちゃんとソウナさんが戦ってる! 魔力がそこから感じるから間違いない!」


 マナは魔力操作が極端にうまい。まちがいなくそこに二人は居るのだろう。

 としたら、ロピアルズの強者、もしくは神使いがいない場所は学校と病院か。


「わかった! お前は病院を頼む! 俺は今から学校に行ってそいつをなるべく防いでみる! 応援を待ちながら死なないほどにやれ!」

「そしたらリクちゃん達には誰が助けに!?」

「ロピアルズが何とかしてくれるだろ!? あいつらがこの状態に気づいていないはずがねぇ! 家の中閉め切っててもこの爆発音は聞こえたんだからなぁ! 行けぇ!」

「うぅ……分かった! あんたは神持ってないんだからくれぐれも死なないようにね!」

「一言余分だこの野郎!」


 マナは俺の話を聞かずにそのままフィエロに乗ってここから一番遠い病院へと向かって行った。

 俺はこのまま学校へと向かう。リクとソウナがいれば何とかなるだろう。


「我が名はキリ。〝雷舞の豪将〟。狼の如く這い回れ! 〈雷迅〉!」


 その四肢に雷を纏い、体全体に雷を帯びる。

 一秒でも早く到着して真陽と共闘できればいいだろう。俺の予想では学校に残っている先生達が共闘をしているだろうが。

 だが俺よりも弱い先生達がいつまでも防げるとは思えない。


「よっし、着いたぁ!」


 俺は桜花魔法学校の正門までくる。魔力はベクサリア平原から感じる。

 俺は正門をよじ登り、そこから跳躍して走りだした。

 そして俺がそこで見た物は……。


「な……ッ。おい、大丈夫かよセンコー!」


 向かう途中で発見するのは先生達。血を流して倒れている姿が見える。

 肩を揺すってみるも反応は無く、一部に至っては息すらしていない。


「う……その声……。キリ……か」


 声が聞こえたと思うと、草むらで倒れている先生たちの中で学校に居る間は毎日というように顔を合わせているアーマメント組担任、茄波利光の姿があった。


「あぁ俺だ。何があった!?」

「逃げ……ろ。今は……真陽先生が……何とかして……防いでいるが……無理だ……。お前じゃ……足手まといにしか……ならん……ゲホッゲホッ」


 すがりついてくる利光先生。自分の方が死にそうなのに人の心配なんてしやがって……。


「わりぃな。それは聞けねぇぞ」

「く……この時ぐらい……聞け……キリ!」

「無理だ。やり返さねぇと気がすまねぇンだよ!」


 俺は利光をそこに寝かせて、衝撃音と爆発音がする方面へと走って行った。呼びとめる声がかすかだが聞こえるが、俺は聞こえないふりをした。

 そして二人の姿が見えてくる。

 一人は真陽。いつもの着物姿でその手に持つ黒剣を振るっている。

 もう一人は黒髪で来ている服はシャツにスカート。そしてマントをはおっている。その顔はとても見覚えがあり……。


「白夜ぁぁぁああああああ!!」

「……キリ」

「キリ!? 何で此処に居る!?」


 声を張り上げて真陽と白夜が同時に振りむいたその直後に拳を繰り出した。

 白夜はその手に持っていた銃槍を盾へと(、、、)変えて(、、、)俺の拳を防いだ。

 反動で白夜はしばらく後ろへと足を滑らせるが、停止すると盾へと変えた武器が銃槍へと戻っていった。


「テメェ、どういうことだ!! ヘレスティアのスパイだったのか! あぁ!?」

「……うるさいのが来た。……もうちょっとで真陽に止めを差せたのに」

「テメェ……ッ!」


 よく見ると真陽の着物はモノクロのはずが鮮血で少し赤く染まっている。黒だから見にくかったが隣に居るとよくわかる。

 それに比べ白夜には血が一滴も垂れていない。


「俺の質問に答えやがれ! テメェは今まで仲間だった奴等の気持ちを弄んでたのか!!」

「……そんな事ない。……とっても楽しかったよ、キリ」


 白夜は笑いもせず、怒りもせず、ただ淡々と無表情で話すだけ。

 そんな態度に俺は怒りをこれでもかというほどにこみ上げていた。


「そんな無表情で答えられても分かるはずねぇだろうが!!」


 何より、今のこの状況では説得力は皆無だ。


「……質問に答えたのに怒るなんて酷い」

「だったら少しはしてやったりみたいな顔で言いやがれ!」


 俺がそう言うと、白夜が少し押し黙った後で話し始めた。


「…………。……私は笑えないし、怒れないし、泣けない。……喜怒哀楽なんて感情はずっと昔に壊れた」

「ハッ。戦闘狂って奴か? ただ戦うために生まれたとかって奴か?」

「……なんとでも思えばいい。……ただ、これだけは言っておく」


 白夜は銃槍を構えて、矛先をこちらへと向けてくる。


「……私は別にヘレスティアの犬じゃない。……ただ目的のために動いているだけ。〈黒砲〉」


 黒いエネルギーが凝縮、放たれる。

 とっさに横へ飛ぶと、後ろにあった学校を貫いて大穴を開けて行った。

 その威力にゾッとしながら白夜へと視線を戻す。


「お前、本気で殺す気かよ」

「……大丈夫。……真陽は殺すけどキリは殺さない。……世界より選ばれた守り人は生け捕りにしなければいけないから」

「はぁ? 俺が守り人だと?」


 なんだそれは、というような俺に対して白夜が答えてくれる。


「……確認されていない残りの守り人は統知、創巫、修羅、魔神。……キリはおそらく修羅。……アキが統知だとして、ユウが魔神。……残りは創巫だけど、それは今まで一緒に居てもそれらしき人物はいなかった」


 俺が修羅? 確か、そう言う名ならマナが爓巫だとか聞いた。

 もしかしてあいつらがソウナを天使と言っているのはソウナが守り人だからか?

 とするとレナも何かしらの名を持っているのか。リクと一緒に行く事を覚悟したレナも。


「……話しはここまで。……真陽、殺してあげるからおいで」

「キリ、あんたは逃げな」

「あ? 手負いのババア残して逃げれるかよ」


 それに許せないというのもある。今まで俺や……リクを騙していたんだからな。


「せいぜい休んでろ真陽! 〈雷迅〉!」

「キリ!?」


 先程の雷迅よりも高圧電。稲妻属性を発動した俺は一瞬にして白夜へと詰め寄って蹴りを放った。

 白夜はある程度落ち着いて対処。その手に持っている銃槍を手甲と脛当(すねあて)へと変えて蹴りを放った。

 ――ゴォォオウ!! と衝撃波を辺り一面へと爆発したその直後に繰り出した拳を白夜は避けると、カウンターで俺の顎をとらえた。


「ぐ、らぁ! 〈雷剛拳〉!」

「〈黒龍波〉」


 痛みに耐えて拳を腹めがけて放つも、すでに俺の腹に添えていた白夜の左手から黒い波紋が広がり、衝撃が体全体に流れて無様に転がって行く。


「ゲホッゲホッ。クソがぁッ」


 何とか受け身を取るも口から吐血。酷い量の血が流れ出てきた。


「何だよ、その武器はよぉ!」


 俺は白夜に取り付けられているその武器を見る。武器が形状変化するのは見た事はあるが白夜の武器は形状変化というよりも一度溶けて(、、、)再度作られたように見えたのだ。


「……これは私の半身。……いくらでも形は変えられる」


 白夜はそう言うと、手甲と脛当になっていた防具が一つに集まり今度は剣へとなった。ただ、その剣は前に一度見た事のある剣だった。

 そう、あれは光を司る守護十二剣士を助けた時だ。顔にパーティードミノをつけていたあの女が持っていた剣。

 とすると、あの速度で動いて姫様と戦っていた白夜はまだ俺に本気を出していないという事。


「チッ。ふざけてやがる!」

「キリ、私はもう十分休んだ! あんたは逃げな!」

「だから無理だっつってんだろうが!」


 後ろから真陽が声をかけてくるが俺には退くという二文字が無かった。


「……逃げないのはありがたい。……逃げたら探すのが面倒だから」

「くっ。いい加減にしな白夜!! 〈夢幻百花・芝桜〉!!」


 真陽のいくつもの刃に見える魔法が放たれ、全てが白夜へと降り注ぐ。


「〈ブレイクキャンセル〉」


 白夜がそう呟くと、パリィンッとまるでガラスが割れるような音がした。


「なっ!?」


 それは真陽の魔法を破壊する音だった。

 それだけじゃない。白夜の剣が真陽の黒剣を破壊していた。


「私の剣を壊せるなんて、あんたまさか破壊神ッ!?」

「……さようなら。……篠桜真陽」



 白夜の剣が真陽の喉元へと――。



「待てぇ!! 〈雷じ――」


 魔法が間に合うはずもなく。


 また、俺の目の前で一人――

誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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