嵐が始まる夕焼けの空
帰ってこれたボクとアキはホッと一息。いろんな事があったが、ともかく、帰ってこれたのだ。
「それよりリク。ユウは一緒じゃなかったのか?」
「ユウ? ユウならさっき寝たところで……」
さっきとは言っても二十分ほど前の話だ。
「よかった……。これでロピアルズのメンバーも、学生のメンバーも戻ってこれたな」
雑賀が確認するように頷いた。
「小姫様。ライコウへとお越しいただきありがとうございます。特に用事などが無ければこのままロピアルズ本社のカナ様の元までお連れしますが」
「わかりました。リク様!」
ボクは蜜に呼ばれて、振り向いた。
そう言えばしっかりとまだお礼を言っていなかったと思ってボクは蜜の元へと走って行く。
「御無事に帰られてよかったですね。あの方たちも安堵しております」
「いえ、蜜さんのおかげです。助けていただいただけでなく、ここまで送っていただいて、ありがとうございました」
深く頭を下げるボクに、笑いかけてくる蜜。
「御顔をあげてくださいリク様」
蜜に言われて頭をあげると、蜜はにっこりと笑っていた。
「私はこれからロピアルズにお世話になります。また話す機会がありましたらたくさんいろんな事をお話しましょうね」
「はい! ありがとうございました!」
ボクは再度頭を下げると、蜜はその様子を見て隣に控えていたロピアルズの人と一言話して連れられて行った。
その向かう先には豪華な車。よく有名人や大富豪の人などが乗っている横に長い車だ。タイヤは無く、浮いていたが間違いなくあの高級車だった。
ボクはその高級車が見えなくなるまで手を振り続けた。遠くに行って見えなくなってしまった所で、その手を下ろして胸に手をやる。
いつかあの人以上に強くなって見せる。魔力の扱いも、その力づよい身のこなしも。
「今の、ショウの女王様だよね~」
「さすがリクちゃんだ。想像の遥か先を行く」
「まさか、一国の女王様に対しても態度があんまり変わらないとはな」
「やっぱりカナさんの血筋なのかしら」
「わたくしはきっと何度会ってもよそよそしい態度は変わらないですわ」
何か後ろで言っているけど気にしない事にしよう。
「それでは、ライコウには入りましょうよみなさん」
「ん? あぁ、そうだな」
ボク達がいつまでもこうしてのんびりしていると、ライコウから走ってくるワゴン車が一台見えた。
ボク達の目の前までくると、すぐに窓が開く。
「久しぶりリクちゃん!」
「ひ、久しぶり、ですか?」
少なくとも一週間前には一度会っているではないか。だから久しぶりと言うのは普通はおかしいのだが、運転しているデルタのとぼけている話にまったくついて来れないも、ボクはそのままデルタを見ている。
「リクちゃん……。そんなに見つめられると俺のこの神の手がリクちゃん柔らかそうな体を這いまわりごはぁッ」
デルタが暴走し、車の外に出てボクへと襲い掛かってくるデルタ。
驚きつつもボクは何とかデルタの手から逃げ回っていると、デルタの顔面に何やら堅い物体がねじり込んだ。
「デルタさん。次は無いですよ?」
「ふぁ、ふぁい……」
どうやら妃鈴の拳がデルタの顔面にめり込んだらしい。
「く……どうやったら妃鈴の壁を抜けられるか……」
デルタは相変わらず諦めないみたいだ。いい加減そういう発言や行動を慎めばいいのになどと思う。前にも抱きつかれたし……。
そんなこんなで、ボク達がデルタという名の変態を対処していると……一人、反応がおかしい人が居た。
「師匠……?」
「「へ?」」
ボクとデルタの言葉が重なる。
「やっぱり……師匠……デルタ・インフォルダだよね!? 私! 武藤アキ! 覚えてますか!?」
「な、何……? 確かに俺の名前はデルタだけど……」
う~んと悩み始めるデルタ。
まさかアキの師匠がデルタだなんて思ってもみなかった。だってデルタは変態で、男にはとっても厳しくて――
『その師匠さんはどんな人なんですか?』
『すっごく、優しい人だよ』
――女に対してだけ物凄く優しい。
「そうだ! 俺がジーダスに入る前まで一緒に居た可愛らしい従姉妹たちじゃないか! 久しぶりだなぁ」
デルタはやっとの事で思い出してアキの頭をなでていた。
「も、もう子供じゃないんだけど!?」
「俺からしたらお前らは子供に決まってるだろ。あぁ、あの頃はこんなに小さかったのに、こんなにでかくなっちまったのかぁ。……良い熟れ具合だ」
最後ボソッと何かと呟いたデルタはアキを撫でながらうんうんと頷いていた。
「まぁ此処で話すのもなんだ。また今度にしような。お前ら、疲れてるだろ? 家まで送ってくぞ? ただし女性とリクちゃん限定だ」
「では遠慮なく」「ありがとねデルタ~」「お願いいたしますわ」「俺は元々走ってくつもりだったから問題ねぇけどな」「デルタ、海辺での写真何枚かでどうだ?」
なんかいきなり収集がつかなくなった。
初めのデルタの所で突っ込めば良かったのか、それとも遠慮なくデルタの車に乗って行く人達につっこめば良いのか全く分からなかった。
「リクちゃん達は乗らないのか?」
デルタはそう進めてくるけどボク達が乗ったらとてつもなく狭いじゃないか。人数オーバーだとわかっているからボクは断っておいた。
「いえ、ボクは歩いて行きます。乗れないと思いますし、しばらく船に乗っていたから歩きたいんです」
「……リクちゃんに賛成」
「私は元々リクちゃんと一緒に家に居るからよ」
「そっか……。それじゃあ行くね。くれぐれも気をつけてな、四人とも!」
デルタはそう言うと、車に乗り込んでさっさと走り去って行ってしまった。デルタの服はロピアルズ諜報会の服だったからおそらく仕事中だったのだろうと思う。
それから、ボクは振り向いた。ソウナと白夜とキリがいるのはまだ分かる。
だがどうしてアキとハナがいるのだ……?
「リクちゃんにお礼、して無いからねっ。私は」
ウィンクをするアキ。お礼って……何?
★
あの後相談に乗ってくれたお礼、ということでボクと、ついでにソウナとハナの計三人は、アキに連れられて『スイーツ×スイーツ』に連れられて行った。
初めてのデザートバイキングにボクは満足していた。
それからみんなお腹一杯になったし、夕日が見えてきたから今日はもう帰ろうという事で帰宅する道を通っている。
「おいしかったわね。リク君、そんなに食べなかったけどよかったの?」
「ええ。だってそんなに食べたら夕食が食べられないじゃないですか」
ボクはデザートバイキングはほとんど食べなかった。
その理由は初めてきたはずのボクに対して店員がチラチラと横目で見ていたのだ。食欲がわくはずもない。
まぁそれでもおいしいスイーツを食べられたので満足はしている。
そして、ボク達はそろそろ地球へと変えれるゲートへと着くころ、それは起こった。
「どうしたのかしら?」
ソウナが後ろを向きながらそう言うのでボクも後ろへと振り向いた。
水平線を渡り歩くは一人の少女。とてもよく知る、ボク達の同級生で友達の…………。
「リクちゃん、ちょっと私と一緒に来てほしいのね」
【緋色の花】の二つ名を持つ『鏡詩葉菜』が、いつもの笑った笑顔で魔法を放った――。
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