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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第一章 白い髪の少女
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森の手前



「えっと、この森をそのまままっすぐ進むんですか……?」


 どう考えても何かが出てきそうな怪しい森。魔物がこの世界に居ると言われたら絶対にこの森にたくさんの魔物が徘徊しているだろう。


「そうですねリク様。この森を真っ直ぐ突っ切ればいいのですが……何だか森の様子がいつもと少しおかしい?」


 雁也がそこらにある木に手を当てて目を閉じる。


「やはり……。どうも木に流れている水脈が安定していません。何かあるのかも……」


 ボクは不安になるも、森の中を見渡す。すると、所々魔力が流れているような……。


「なんだったら森燃やしちゃう?」


 ユウがその手に大剣、エングスを呼び出して炎を纏わせていた。


「……火じゃ目立つ。……私がレーザーで全部消す」


 白夜がすでに銃槍を構えていた。


「いや、二人ともダメですから! 自然を壊しちゃいけません!」


 二人に言うと、二人は冗談と言ったような顔で武器を消した。この二人なら絶対にやりそうな所が怖い。


「好戦的だね~」

「って言うかよ。別にトラップかなんか会ったら全部ぶっ壊してけばいいじゃねぇか。なんか心配な事でもあんのか?」

「一番の好戦的な人はキリだったね~……。ユウちゃんが居るとつい忘れちゃうよ~……」


 最後の方が聞こえなかったが、当事者であるユウは聞こえたようで「どういう意味ですか? マナ姉」と似合わない敬語を使ってマナに詰め寄っていた。

 マナが冷や汗を垂らしているのが此処からでもわかる。


「ま、キリさんの言う通りですね。何とかなるでしょう」

「雁也さんって意外と適当なんですわね……」

「あはは。こう見えても任務以外はのんびりとしている性格なんですよ」

「それは見た目でわかってるわ」


 え? と言うような表情をソウナへと返す雁也。まさか気がついていないとでも思っていたのだろうか。


「何かあったら俺と妃鈴で何とかするさ」


 雑賀が妃鈴と目配せをして頷く。そういえば、先程から妃鈴が携帯を操作していたから会話に加わっていなかった。一体携帯で何をしていたのだろうかと思った時、妃鈴は携帯をしまった。


「今本部に訊いてみましたが、この森に木に流れる水脈が安定しないほどの魔力が漂うような場所ではないみたいです。情報が欲しいため、ヘレスティアに向かいながらこの森を調べてほしいみたいですが、どうしますか?」

「調査隊は?」

「派遣されるそうです」


 妃鈴の言葉に、雑賀が少し悩んだ後、頷いた。


「そうしよう。君達。何かおかしな現象などを見たら必ず言ってくれ」

「わかりました」「わかったわ」「りょうか~い」「了解」「……(コク」「わかりましたわ」「オッケー!」「了解♪」


 ボク達が雑賀に了承していると、ヘルはただジッと森の方を見ていた。その瞳にはまた文字が浮かんでいる。細かくて良くわからないが。

 と、その時。


「ギェェェェエエエエエ!!」


 空から大型の鳥が飛んできた。その鳥は嘴がかなり尖がっていて、あれに刺されたらひとたまりもなさそうな鳥だ。嘴は血で汚れている所を見ると明らかに獰猛類だろう。


 だが……。


「やれやれ」


 雑賀が肩をすぼめている内にその鳥は地面へと落ちた。

 なぜなら、その鳥の頭を光っている矢が貫いているからだ。


 鳥に目を奪われていたが、いつの間に弓を顕現したかもわからない雁也が弓矢を放ち終わった態勢でその場に立っていた。


「まぁ動物ぐらいだったらいくらでも狩れる自信があるね」

「お兄ちゃん! 今夜はこの鳥を使った料理だね!」

「これ食べるの!? ってか食べられるの!?」


 嘴に血がべっとりと付いていて個人的にあまり触りたくないのだが。


「この鳥、スウェル鳥って言って、肉食の獰猛類だけど結構食用として出てるよ! からあげとか、フライドチキンとか!」


 アキがこの鳥について教えてくれる。

 からあげか……。そうは言っても小麦粉とかその他いろいろあるだろうか。


「ンじゃあ血抜きぐらいやっとくか。あと、洗っといてやるよ。川もある事だしよ」


 そう言ってキリが川の方面へと親指を向ける。

 「そうだね~」とマナや他の人達が納得する中、ボクは少し頭の隅で引っかかっていた。



 ――川が近くにある?



 ボクは目を向けると確かに川がある。そのかわりに……。



 ――木が無くなっていた。



 ボクの記憶では確かにあそこには川など無く、木しかなかったはずだ。


 どうして……。


 そう考えている内にキリが先程仕留めた鳥を持って川へと近づいて行った。


「あ、ちょっと待ってください!」


 ボクはものの勢いでキリを止める。するとキリが足を止めてこちらに振り向いてきた。


「ん? どうした?」

「あの……その……」


 どう言い訳したらよいかわからず、ボクは戸惑ってしまう。


「リク君。どうかしたの?」


 ソウナもその様子におかしく感じたのか訝しげに聞いてきた。

 ボクは言い訳を考えている内に、アキの手をつないでこちらをジッと見つめるヘルと目が合う。その瞳には先程と同じような文字が連なっている。

 すると、ヘルは何を思ったのか、助け舟を出してくれた。


「そこの、川、は、危険」

「え? どうして?」


 アキが隣に居たヘルに聞き返す。すると、ヘルは元から知っていたように言葉を紡ぐ。


「その、川は、森、が作、った、幻想。惑わ、されないで」

「そんな事がわかるんだぁ。すごいなぁ……」


 あっさりと認めるアキ。


「幻想っつったって……森がそんなことできんのか?」

「この、森に、ある人が、居るから」

「ある人? ある人って誰ですか?」


 気になって聞いてみたがヘルは答えてはくれなかった。

 ヘルはそのまま何も言わずにアキの腕を引っ張って先程仕留めた鳥に手を当てる。

 すると、鳥から血がゆっくりと出てきはじめた。最終的に血がほとんど無くなったのか、これでよし、と言ったようにして手を引いた。その時には水に洗われたようにもなっていたので綺麗になっていた。

 水の魔法を使った様子は無かったが。


「それじゃあ後はユウがアイテムボックスに入れとくね♪」

「え? アイテムボックス?」

「ん? 四次元ポ○ットの方が良かった?」

「ううん。何でも無い。聞いたボクが悪かった」


 ユウに四次元(以下略)と言われた時に母もそんなものを持っていたような気がしたからだ。あの、どこからともなくいろんなものを出す母も。一つの魔法だろうと納得しておく。もしくは魔具と。

 とりあえず夕飯の一品が決まったところで、ボク達は森の中を進み始めた。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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