飛空挺
「ゆっちゃん久しぶり! 元気にしてた?」
「モチだよむぅちゃん! というか、どうしてユウ達を助けにこれたの? 黒騎士が言ったように、ライコウよりもショウの方が遠いのに……」
ユウはその女王様と一緒に来ていた一人――おそらくお付きの人なのだろうが――に挨拶をしていた。あだ名で呼びあっている所を見るとどうやら親しい間柄みたいだ。
「間にあってよかった。それではすぐにライコウへと帰りましょう。飛空挺は準備してあります」
飛空挺? そう思ったボクは空を見上げるその女王様の目線を追って空を見た。
空には何も無い。だけどもその何も無い空間に一際大きな波紋が広がったと思うと、そこに飛行機のような、それでいて船のような形をした大きい何かが現れた。
あれが女王様が言っていた、飛空挺……?
「では、テレポートいたしましょう。リク様、お手を」
「え? どうして女王様がボクの名前……」
「そのことは後で。それと、私の事は蜜とお呼び下さい。小姫八十二世は姫の肩書き。貴方様には是非名前で呼んでいただきたく」
ボクの質問にふふっと柔らかく笑いながら手を取って答えてくれる蜜。
「は、はい……蜜さん」
それでも呼び捨てにできる訳もなく、さん付けで呼ぶと蜜はまた柔らかく笑った。
「では、十。お願い」
「ハッ。では皆様、飛空挺へとご案内いたします」
十と呼ばれた片眼鏡をかけた男がアキの手を取り、反対の手で何かの機械のスイッチを押す。すると目の前が急に真っ白になり、視界が戻ったと思うとそこは何やら木の板の上に居た。
先程とは違ってそよ風があり、涼しいぐらいに感じる。その中で鎧を着た騎士がズラっと並んで綺麗に揃っている。
木の板には先端があるようで、その向こう側にはとても大きいプロペラが。先程見ていた飛空挺をとばしていたプロペラだろうか。
つまり、ここは飛空挺の上?
あの機械はどうやら飛空挺の甲板へとテレポートされる機械だったようだ。
「うっわぁ♪ ショウの飛空挺に乗るのって久しぶりだなぁ♪」
「ゆっちゃんが前に乗った事あるのは三年ぐらい前だもんね!」
二人が騒いで走りまくる中、ボクは未だに状況がつかめていない。とりあえず、味方だって事は分かるんだけど……。
「みなさん、ここに居ては夜風に当たって風を引いてしまいます。中に入りましょう。一日もすればライコウに到着いたしますよ」
蜜はそう言うと十を連れて騎士が並んでいるその間を通って行った。
しかし、騎士たちは自分たちの主が通って行ったあとも綺麗に並んだまま動こうとはしなかった。
「これって……私達が通らないと動かないのかな?」
「かもしれませんね……」
ボクとアキはどうせこの甲板の上ではどこに何があるのか分からないのだからと思い、意を決してその騎士たちが並んでいる間を通って行った。
人にじろじろと見られているみたいで落ち着かなかったけど、何とかその間を通って行くと、騎士が扉を開けて待ってくれていた。「ありがとうございます」と礼を言って中に入ると通路があって、騎士が案内をしてくれた。
そう言えば、ユウはまだ外に居るっぽいけど大丈夫なんだろうか。
前に乗った事があると言うし、何の問題も無いのかもしれない。
ボク達は騎士に案内されるまま突き進むと、一つの扉の前に止まった。
「こちらがお部屋になります。中に入って左手が治癒魔法の掛かったシャワー室となります。ベッドの上に着替えもご用意しておりますので、着替えたらお声をかけてくだされば女王様の元へとご案内いたします」
そう言われて扉を開く騎士。ボク達はそのまま中に入ると、扉は閉められた。中は綺麗に整えられていて、机とイスが二つあり、テーブルにはイスが四つ用意されてあった。ベッドも四つある所を見ると、おそらく四人部屋なのだろう。窓は丸い形をしている。
それぞれのベッドを見ると、服が用意されてあった。そう言えば森の中を走ってきたりしていたから服がビリビリで、血もついていた。
まぁボクの右袖は自分で破ったんだけど……。
「リクちゃん先にシャワーを浴びてきたら?」
「え? アキさんはどうするんですか?」
「私は傷ついていないし、リクちゃん右足斬られてるんだし足首痛めてるんだから先にいいよ。さっきっから飛んだままじゃない」
そう言えば、ボクは飛んだままであった事をすっかり忘れていた。ボクはゆっくりと床へと足をつけると、少し右足に痛みが走る。
足首もそうだが、右足が斬られているのでそれについての痛みの方が勝っている。
「じゃあ、先に浴びますね」
ボクはアキに断りを入れて右足を浮かせながらシャワー室だと言った場所の扉を開けた。中は脱衣所となっているからそこでボロボロの服をどうしようかと迷う。再度着ることはできないだろう。つまりゴミ箱行きとなってしまった。
ユウから借りた物だし、後で謝っておかないと。
そう思ってゴミ箱の中へと入れてしまった。鎧は傷はついていたが治せると思ったので捨てなかった。というか、ゴミ箱へ捨てるのはちょっとと思って捨てなかった。
血を止めるために縛っておいた布となった右袖を外すと、もうそこから血は流れ出てこない。取る時にパキッと音がして痛かったが、どうやらシラが気を聞かせて凍らせてくれたらしい。表面上だけだとは思うが。
裸の状態となった所で指輪を外す。長かった髪の毛が肩上ぐらいまでに戻るが黒騎士との戦いでいつの間にか斬られていたのか、鏡を見ると長さが少し不揃いとなっている。
シャワー室というだけあって中は畳の半分ぐらいの大きさだった。シャワーを取って冷たい水を出す。
まだシラを背中に顕現中だから熱いお湯を出す事が出来ないのだ。
その水を少し迷いながらも水をすくって少しだけ傷口へと滴らせる。
「~~ッ」
ちょっとの痛みと痺れが体に流れると、凍っていた傷口が段々と溶けてそして治っていく。
これは一気に掛けたら失神しそうだと思い、ほんの少しずつかけていく。
「はぁ……はぁ……。これ、かけるだけでもかなり痛い……」
『仕方ないじゃろう。水が傷口に沁みるのじゃから』
『なおっているしょうこですりく。もうたてるのではないですか?』
ルナとシラにそう言われて、ボクは飛ぶのをやめて右足をタイル床につけて立ってみる。すると右足首からも、右足の斬られた傷口からも痛みは感じてこなかった。
「す、すごい……」
『時間が立っておるから魔力しか感じないのぅ。覚えることは叶わなくて残念じゃ』
しかもそれだけじゃない。先程まで脱力していた体が今はそんなことは無い。自分の魔力が回復している。
ボクはそれなりに回復したし、用意されてあったシャンプーとリンスーで髪の毛を丁寧に洗い、それから体を洗ってバスタオルで拭いた。
そうしてからやっと気がついた。
(ボク、服持ってくるの忘れたぁ!?)
『アキさんに持って来させればいいんじゃないの?』
(ツキ。アキさんが普通に男性用の服を持ってくると思う!?)
『…………ドンマイ、リク!』
この後、仕方ないのでアキに服を持ってきてと言った所。案の定女性用。しかも水色を基調としたお姫様ドレスを持ってきた。
泣きたくなったのは言うまでも無い。
そしてツキが何故かお姫様ドレスの着付け方を知っていた事にも涙目となっていた。
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