崖際の戦い
サブタイは思いつかなかったんです……龍と書いたらこれから読む人のネタバレになってしまうのではないかと思い……(;・・
「あ、当たったら絶対に死んでるよね……」
アキがボクと同じように跡地を見ているが、あのアキが震えていた。
怖い物知らずと言った感じのアキなのに。
「ってそんなことしてる場合じゃないです!」
龍に目を戻すと、ユウが龍の周りを飛び回りながら注意を引いているおかげでボク達に追撃の炎は来なかった。
それにしてもあんな龍どうやって倒せば……。
ボクはその龍を注意深くみていると、少し気になる物が見えてきた。
龍の右目。そこに大量の魔力が蓄えられている。
(あれって……)
『リク! あやつ魔法生物じゃ!』
「え!?」
ルナがいきなり話しかけてきたのでボクは驚いて声を出してしまった。
「リクちゃん、どうしたの?」
「る、ルナが、あの龍は魔法生物だって……」
「…………へ? ま、魔法生物!? ただでさえ高等魔法なハズなのに、その中で龍を作るなんて……。これが八千年も前の人が作った魔法生物……」
アキの足が震えている。大丈夫……ではなさそうだ。でも、やって貰わなければいけない事がある。
「アキさん、お願いします。龍の動きを止めるような魔法ってありませんか?」
「む、無理だよ……。確かに〈パラライズ〉はあるけど、龍は効かないって言われるもん。少しは鈍るかもしれないけど……」
「無理じゃないです! あるんならお願いします! あの崖の領域は魔法耐性がゼロ以下になるような領域だと教えたはずです! 絶対に効きますから!」
「でも……」
アキが弱気になっている。ボクはこの世界で育ったような住人じゃないから龍がどれだけ怖いかなんて知らない。だから龍の圧倒的な存在感に耐えれているのかもしれない。
「なら。魔法を見せてください! ボクがコピーして使います!」
ボクはいつまでも魔法を発動しようとしないアキに目の前に立って、少し身を屈みながら強く言う。
龍の姿が見えなくなった事で少しは魔力を練ってくれる。
「なるべく遠くまで力いっぱい放ってくださいね?」
「う、うん。ぱ、〈パラライズ〉!」
アキが魔法を放った瞬間、ボクはすぐに身を逸らしてアキから放たれた魔力を避ける。
「あ……」
そして、すぐに全身に魔力を通し、身体強化魔法全開。ルナとツキは鞘に入れ、そしてルナの柄だけを掴み龍に向かって全力疾走。
「〈二の太刀 雪麗〉!!」
なるべく全力の魔力を使って龍に近づく。
その龍はというと……。
「GUGUU……」
翼が止まり、崖の下へと落ちようとしていた直後。アキの麻痺をさせる魔法が抵抗される事なく受けている。
「〈氷柱〉!」
ボクは魔力を全開にして崖に橋をかけたようにして放つ。すると、龍ごとその場を静止させた。
「お兄ちゃんナイス! 〈焔剣〉。おりゃぁ♪」
ユウが龍の翼を斬る。翼は焼き切れ、両翼のうち片翼が斬り離される。
ボクはそれの見た後も、ボクはそのまま龍の頭に向かって直進。
目を見開いて痺れている龍のその目に、ボクは抜いたルナを突き立てた。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッ!!!!」
龍が咆哮をあげる。
それと同時にパキッと何かが破壊される音がした。
目の前に見えていた大量の濃い魔力が一気に霧散される。
ボクはルナを引き抜くと、すぐに後ろに跳躍する。
ユウもボクの隣へと降りて来て、大剣を肩に担ぐ。
「お兄ちゃん、今何したの?」
「魔力の核……みたいなような物を壊したんだと思うけど……」
どうして壊したのに、まだ龍は実態を得て残ったままなのだろうか。
確か、桜花魔法学校の時は斬ればすぐにでも消えていた。
そして次第に麻痺は解けて龍が暴れ出した。すぐに〈氷柱〉が割れて壊される。
「どうしよう……。絶対にこれ倒せないよね……ユウでも」
「さすがに無理だよお兄ちゃん……。だっていくら斬っても、ほら」
ユウが指をさすのは今までユウが傷付けていたであろう場所の傷口。それが自己修復されていく。
でも、右目だけは修復されなかった。
「あ、あれ?」
しかも、右目の周囲から少しずつ腐敗していく。心なしか、動きも少し鈍い感じがする。
やっぱり、魔力の核のようなものを壊したおかげで力が落ちているようだ。
ボクはもう一度体に魔力を通す。
走りだして、一番柔らかそうな右目から斬り裂いて行くつもりで。
ユウも走りだし、その大剣に力を溜めこんでいく。
「〈二の太刀 雪麗〉!」
「〈二の太刀 焔麗〉! 行くよ! あんま得意じゃないけどっ! 〈焔神技・凍ノ型 氷焔乱蒼迅〉!」
ボクが龍へと到達する前に、ユウが目に見えない速度で到達。龍の右目の端に大剣を突き立て、連続して右目を大きく斬り裂いて行く。それも切れ目から水色の炎が龍の全体を包み込んでいった。
ユウはそのまま斬り裂きながら背中へと周り、残りの片翼を勢いよく斬り裂く。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッッッ!!!!」
龍は悲鳴をあげて、段々と下へと落ちていくが、前足がアキがいる側の岸へとしがみついている。ボクはそんな龍の目の前まで行き、ユウが切り開いてくれた右目に向かって、鞘にしまっていたルナを抜き放った。
「〈三の太刀 月華氷刃〉! 〈氷華の月夜〉!」
最大限の魔力を使い、龍へと魔法を放った。
斬り裂いたその次の瞬間、龍はユウが放った水色の炎ごと巨大な華を咲かせて凍りついた。
華は龍を凍りつかせた事にとどまらず、通れなかった崖の全てを覆い尽くすまでに至った。
「〈フレイムロード〉。あいかわらずお兄ちゃんのこの魔法はすごいなぁ……。力が湧いてくるし」
ユウが空中に炎の道を作りその場にとどまる。龍を見下ろす感じになっている。
「でも、さすがに二度は放てないし……」
自分の魔力がほぼ無いに等しい。魔力切れが起こる前にさっさと小屋まで到達しなければ。
「アキさん、立てますか?」
ボクは未だに座り込んで、目の前をボーっとみているアキに手を伸ばす。
龍があれで倒れてくれればいいが、もしもの時がある。さっさとこの場からおさらばしたい。
アキはのばされた手に気がつくと、ボクへと顔をあげた。
「リクちゃん……」
「はい?」
「ありがと……ね」
アキがいきなり照れながら手を掴んでその場に立った。
ボクは何の事だかわからない表情でいると、アキはクスッと笑った。
「リクちゃんの事、私完全には信じれなかったからさ。魔法耐性がゼロ以下とか、そんなのあるかって思ってたから……。私の阻害魔法がくらうなんて思わなかったから……。ごめん」
「そんなこと無いですよ! ほら、早く行きましょう!」
完全には信じれなかったというのは少し傷つくが、それでも謝ってくれたし、少しはアキの調子も戻ったし、万事解決ってことにしておいた。
でも、龍というのがこの世界ではどれだけ恐怖の象徴なのかがアキの反応でよくわかった。とても危ない生き物なのだと、そう思う。
そして、ボクが立ちあがったアキの手をほどこうとすると、アキの方からギュッと掴んできた。
「ご、ごめん。もうちょっと……このままでもいいかな? 私、さすがにまだ怖くて……」
「は、はい……」
ちょっと恥ずかしがってるそのアキの目は濡れていて、頬は赤くなっていた。
その表情にこちらまで少し恥ずかしくなって、無言のまま氷の上を歩いて行く。
龍を凍らせたためか魔力粒子はもう飛んでおらず、魔法耐性が無くなっていた。
……とか現実逃避してみたけど、アキが握ってくる右手が熱くて心臓の音が止まらない。
これまで女の子として桜花魔法学校に通って来たから少しは慣れたつもりだったのに、いまだに慣れていないのか。それとも、アキがいつもと違う雰囲気を出しているからなのだろうかと、そう言う事ばかりが頭の中に浮かんでくる。
「何やってるのアキさん!? ユウのお兄ちゃんに!! アキさんだけはユウの味方だと思ったのに!!」
「ユウ。意味わからない上に違うから」
ユウがボクの隣に降りて来てアキとは違う方向から腕を取られて両手で抱きついてきた。
とてつもなく歩きにくい。
とりあえず、龍は退けたが、この次は何が出てくるかわからない。魔力がほとんど残ってない以上。どうやって対抗しようか、考えていた。
必死に両腕に残る温かさから目をそむけながら。
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