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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第四章 森の中の小屋
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イノシシゾーンを突破せよ!

はい、サブタイトルはなんかゲーム的な感じになってますが、本人たちにしてみればふざけてるとしていいようがありませんね(==*(笑)


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 何とか後ろを振り向いてもイノシシは追って来なくない所まで逃げおおせたが、男が行った方向の逆方向へと走ってしまった。


「あの……イノシシ……。ユウの……天敵かな……」


 それでも、複数のイノシシに囲まれても戦えれていてユウはさすがと言うべきだろう。


「今日ほど……疲れた走りは……した事がないよ……」


 いつも走っていそうなアキも疲れていて、少し休息をとらなければマズイだろうか。でも、この森がヘレスティアに行く前に通過した森だとすると、ヘレスティアの兵士はすぐにでも来るだろう。そしたら早く小屋まで行って逃げなくては。


「どうしましょう……何か対策はありませんか?」

「無視」

「見つからないように通る」

「どうやってですか……」


 呆れ半分で返した。だってイノシシはボク達がいた場所からは何も見えていなかったのに真っ直ぐに走って来たのだ。おそらくこちらの居場所がわかった上で走って来たのだろう。鼻が効くのだとおもう。


「だったらこの森全部燃やしちゃおうか? そしたら鼻も効かなくならない? 焦げくさくて」

「ユウ。ボク声に出してない。でもナイスアイディア……なのかな? そしたらボク達は何に隠れて先に進むのか聞きたいけど……」

「……木の炭?」


 ユウが首を傾げながら聞いてきた。いや、そこは聞くのではなくて断言してもらいたかったのだが。


「でも、それは無理だと思うよ?」

「え? どうしてですか?」


 アキは手を顎において、考えてから、やっぱり無理だと断言した。


「だってイノシシを始めも燃やそうと考えて魔法を放った時、こんな狭い間隔で木々が生い茂ってるのに、木に炎が当たってないと思った? その木が燃えてないんだよ?」

「そういえば……」


 いくらユウが放ってもイノシシは燃えなかった。それだけでは無い。イノシシが炎を通過してきた事に驚いていたが、その通過した炎はどこに行ったというのだ。ユウが途中で消すとは思えない。

 つまり、木々にぶつかっているはずだ。なのに木々は燃えて無い。


 ボクはユウに顔を向ける。ユウはその手に炎を作り、それから木に向かって放つ。

 だが、木は全くと言っていいほど燃える気配が無い。火が燃え移る事も無い。


「今回はユウちゃん、あんまり戦力には……」

「け、剣で斬ったりできるもん!! 壁ぐらいにはなるもん!! うわぁん。お兄ちゃぁん。アキさんがいぢめるー」


 泣きながら抱きついてくるのでボクはそっと頭を撫でてやった。

 でも、どうしたことか。一番頼りになるのは紛れもなくユウだ。

 そのユウの得意技である炎が封じられては、ボク達にあまり攻撃力という物が無い。ユウは持久戦でも大丈夫だろうが、明らかにボク達よりも強いと思えるイノシシ相手では、ボクとアキは持久戦ができない。


「とりあえず、進もっか。じゃないとすぐにでも付けないよ」

「はい。あ、そういえばアキさんはもう大丈夫なんですか?」

「え?」


 アキがポカーンとしてから、ボクが何を聞いたのか分かったらしく、少し頭をうつむけてから答えた。


「まぁね。今は、それよりも大事な事があるだろうって、私の本能がささやいてる。世界軸の試練が知れるなんて、私にとってこれ以上と無いよ! いろいろとリクちゃんの補助ができるからね!」


 グッと拳を作って笑顔でそう言うも、どこか強がってそうに見える。ボクはその事に気づきつつも、あえて触れないようにして先へと進んだ。

 すると、先ほどと同じような地鳴りが聞こえてくる。


「どうします?」

「木のぼり!」

「乗った!」


 ユウが提案して、アキが激しく同意しているが、木のぼりして大丈夫だろうか。先ほどイノシシ達がものすごいジャンプを見せたではないか。

 ユウがひとっ飛びで木の枝の上に乗る。アキもジャンプして乗る。

 ボクはどうしようか迷った後、すぐにジャンプ。木の枝の上に乗って息をひそめた。


 そして、見えてくるイノシシ達。

 イノシシ達はボク達の姿が確認できなくてか、車のブレーキ音のような音を立ててその場に停まった。

 ボク達を探してるようで、きょろきょろとあたりを見回している。


「このまま先に進もう、お兄ちゃん」

「う、うん」


 ユウが隣まで来てそう言うと、隣の木の枝までジャンプしていった。枝は太い枝を選んでいるので折れることは無い。まるで忍者にでもなった気分だ。

 ボクはそう思って、イノシシ達の方へと目を向けると……。



 ――イノシシと目があった。



 次の瞬間、イノシシ達が一斉にボクへと向かってジャンプしてきた。


「!?」

「お兄ちゃん!?」

「リクちゃん、早く!!」


 二人はこう言うも、さすがに二人はまだ見つかっていないようだ。

 なら――。


「〈一の太刀 鏡花水月〉!」


 ボクは魔力をばらまき、初めに居た場所から動いた。

 すると、そこを綺麗に通って行くイノシシ達。もちろん幻影なので何にもぶつからずに素通りしていく。

 そして、姿に消えたボクを探そうと、イノシシ達が探し始めた。だけど、明らかにそちらにはいかないだろう場所まで探し始めた。


「どういう事?」

『あのイノシシ達。魔力に反応して追ってくるのではないか? じゃからリクが魔力をばらまいた事によってどこに行ったのか分からなくなる。そんな所じゃろう。つまり、あ奴等は魔法生物じゃ。炎を司るあ奴が作ったのであろう』


 ルナが説明してくれて、納得する。

 魔力をたどって追ってくるならば、そこら中にばらまいた魔力のおかげで追ってはこれないだろう。


「お兄ちゃん、大丈夫~?」

「えっと、どこかな? リクちゃん」


 二人も姿が見えていないので、ボクは隣までジャンプしていく。


「大丈夫です。行きましょう。あのイノシシ達は魔力をたどってくるみたいです」

「うわっ。それって厄介……あれ? この魔法、ずっと魔力を置いておく事ができるの?」



 アキが言う。



「…………あ」



 ボクは今気づいたばかりだと声を漏らした。

 そして、ひと時の時間、時が止まったようになった。

 ボクは魔力を置いて行こうかとも思ったが、そんなことしたらボクの魔力がすぐにすっからかんになる。ルナの魔力も使っているからそこまで簡単になくなることは無いが、それでも、だ。

 つまり、この魔力は範囲外に出そうなときにすぐに回収するとして……。


「と、とりあえず魔力の一番端まで行って、そっから全力疾走しましょう!」

「結局、全力疾走する羽目に……」


 ユウがどんよりとした空気を持ち出してきたが、ボクはそれを無視して次の枝へと跳んで、地面へと降りた。木の上よりも地面の方が走りやすいのだ。

 それは二人とも同じ様で、地面へと降りて来て走った。

 そして魔力をばらまいた範囲の隅までくると、すぐに魔力を元に戻る。それによってイノシシ達が一斉にこちらを向く。当たり前だろう。魔力がボクに向かって吸い寄せられるのだ。気がつかれないわけがない。


「走りますよ!」

「うん!」

「〈焔壁〉」


 ユウは後ろへと円状になっている炎の壁を発動すると、その中へとイノシシ達が入って行った。

 すると、イノシシ達はそこから出てくる気配が無い。


「どうして?」

「炎で包んであるから、その中に魔力が少し漂うの! でも、あの量の全部は中に入れることはできないから同じ事!」


 ユウの言う通り、横から出てきたり、押し出されて出てきたイノシシ達が追ってくる。ボク達は全力で走り、そして驚いた。



 ――なぜか目の前に大きな崖のような溝が作られているのだ。



「うわわっ」


 何とか急停止してみて下を見ると、そこはしたが見えないほど深くなっている溝だ。落ちたら登ってこれそうにない。


「どど、どうしよう!?」

「アキさん! フラッシュで全員目くらましできない?」

「そう言う事! 分かった! 〈フラッシュ〉!」


 アキが魔法を発動。あまりにも眩しい光を放つので、ボクとユウも目元を覆って回避する。イノシシ達はもろにくらったようで、頭を振りながらもこちらへと真っ直ぐに突っ込んでくる。


「ジャンプ!」


 ユウがそう言って高くジャンプすると、足元に火の足場を作る。ボクとアキもジャンプすると、ユウが足場を作ってくれる。

 イノシシ達がボク達の下を通って行く。もちろん猛スピードで突っ込むので、簡単に溝へと落ちて行った。


「これで……出てきた分全部?」

「た、助かった……ユウちゃんナイス機転」

「足場ぐらいなら作れるからね♪ 問題は……」


 ユウが溝の反対側を見る。そこまでの距離は目視で一キロメートルはあるだろう。

 身体強化をしてもさすがにこの距離を跳べるはずもない。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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