裏路地
「……見事につられた」
「こ、怖そうな人達ですね。ルナ」
白夜とボクがそういう会話をしていると、寝虚が背中でねて……。
「えぇ!?」
「Zzz……」
まさかの寝虚はボクの背中で寝ていた。背負った記憶なんてこれっぽちも無いのに、いつの間に寝たのであろうか?
そうは言う物の、周りに居る男たちが待ってくれるとは思えないので、白夜は先程準備していた銃槍を影から取り出し、ボクもそれに合わせてルナを武器として呼んで握る。
すると男たちは全員が全員して驚く。白夜が魔法か何かで影に隠していたのだろうと考えたのだが、おそらくボクが魔力解放もしていないのに武器を喚び出したからだろう。正確には呼び出したのだが。
「へっ、逆らう気は満々かよ。やるぞテメェ等!」
『おうッ!』
「……こんな日の高い時間帯からヤるぞだなんて……変態?」
「ちげぇよ!? 何お前勝手に変えてんの!?」
「……ナニ? ……貴方達は昼間から一人で? ……寂しい人」
「て、テメェ! だったら望み通りヤってやるよ!!」
何やら白夜と襲ってきた男たちのリーダーのような男と言い争っていたが、会話の内容はまったく意味がわからなかった。
何はともかく、白夜がリーダーを怒らせたのは間違いない。勝手に相手を厄介にさせないで欲しい。
襲ってきた男たちが全員鈍器のような物を振るってきた。
ボクはなるべく寝虚が起きないように――とは言ってもどれだけ動いても起きないだろうが――初めに来た男の鈍器を避けると鈍器を持っている腕に斬り傷をつける。すると男が持っていた鈍器が突如として霧散する。
男が何が起こったのかさっぱりという状況に、ボクは男の後頭部を蹴りあげて気絶させる。次に来た男の鈍器も避けると、先程の同じようの男の腕に斬り傷を入れる。
先程から何をしているかというと、ルナによる人体の魔力経路を切断しているのだ。おかげでそこから先の部分は魔力が通らない。よって魔法が使えないので顕現した鈍器も消えたと言うことだ。
とは言っても、真陽と初めて交戦した時以来使っていなかったので、使えるかどうか少し不安だった。あの時は真陽は武器がしっかりと顕現で来ていたし、人によって魔力経路に強度という物があるのだろうか? 竜田は魔力経路が斬れたような様子は見受けられなかったし。
「次ッ」
次々と来る男たちがさすがにボクが斬ったら持っている武器が何らかの形で強制的に霧散される事を悟ったようで、あまり僕の方へとバカみたいに突っ込んでは来なくなってきた。
「……〈シャドー〉。……全員動けないように縛って」
「ゥォォォゥゥゥ」
少しずつ警戒してきた男たちに白夜が得意の魔法を放つ。
「な、なんだこりゃ!?」
「離れろ!」
男たちの影から這い出て来るようにして黒い影が出てきた。〈シャドー〉は白夜に言われた通り、男たちをまず地面から離れないようにする。
必死に抵抗する男たちを全員地面へと座りこませると、更に今度は腕を掴んで縛る。もうそれだけで男たちは何もできなくなった。
「く、クソッ!」
リーダーの男が何もできないとわかると、舌を鳴らした。
魔法を使えばいいのにと思ったが、どうやら魔法が使えないらしい。
先程から男たちが魔法を使おうと何度か試しているが、ボクの目で見えている魔力供給線が体からまったく出ていない。〈シャドー〉が完全に塞いでいるのだろう。
「……さて、貴方達に聞きたい事がある」
「ァンだよ」
態度は悪いが、一応はこちらの話を聞いてくれるらしい。
「……ヘレスティアの事。……知ってる事全部教える」
「ぁ? ンな事でいいのか?」
リーダーがまるで拍子抜けと言わんばかりに頭の上にハテナを浮かばせる。
白夜はその様子にコクリと首を縦に頷いた。
「んだったら、これほどいてくれねぇか?」
「……話すまで解かない」
「チッ。いいぜ、何でも聞いてみな」
リーダーは舌を鳴らしながら白夜に挑戦的な態度で訊く。白夜も威風堂々たる態度でそのリーダーへと質問を続けて行った。
「……まず、この国の勢力図」
「あ? 何でそんなこと知りたいんだ? お前余所もんか?」
「……答える」
ボクは白夜が尋問してくれているので、黙ってその成り行きを見ていた。
「この国はあのでっけぇ城が力握ってて、力を握ってる順だと、王。次に七柱芯って呼ばれてる12人中7人の最強達と、残り5人の各地を飛び回ってる五刑囚が二番目に力を持ってる。それ以外は全員おんなじような力だ」
12人の最強……。おそらくこれらが全員悪魔を従えているような人達なのだろう。おそらくその内に【暗殺者】であるレナの専属メイドだった風香が四刑囚の枠に入っていたのだろう。
つまり、今危険視するのは11人だけという事になる。
とてつもなく多い。今襲われるとひとたまりもないだろう。
「……その12人。……なんて呼ばれてる?」
「それは知らねぇよ。嘘じゃねぇ、ホントだ!」
ボク達が得ている情報では確か……。
『追跡者』
『暗殺者』
『弓矢』
『執事』
『腐敗花』
『死神』
……の名前は分かっている。残りは六人。それは市民に知らされていないと言ったら、後は城に行かなければ分からないのだろう。五刑囚とやらはわからないが、七柱芯とやらの方が何か情報が得られそうだし。
だが、城の中はボクは行く気はない。雁也が言っているはずだし、雁也ならば七柱芯の内、誰かしらを見て帰ってくるだろうと信頼しているからだ。
それと、ボクが侵入なんてできるはずもないとわかっているからだ。
「……なら、最近訊いた事がある話」
「え? 最近訊いた事がある話?」
「……そう。……何か話題になっている話を教えて」
白夜がそう言うと、リーダーは首を傾げて唸った。両手を動かして悩むようにしようとしたが、縛られているので諦めていた。
「そんやぁ。最近城の方があわただしいな……。近いうちに、戦争でもおっぱじめるって噂が立ってるぜ?」
「せ、戦争ですか!?」
戦争とは、国同士が武力で戦うというあれの事!?
たくさんの死者が出る事間違いないし、一体何を狙いでそんな事が……。そう思ったが、ここの国はボクの持っている聖地を狙っているんだった。
ライコウに戦争を仕掛けて、手っ取り早くボクを奪おうとするつもりだろうか。
「……ライコウは自由国だからたくさんの国と同盟している。……戦争を仕掛けたら同盟国も敵に回さなければいけない。……王はわかってるの?」
「わかってるからだろうさ。この国は軍事国家。それだけの力もあるって上が自信満々に言って疑わないからな。俺はその前に逃げるぜ」
戦争なんて、どうして好き好んで行うのか。人を巻き込んでそんなに嬉しいのか……。
「ま、単なる噂だからな。もう質問はねぇだろ? 早くこれ解けよ」
リーダーの男がそう言うと、白夜はまだあるとばかりに首を横に振った。
「……これから、私達の代わりにもっと噂を集めて来て」
「はぁ!? 何で俺達が!」
男は「ふざけんじゃねぇ」と叫びながらそう言うも、白夜の次の言葉で塞がれた。
「……じゃあ一生そのままでいる事」
「く……ッ」
ずっとそのままでいるのはさすがに辛いのか、舌を鳴らした。このリーダーはよく舌を鳴らすなと思った。
白夜はそれからは何も言わず、ただ動かなくさせていた枷〈シャドー〉を解くと、それから男たちに背を向けて歩き始めた。
「どこに行けばお前に言いに行ける?」
「……またここに来る。……それまでに集めれるだけ噂を集めて」
白夜がそれだけ言うと、リーダーをはじめとした男たちが一斉に行動を開始した。
……なんか全部を白夜に任せてみたけど、かなりいい具合に進んだような気がする。こう言うことは全部白夜に任せた方がいいのかな?
初めは嫌だったような気がするけど、白夜が慣れていそうだし、今はそうでもないような気がした。
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