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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第三章 聞き込み捜査
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今日のやる事



「それでは、今日の行動ですが……」


 食堂で朝食を食べた後、ボク達は全員、154号室に集まっていた。

 部屋の中はキリと雑賀二人しか使っていなかったとはいえ、それなりに汚かった。ちゃんと綺麗にしておいてほしい。


「私達は派遣された身。雁也さんだけが情報を持って帰るなんてあり得ません」

「だったらなんでボク達は昨日海で遊んだんですか!?」

「つまり今日は……」


 妃鈴に完全に無視された。


「今日は町の人に聞きこみをします。ですが、聞きこみをしているとバレてはマズイですからね。さりげなくです」


 妃鈴はそこまで小声で、且つボク達全員に聞こえるように話す。一応防音魔法が発動されていて、聞こえないようにはなっている。


「幸い、この町は聞いたところ荒れていて、裏路地に入ったりすると野郎がいるみたいです。その人達を使いましょう」

「わかった。それだったらなるべく別れた方がいいな……。じゃあ俺はリクちゃんと――」

「天童さんは心配なので私と一緒に来てもらいます。元々ペアですし」


 妃鈴が雑賀の言葉を切り捨てる。雑賀は落ち込んだ。


「なん……だと……ッ。こう言う時ぐらいは他の人でも――」

「では皆様も二人一組になってください。寝虚ちゃんは三人の方がいいですね」


 また妃鈴が雑賀の言葉を切り捨てる。しかも今度は無視している。

 雑賀は四肢を床へとつけながら落ち込んだ。そんなにもボクと行きたいのだろうか? 雑賀は。


「寝虚、リクお姉ちゃんと一緒がいぃ」


 寝虚は眠たい目を向けながらそう言うと、ボクの裾を掴んだ。

 他の人でもいいと思うのに、どうして寝虚はボクに懐くのかが少し不思議だが、別に悪い気はしないのでボクは裾を掴んだ寝虚の頭を撫でてあげた。


「ヘル、はアキ、と一緒に」

「もちろんっ。これを機に私の事をたくさん知ってね!」


 この二人はもう行くのは決定だろう。と入っても、ヘルは傍目には少女。だからもう一人ぐらいは必要だろう。


「じゃあユウはお兄ちゃんと……」

「キリさん。一緒についてきてくれませんか?」

『!?』


 絶対にユウとは行きたくはない。何かしらよからぬ事をしでかすに違いない。それはユウ以外の女性陣も疑うべきである。昨日の事があれば、ボクがキリを選ぶのは誰だってわかる事だろう。


「んで俺なんだよ……」

「そ、そうですわ! 仙ちゃんとはわたくしが参りますの!」

「だってキリさんが一番安心できますし……」


 レナはキリと行きたいようだが、こちらとて、キリ以外の他の人と行ったら……少し不安が残る。

 すると、妃鈴がどこからか棒のような物を持ってきた。複数の棒を握って、こちらに差し出してきた。


「でしたら、ここにあるクジで決めたらどうですか? 同じ番号を書いた人がペアです。寝虚ちゃんとヘルさん以外の人がクジを引いてくださいね」


 妃鈴が用意したクジ。誰も文句が出なかったので、ボク達はそのクジを一斉に引いた。



 ★



「それでは皆様。お金を渡しておきましたし、それで今日一日散歩してきてくださいね。私と天童さんは酒場を主に重点的に探しますから、他の皆様は他の場所をお願いいたしますね」


 妃鈴がそういうと、先程クジに参加しようとして雑賀の首根っこを掴みながら外に出て行った。

 ボク達もここで待っているわけにはいかず、外にとりあえず出る事になった。


「みんなぁ、ばいばぁい」


 寝虚が手を振りながらそう言って、ボクと寝虚。そして白夜という一番不安な人がペアとなってしまったボクは、とてつもなく途方に暮れている。どうして白夜となってしまったのか……。


 ちなみに、他のペアは……。


 キリとユウ。


 マナとソウナ。


 レナとアキとヘル。


 ……となっている。


 一番苦労するのは自分の事を考えないとレナだろう。

 なにせ情報が好きなアキと一緒に行動するのだから。先程はキリと行動したいと言っていたのに。

 あと、一番不機嫌なのは意外にもユウだった。

 誰とでも仲良くなれそうなユウはキリと一緒にペアになったと分かったとたん、不機嫌になった。

 別にキリが何かをしたわけではないのに、それにユウとキリはあんまり接点は無いはずなのに、どうしてそんなにも不機嫌になるとは全く分からなかった。


「……それじゃあ、私達は裏路地に行く」

「いきなりですか!? は、初めは他の場所とか……」


 ボクがそう言うと、白夜は首を横に振った。


「……疲れていない時の方がいい」


 白夜はそれだけ言ってボクの先を歩いて行く。

 ボクはついて行きたくないなと思いながらも、ついて行かなければいけないのだと思い、先を行く白夜の後を追い始めた。

 寝虚はまたクマのぬいぐるみを出そうとしていたのでボクは寝虚を背中におんぶさせた。歩けばいいのにと思うのだが、先を歩く白夜の速度が寝虚の徒歩の限界を超えている。

 そう思っていたのもつかの間、すでに白夜はボクからそれなりに離れている所に居たので呼びとめた。


「白夜さん、ちょっと待ってください!」

「……? ……リクちゃん、どうしたの?」


 白夜がボクの声に反応すると、白夜が振り向いてくれた。

 ボクは急いで寝虚を背負いながら白夜の所まで行く。


「白夜さん、早すぎですってば……」


 白夜に追いつくと、ボクは少し疲れながらそう言った。その様子を白夜は見ながら……。


「……そう? ……ごめん。……リクちゃんの慌てる顔が見たかった」

「それだけのために!? やめてくださいよ!?」

「……嫌?」

「嫌ですよ!?」

「……リクちゃんに訊いてない」

「誰に訊いてるんですか!?」

「寝虚はいいよぉ」

「……ならリクちゃんの反応を楽しむ」

「なんで本人の許可が無いんですか!?」

「……弄るのに本人の許可が必要が?」


 何をバカなことを、と言っているような白夜の顔にボクはこれ以上言っても無駄だと思って首をガックリと落とした。

 白夜はいたって無表情だが。


 まさか一番初めから白夜にこうも弄られるとは思わなかった。

 白夜が歩く速度を普通にしてくれたので寝虚を背中からおろして歩かせた。寝虚は手をつないで隣を歩く事になった。

 道を適当に歩いて行くだけでも、情報とは入ってくる物で、この国がそれほどあまりよくないと言う事がわかった。

 道行く人は楽しそう。だがそれは道を堂々と歩いているような人ばかりで、たまに見る道の隅でこちらを見るようにする人の顔はかなり疲弊していて、それでいて睨むようにしてこちらを見てくるような人も居たので、ボクはすぐに前へと向き直したほどだ。


「……ここらへん」


 白夜がそう言うと、家の路地裏へと入って行った。おそらく妃鈴の言っていた『野郎』という人達に会いに行くのだろう。

 ボクはいつでもルナを抜けるようにしておく。白夜からも魔力解放を感じた。魔法をいつでも使えるようにするのだろう。


「我が名は白夜。潜む刃をその身に宿し、〝影の銃槍〟は静かに訪れる」


 白夜は武器を顕現し、その武器は自分の影へと突き立てる。すると銃槍は影の中へと沈むようにして消えていった。


「……行く」


 白夜がそう言うと、路地裏の更に奥へと歩いて行った。ボクもその後に続いて行く。

 路地裏では表の道よりも多くの人が道の隅で膝を抱えている人がいる。

 おそらく普通に生活できないような人達が此処に集まっているのだろう。

 ボク達はそのまま路地裏を迷いの無い足で進んでいくと――。



「よぉ、あんたらには悪いけど、持ってる荷物全部置いて行って貰うぜ」



 ――ボク達の行く末を塞ぐようにして複数の男の人達がボク達を囲んだ。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

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