表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第三章 聞き込み捜査
22/72

翌朝



 皆様。本日も天気は快晴でございます。

 ただ、あまり外に出たくはない。それはもちろん……。


「まさか今日も海に行くなんて言いませんよね……?」

「う~ん。それは無いと思うな~。それより、リクちゃん起きるの早いね~……」


 現時刻は六時。いつもこれくらいの時間帯に起きざるをえないボクは昨日、ユウがなぜか持っていたボクの櫛を返してもらい、これまたボクの手鏡を、ユウが持っていたのでその手鏡を見てぼさぼさの髪を梳かしていく。

 マナも十分早起きではないか。と思われた方もいるだろう。

 しかし残念ながらマナは自然に起きたのではない。ボクが自然に起きた時に、同じ(、、)布団で寝ていたマナも起きてしまったのだ。


 なぜか夜。寝るときになって布団が一つ足りない事に気がついた妃鈴以外のボク達。妃鈴は疲れたのか先に寝てしまった。

 そこで、必然的に二人が狭くなってしまうというので、ボクは狭くてもいいと言った所……。



 ――レナ以外の全員によるリクちゃん杯ジャンケン大会というよくわからない大会が開かれた。



 結果。決勝まで上ったマナとユウというどちらも火属性を得意とする二人が勝ちあがり、そこでマナが勝ったのだ。

 さて、なぜ火属性の二人が勝ちあがったのか?

 この大会はどんな魔法でも使っていいという更に分からない状況になっていたのだ。陽炎を作って反対側の手で偽物の手を作って勝って来たのだ。

 そしてマナvsユウでは、陽炎は通用しない。どちらも火属性だから。そこで、一番活躍したのはマナの頭だったと言う訳だ。ジャンケンでありながらも頭脳戦となった勝負。マナの圧勝によって終わった。





 ……何の意味が? と強く思ったがボクは何も言わなかった。






「他の人は~……まだ寝てるね~」


 夜遅くまでジャンケンしていたからだろう。

 どうしてそうまでしてジャンケンをしたかったのか……。


「ん……。おはようございますわ……二人とも、早いですのね」


 目を掻きながら起きるレナ。少し浴衣がはだけていたので、ボクはすぐに窓へと視線を逸らした。布団を敷いたのが窓の隣でよかったと思う。


「レナさんも、十分早いと思いますよ? それに、ボクより早い人いますし」

ボクは人がいない布団を見ながらそう言う。

「白夜さん……何時に起きているんですの?」

「さ~? 少なくともウチ達が起きるよりも前に居なかったよ~。だから……六時前だね~」


 一体どこに行ったんだろうか? そう思っていたらこの部屋のドアが開いた。

浴衣姿の白夜が戻ってきたみたいだ。


「……おはよう。……みんな早い」

「白夜さんもですわ。何時に?」

「……五時」


 五時……。ジャンケン大会が終わったのが確か午前三時だったような気がする。約二時間の睡眠だけで白夜は普通に起きていられるのか。

 すると、レナは白夜がどこに行っていたのか疑問に思ったらしい。


「それにしても、こんな朝早くにどちらに?」

「……リクちゃんの寝顔写真を撮って、その写真の具合に満足しながら雑賀に売りに行った」

「ちょっと待ってください。なんですかそれ!? ボクの寝顔を撮って誰に売ったって言いました!?」

「……雑賀。……とっても喜んでた」

「喜ぶ喜ばない以前の問題ですよ!? 勝手にボクを撮って勝手に売るってなんですか!?」

「……はい、モデル代」

「あぁ、どうも……じゃないですよ!? なんですかこの束!? 軽く十万はありますよ!? いくらで売ったんですか!?」

「……三十万をなぜか出してくれた」


 雑賀の財布。もうほとんど空名のではなかっただろうか。


「んん。一体何ぃ……」

「事件の香り!」

「リク君。少し静かにしてもらってもいいかしら?」

「朝……ですか」

「Zzz……」


 ボクが白夜と言い合っていたので、周りの寝ていた寝虚以外の面々も除所に起き始めてしまった。


「えっと、すみません。起こしてしまいましたか」

「むしろ今ので起きなかった寝虚ちゃんはすごいと思うな~」


 そんなに大きな声を出していたのだと理解した。


「おはようございます。皆様。今は……六時十分ですか……」


 妃鈴が来ている浴衣を少し脱いで、それから今日着る服を取り出して早着替えという技をやって見せた。下ろしていた髪を頭の後ろでまとめ、いつものポニーテールにする。そして寝ていた布団を畳んで部屋の隅に置くと、こちらに向いた。


「では、朝食を頼みに行きますので、みなさんは三十分には食堂の方に来てください」


 そう言うと、すぐさま扉から出ていった。

 こうも寝起きがいい人はそうそういないのではないだろうか。


 隣の部屋から少しづつ物音がし始めた。妃鈴が起こしたのだろう。

 それにしても……あと二十分……。ボクは早く着替えようと思った。

 髪はもう梳かしたし、ボクは自分の服をどうしようかと考えた。なぜなら、昨日はユウに借りたが、まさか今日まで同じ服を借りると言うことは……。


「お兄ちゃん♪」


 もはや恒例のボクの思考を読むというあれだろう。ボクはユウの言葉に耳を傾けた。


「ユウのアイテムボックスはね! 衣類は入れとくと勝手に洗ってくれるの! だから安心して同じ服を着ていいよ! ……それとも、他の服着る?」

「同じ物でお願いします」


 他の服で更に過激な服を来てしまう事になったら洒落にならない。

 「ぶ~」と不服そうに口を作りながら昨日と同じ服を渡してくれた。

 ただ、前と同じような鎧とニーソックスは無く、肩の露出した服とスカートだけだった。そこに靴下が追加されただけだ。

 ボクは特に何も言わず、着ていた浴衣を脱いで黙ってその服を着た。

 ボクは服を着て、マナに布団の片付けをお願いすると、すぐに部屋を出た。

 ボクが外に出なければ他の人達は着替えれないだろうと思っての行動だ。しかし、実際には着替えていたのでボクは逃げ出すようにして部屋の外に出たのだ。


「おぉっと」


 すると、扉を開けた時にそう声が聞こえたので、ボクは部屋の外に出ると、扉をすぐに閉める。


「あ、キリさん。おはようございます」

「ん? おお。なんだ? お前はもう食堂に行けんのか?」

「はい。起きたのは六時ですし、それに、白夜さんだってもう行けるとは思うんですけど……」

「そんやぁ、白夜は一回俺らの部屋に来たな。雑賀となんか交渉をしていたが」


 それはそうだろう。白夜が写真を売りに行っていたのだから。

 ボクとキリはそんな話をしながら階段を二人で降りて行く。

 やはり、一番落ち着くのはキリの傍であり、安心できる。と言ったところか。他の人では何かしらの事をやってくるのでどうにも安心できたことが無い。


「おや、二人揃って降りて来たんだねぇ。微笑ましい限りだよ」

「おはようございます。おばさん」


 ボクとキリは、一階に降りてきたところで受付嬢兼店主であるロピアルズの人に朝の挨拶をする。キリは会釈をした程度だが。


「やーよぉ。おばさんだなんて。それより、あんた達を見てると、おばさんも若いころを思い出すよ」

「若いころ? それがどうしたんだ?」

「やーねぇ。あんた達、青春してるねぇってことさ」

「なッ! ち、ちげぇよ!」

「そ、そうです! それに、ボクとキリさんは同性ですよ!?」

「おや、おばさんの若いころも、同性で結婚した奴なんてのも居るんだよ? 片方はカナ様に女にされた逮捕された犯罪者だったんだけどねぇ。今はきっといい暮らしをしてるさぁ」


 ロピアルズの人は昔の事を思い出しながらそう言うが、ボクにとっては全くアドバイスにもなんにもならなくて……。


「あ、あり得ません! ボクとキリさんがけ、結婚なんてあり得ません!!」

「おや、あんたはいいのかい?」

「ったりめぇだろ!? 俺は普通の女とだな……」


 キリもボクと同じように返してくれてよかった。これで少しでも言葉に詰まっていたら少し付き合い方を考えていたかもしれない。

 あの雑賀のように。


「まぁ、なんだっていいさね。さぁ、そこの扉の向こう側が食堂だよ」


 ロピアルズの人にそう言われて、ボクとキリは一刻も早くここから離れようとしてその食堂の扉を開けたのであった。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ