残念な奴にメールしてみた。~残念はお前だ~
視点は自称紳士の雑賀さんですよ~(・・*
「ん~。ここら辺でいいだろ」
「広く、場所を、取れ、るから?」
俺は隣についてきている白髪少女、ヘルにそう言われ、「当たり前だろ?」と返す。
なにせ海に着ている人数が人数なのだ。十人以上の大人数なのに、広くとらない選択は無い。おかげで中心よりもすこし遠い所に着てしまったが、此処にも海の家やら出店がたくさんあるので人が決して少ないわけではない。
俺は持ってきた十五人以上は入るだろうシートを広げると、机をたててその机の中心に穴が開いているので、その穴にパラソルを指し込む。
これで日影は何とか作れたが、それでも日に当たっている場所が多いので、俺はテント――とは言っても寝るような三角のテントでは無く屋根だけがついているテントだ――をたてる。
そのおかげで一部を抜いてほとんどのシートに影が出来た。
「よし。手伝ってくれてありがとな。ヘルちゃん」
「そんな、こと、ない。ヘルは、着替える、必要、無い、から」
そう。ヘルは此処に着くやいな、魔法で先程まで着ていた白いサマードレスから白スク。
つまり白いスクール水着へと変わっていた。
幼女趣味は無いので別に鼻血は吹かないが、俺の戦友兼親友のデルタが見たら鼻血を噴水のように吹いて死んでいただろう。
…………。
俺は懐に入っていた携帯を取り出した。
「?」
何気なくヘルにカメラ機能を使って写真を撮ると、デルタへと送ってみた――数秒後。
~~♪
携帯がいきなり振動を始めたと同時に音楽が流れた。
「いくらなんでも早いだろ、デルタ」
俺は携帯に出ると開口一番でそう呟く。
『ば、馬鹿野郎!! て、テメェ! 俺を指し置いてなんでロリ少女、しかも白スクを生で見れてんだよ!? 変われ! 今すぐに俺と変われぇぇぇええええ!!!!』
あいかわらずな奴だった。
デルタの声が聞こえたのか、ヘルがジトーと言うような目で俺を……いや、俺の携帯を見ていた。
「お前、仕事中じゃないのか?」
仕事中だと思ったのでメールを送信してからポケットにしまおうと思っていたのだ。仕事はしっかりとこなしてくれるデルタだから仕事中は携帯をとらないと思ったのだ。
『派遣中のお前からのメールだったから携帯をとってメールを見たんだよ。そしたら何だあれは!? あんな可愛い白スク幼女と一緒に居るだなんて……貴様帰ってきたら俺の所まで連れてこい!!』
なるほど。派遣中の俺からだったからメールを見たのか。これは少し失敗したな。
「お前の所まで連れて行くことは厳しいかもな」
『なん……だと!? お前、リクちゃん達も一人占めしときながら……って雁也さんいるか。いや、雁也さんなんて数に入らねぇ。確か今お前は浜辺に居て、雁也は城に調査しているはずだからな……』
そんなことまで知っていたのか。俺には何も知らされなかったのだが。
『あ! 大丈夫だな……。まだキリが――』
「キリは寝虚ちゃんによってキリちゃんとなったぜ」
『何ぃぃぃぃいぃいいいいいい!? 部長!! 俺は今すぐにヘレスティアへ向かいます!! 一生と無いチャンスなんだ!! これを逃したら絶対に次は無い――』
デルタの声が遠ざかっていった。あいつ。ホントにこっちに来るつもりか?
「今、の。デルタ、インフォルダ?」
ヘルがデルタのフルネームを当てる。
いや、まて。俺は今デルタと名前を口にしたかと考えるが、一度も口にしていない事を思い出す。
これも神様の力なのだろうか。そう考えると、彼女は情報にまつわる神様の予感がする。
「ああ。俺の親友。デルタ・インフォルダだ。どうしてわかったんだ?」
「ここ、まで。声が、聞こえ、た」
声でわかっただと!?
一応デルタとヘルは会ったことは無いはずだ。一体どうして……。
「ヘル、は。何でも、知ってる。変態、デルタ。ジーダス、では、オペレー、ターとして、がんばっ、てた」
ヘルがかなり的確な事を当ててくるので俺はごくりと生唾を飲み込んだ。
此処まで筒抜けだとこの神様はどこかで見ていたのかと考えてしまう。
恐ろしい。俺は素直にそう思った。デルタならば絶対にそうは思わないだろうが。
俺は再度携帯へと耳をつけると、小さくデルタと部長が言い争っているような話が聞こえるが、このままいけばデルタはこちらに来ることは無いだろう。
いや、俺以外がこの場所に来るなんてあってはいけない! 今の俺の状態はハーレムなのだ!!
「雑賀、きもい」
「!?」
まるで心を読まれたように言われ、ヘルの言葉が俺の胸へと突き刺さる。
特に問題は無いが。
「それにしても、リクちゃん達遅いな……。どこかでナンパされてんのかな」
「リク達、なら、此処へ、真っ直ぐ、向かってる」
それならば安心と、俺は背負っている荷物を下ろす。
浮輪とかに空気を入れるのだ。人数分は無くて、数個しかないが、一つ、やけに大きいのがあるので少し疲れるだろう。
めんどくさいので魔法を使う。
「〈ウィンド〉」
俺は風を操って浮輪の口をあけてそこから空気を送り込む。おかげで浮輪はすぐに膨らむので楽だ。口でやるよりもこちらでやる方がいい。
「雑賀、せこい」
「使える物は使わなきゃ損だろ?」
俺がそう言うとヘルは特に何も言い返してこなかった。
彼女も同じ考えなのだろう。
使える物は使う。
だが俺はおそらく女性を使うと言うことはどんな状況でもまずは否定するだろう。
例えば女の子――よし、ここはリクとしよう――が浮輪の口から口をつけて「ふーっ」て顔を赤くしながら入れて……悪くないな。
「雑賀、変態」
「俺が変態なんじゃない。これはデルタの影響だ!」
「認める。けど、雑賀、にも、元から、あった、性癖」
なんか物凄い事言われて言えるような気がするが俺は我慢する。
「でも、デルタ、は、異常、だと、思う」
あれが異常じゃなかったらその人の基本値を疑う。
きっとデルタと同じ類友だろう。
『くそ……なんで雑賀ばっかり……』
どうやら部長との話が済んだようだ。
『おい雑賀……お前絶対にこの他にも写真を撮ってこなかったら処刑だ! 死よりも恐ろしい事をしてやるからな!!』
死よりも恐ろしいとは……よっぽど悔しいんだな。いや、俺も派遣されなければ同じ立場だったと思うが。その時は白夜にでも写真を頼んでいただろう。
「安心しろデルタ。俺が撮ってこないと思ってるのか?」
『く……泣かせるじゃねぇか親友!!』
「当たり前だ。帰りを待っていろ親友!!」
『あぁ! それじゃあ俺はこれから仕事なんで、雑賀も頑張って仕事してくれな。写真待ってるぜ!』
デルタはそう言うと電話を切った。
あいつ。俺の仕事よりも写真の方が絶対に気になってるよな。
よし、とりあえずヘルの写真でも撮るか。
「ヘルちゃん。フランクでも食べるか? 暇だし」
「却下」
こちらの思惑がバレていたか。
「ほら、あそこに出店でフランク売ってるしさ」
「神の、断片は、食べ、なくても、大、丈夫」
仕方が無い……。
「先に海で遊んでるか?」
「この、水着。濡れて、も、透けない」
「なん……だと……!?」
最近ではそんなのも作られたのか!?
何でそんな物を作るんだ!!
それでは楽しみの一つがダメになるではないか!!
「この、水着。魔法、鎧」
「え? 魔法鎧?」
よくよく見ると、確かに魔力を地味に感じる。とっても薄い魔力だが、確かに感じる。
魔法鎧で自分の服を作っていると言う事か。
俺はそう考えていると、突如として後ろから気配を感じた。
「天童さん。何ヘルちゃんをじろじろと見ているのですか? この変態」
「ちょっと待ってくれ妃鈴!? これはヘルちゃんが服が魔法鎧って言うから見てみてだけで――」
ガァンッ。次の瞬間にはそんな音が聞こえた。後頭部に鉄に殴られるような衝撃。
誰がどう考えても妃鈴の武具。〝死地の銃盾〟であるだろう事は容易にわかる。
「魔法鎧? ……本当です。意識してもうっすらとしかわかりませんが確かに魔法鎧ですね」
「な? ったく妃鈴。俺にぶつ前に少しくらいは話を聞いてくれても……」
そう言いながら俺は顔をあげる。そこに妃鈴が立っている。それはそうだろう。後ろに立っているのは妃鈴なのだから。
その妃鈴が、今日はパレオを撒いた水着を着ている。普段は秘書のスーツ姿しか見ないからかなり新鮮である。それだけでなく、こんなにも美人だと感じたのは今までになかったのかもしれない。
「妃鈴……」
「な、なんですか? そんなじろじろ見て……」
ちょっと妃鈴がもじもじし始める。
普段より可愛いその仕草に……。
「熱中症でやられたのか?」
次の瞬間。
顔面に先ほどよりも強烈な盾による打撃を受けて俺の意識は持っていかれた。
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