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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第二章 ヘレスティア
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人の目



 結局、あの後、ボクとキリは強制的に女性用水着をかわされた。

 寝虚の魔法によって、キリは女となり、水着を試着させられていた。

 ボクは指輪をつけたままで試着だ。

 ……精神的に死にました。最後のプライドまでが壊れたような感覚。

 い、いや。まだ女湯には入った事が無いから大丈夫。……大丈夫……な、ハズ……。

 水着にはほとんど下着じゃないかと言いたい言葉を無理やりに飲み込む。きっと顔は赤いままだろう。


 それにしても、ボクよりもキリの方が大変だった。


 まず胸の大きさ。つまり胸囲を測らなければ水着を選ぶこともままならなかったのだから。

 測定したのは白夜。理由は……女性陣の中で一番胸が大きいだろう人を選んだらしい。なるべく傷つかない為に。

 そして、測った結果。白夜はマナやユウ、レナには教えずにこっそりと教えてくれた。上から90、54、92と……。


 アキとソウナは感嘆してたし、妃鈴はピクリと眉を動かしていた。ちなみに雑賀は「それくらい見ればわかるだろう」とか言いながら鼻から血をダバダバと出していた。後で自分でタオルを取り出して拭いた。

 興味の無かった寝虚は寝ていた。


「……G65の水着、ある?」


 白夜が店主の男の人に訊くと、その人も雑賀同様「ブゥッ」とか音が鳴りながら大量の鼻血を吹いた。そんな状態でも店主は一度奥へと引っ込んだ後、鼻血をティッシュで止めながら水着を持ってきた。

 一応はあったらしい。その水着を試着されるキリ。ボクよりもきっとキリの方が辛いだろう。下着を見ただけで前は気絶したのだ。かなり純情だと思う。

 そう考えると、ボクはもうそうでもないのか。今では母に言われて下着を恥ずかしがらずに必ずつけるようになってしまったし……。

 そう考えただけでボクの周りの空気は自然と暗くなった。


「どうしたの~? リクちゃん」

「いえ……。どうせボクにもうプライドなんて物はほとんどないんだなって思いまして……」

「?」


 マナが話しかけてくるがどうやらボクが言ったことは理解できなかったようだ。それもそうだろう。こんな状況になる方がおかしいのだ。

 キリだったらまだわかってくれそうな気もするが。

 ちなみにキリは店内の一目につかない所で女にされてから、男に戻されなかった。

 だから今ボクの隣を歩いているキリは女バージョン。

 ちなみにまたユウが服を持っていた。キリが頑なに女性陣が選んだ服を拒んだので、着ている服は黒いTシャツでその上にジャケット。膝下まであるジーンズだった。長い髪は暑苦しいみたいで、キリが切ろうとしたら女性陣に無理やり止められて、頭の後ろでピンで留められた。


「なんで俺が……」


 キリがかなり落ち込んでる。物凄くわかるその気持ちにボクは同情する。

 そして、みんなは話に夢中で気がついていないだろうが、ボクは気づいていた。

 美少女が集まっていると勘違いした男の人や、羨ましがってる女の人が次々と擦れ違い様に振りかえったりしている事に。


 つまり、かなり目立ってる。


 ボクが居心地が悪いなと思いながらその先にある海へと向かう。他人に見られると言う事に慣れていないのだ。ボクは。

 学校ではもう馴れたが、まだちょっとばかり居心地が悪いと感じたことはある。


「そういえば、海で何をやるの? 私達、何も持ってきていないけど」

「あぁ。それなら……」

「それならユウがたくさん持ってるよ♪ ビーチバレーボールとか、ビート板とか、三人乗りの浮き輪とかね♪ あと、スイカとバットも持ってるよ♪」


 ソウナが妃鈴に訊いた所にユウが入ってきた。

 もしかしなくともアイテムボックスにあるのだろう。いや、アイテムボックスという存在を認めていいのかどうかすら怪しいが。


「いやぁ。夏休みに海外に旅行できるなんて最高だね! 一杯ネタがとれるよ! こりゃぁ新聞を作る時は徹夜で作っちゃうかもね!」

「……適度に休むように」

「そうだぞアキちゃん。ちゃんとしっかり寝るれる時は寝ないと」


 アキに白夜と雑賀が少しばかりの説教を言うけど、当の本人は訊いてないだろう。

 いや、彼女から楽しみを奪うと言う事を二人とも分かっているのか、あえてそれ以上は何も言わなかった。


「もう少し静かにしてほしいですわね……。わたくしはこんなにも暑いですのに……」


 レナは日差しを手で隠しながらボクへと話しかけてくる。

 ボクは氷の魔法を発動していますからとはいえなかった。絶対に妬まれそう。


「そ、そうですね。もう少し周りの空気を読んでほしい所です……」


 もはや足を止めて振り返っている者も居る。


「もしかしてリクさん。あの人達の視線が気になりますの?」

「え、えぇ……。ちょっと居心地が悪いと言うか……」

「あまり気にすること無いですわ」

「そうだよぉ。寝虚だって気にして無いもぉん」


 いや、寝虚はもう少し気にしてほしい。ある意味一番注目されているのは実は寝虚だったりする。クマのぬいぐるみに乗っかってついてきているのだから。


「寝虚ちゃん。ボクがおぶるからクマのぬいぐるみしまわない?」

「えぇ? いいのぉ?」


 寝虚が不思議そうに首を傾げてくる。人の目が集まるからこちらはしまってほしいのだ。

 少し考えてから、寝虚は首を縦に振った。

 そうしてからクマのぬいぐるみから降りると、クマのぬいぐるみはすーっとまるで初めからそこに居なかったかのように消えていった。

 それを確認してから、寝虚はねだる様にして両手をこちらへと広げて笑顔で見上げてきた。


 ボクはその寝虚の前に屈むと、寝虚がボクの背中から腕をまわして体を預けてきたところでボクは立ち上がる。


「わぁ。リクお姉ちゃんクマのぬいぐるみよりは高ぁい」


 グサッと突き刺さる言葉。よりはと言われて心に突きたったのだ。

 自分はそんなにも背が低いと思われていたのだろうか……。

 それにしても、寝虚はとても軽い。これならばいくら歩いても問題はなさそうだ。


「こうしてみると、リクさんは寝虚ちゃんのお姉様見たいですの」

「うぇっ!? い、いや、ボクは……」

「大丈夫ですわ。外見は全く違いますから、家族だとは思いませんわ」


 それもそうだろう。ボクが白銀の髪に対し、寝虚は茶色。

 ボクの毛先はしっかりと伸びているが、寝虚の毛先はくるんっと癖っ毛がついている。

 とは言っても寝虚は黄色い寝間着のフードを被っているので中を見ないとわからない。

 それにしても、寝虚はこの年でロピアルズで働いているのだなと考えると、すこし思うところがある。

 きっと訳ありなんだろうから特に訊きはしないが。

 それに、こうやって安心して寝られるのだから彼女の中ではもう終わったことなのだろうと考える。


「リクお姉ちゃん……冷たくて気持ちいぃ……」


 耳元で寝言が聞こえる。

 その様子に、ボクは口元を少し緩ませた。

 これから来ると絶対に予想できる大きな波乱から目を逸らしながら。


キリちゃんの胸はGカップあります(・・*

爆乳レベルです。雑賀と水着屋の店長は死ぬ寸前でした。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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