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全知の鐘を鳴らせましょう――

さぁ……戦争の始まりだ!


ということで読者のみなさんよろしくお願いします!

 ――ねぇ。貴女は、なんで、知りたい、の?


 踏みしめた事のない雲。

 とても近くに感じる太陽。

 見た事の無い風景。

 聞いた事の無い声。

 感じた事の無い空気。


 私は訳もわからずその場所に立っていて、ここがどこだかさっぱりわからなかった。

 でも、さっぱりわからないっていうのは嫌いじゃない。むしろ好きとさえいえるだろう。

 昔から謎を解いて行くのがとても好きだった私はいろんな事件を追い求めてきた。

 いつの間にか新聞を作り、そしてそれがライコウで唯一の新聞屋となって働いている。

 情報を教えるのはとても面白い。人それぞれの反応が見れるから。


「謎を探求していくのって面白くない?」


 だから私は聞こえた声にそう返した。


 ――そう、なの?


「そうなの」


 うんうんと頷く。

 すると、いつ目の前に来たのか、私よりも年下に見える少女が首を傾げていた。

 背の高さが明らかにこちらの方が上なのだ。あどけなさそうな顔からもその事がうかがえる。


 ――人間って、面白い人が、居る。


「私だけじゃないかな? こんな事知りたいなんて思うひ……人間?」


 私はその子が人間といった部分を聞き逃さなかった。

 つまり、彼女は人間じゃないと言う事。一体……。


 ――ヘル……。


「え?」


 ――名前、ヘルって、言うの。


 ヘル? それは確か、英語で黄泉の国とか、冥界とか……あまりいい名前では無いような気がする。

 そこで、私は人間では無い彼女に訊いてみた。


「どうして、名前がヘルなの? あんまりいい名前じゃないと思うよ?」


 ――自分の、名前。神の、断片だから……。


 神の断片。確かリクやマナ、そしてソウナと最近ではレナか。

 その四人が契約している神様の一部の事だったような気がする。

 つまり彼女は神様か。


「とすると……ヘル……ヘル……。貴女は〝ヘラ〟?」


 私が確認するようにすると、首を横に振った。

 冥界とか、黄泉の国とかだからてっきり死の女神〝ヘラ〟かと思われたのだが……。

 ちなみに私がこんな事を知っているのかと言うと、リク達に神と言う存在に教えられた事により、徹夜でいろんな本を読み、神様を覚えたのだ。そのため、今ならばあまり有名でもなさそうな神様の名前も言える。


「名前はとりあえずいいや。私はどうしていろんな事を知りたいかって言う話だったよね?」


 そのような話だったような気がしたのだが、また彼女は首を振った。


 ――貴女が、面白そうだったから、話しかけた。


「うわぁ。物凄く適当~」


 適当だが、それでも私の興味は尽きなかった。

 神様と話せる機会なんて無いと言っても等しいだろう。こんな貴重な時間を使わせてくれるなんて、私はついている方だろうか。


――ところで、立ってるの、疲れた。膝に、座っても、いい?


 うん。かなり適当な神様だった。

 仕方ないので私はその場に座ると、神の断片が私の膝に座る。不思議と重さを感じなかった。

 自然と距離が近くなり、彼女の表情が良く見える。少し抱くようにしているのでなおさらだ。


 ――やっぱり、人間は、温かい。


「神様は温かくないの?」


 フルフルと首を横に振る。


 ――その、温かさ、じゃない。天で、見ていて、わかった。愛情や、友情って、言葉は、知っていたけど、辞書で、引くような、物でしか、知らなかった。


「ん~。私もその二つの言葉はよくわからないかな~。一番身近な言葉だとしても、その二つは抽象的な言葉だからかな」


 神様と言うのは、友情や愛情と言う物が無いのか。また一つ学べた。ま、そういう私も友情と言うのは少なからずわかるかもしれないけど家族への愛情しか知らない。

 とりあえずそのことは置いておいて、この際いろんな事を聞こうと私は決意した。またいつ会えるかわからないし。


「そういえばさ。ここはどこなの?」


 辺りを見ても、何も無い。下に雲らしきものがあるぐらいしかわからない。


 ――ここは、貴女の、夢を介して、天界へと、つなげたの。ここは、ヘルが、住む家。


 冥界とやらの名前を持つ割には空にあるのか。かなり開けた家ではあるが。周りを見渡しても壁のような物は一つも無いし。家と言うのは少し無理がある。


「じゃあ、どうして空にヘルの家があるの?」


 ――地上が、見える。つまり、地上の、情報が、全て入って、くる。


 地上の情報が全て?

 それって、私にとっては天国のような場所!?


 目を光らせる私。それに気がついたヘルはなんとも微妙な顔をしている。

 ジト目がかなり気になる、


 ――……貴女に、とって、情報って、なんなの?


「もちろん、人生のような物だよね!」


 ――……すみません。貴女は、病気、でしたか……。


 まさかの病人扱いされた。しかも同情するような目をしている。

 そんな目を気にせずに私は考えていた。情報を人生と例えて何がいけないと言うのか。私は不思議でしょうがない。


 ――ひとつ。聞かせて、もらっても、いい?


「何々? 何が聞きたいの?」


 こちとら【情報師】何かを教えられるんなら喜んで教えてあげたい。それは神様にも同じことを言える。


 ――貴女は、たとえ、どんな、危険な、事でも……。知りたいと、お思いですか?


 ヘルに丁寧語でそう言われ、私は少しの間沈黙を続けた。

 どんな危険な事でも。そう言われて考えない人は居ないと思われる。

 進んでそんな情報聞きたい人なんてただの変人だろう。


「もちろん。たとえそれが命を狙われる情報になったとしてもね」


 でも、私はそんな変人なのだ。自覚があるだけマシだろう。

 だって私がどんな情報でも知りたいのは……。


 ――……清々、しい、ですね。……でも、わかり、ました。


 ヘルは丁寧語を続けて使い、私の膝から立ちあがる。

 そのまま歩き続けて、振り返った。


 ――ヘルは、貴女に、会う事に、します。ヘルは、全ての、情報を、知ってる。貴女が、知りたい、情報も。


「え?」


 私が驚いて瞬きをした時には、すでにヘルはその場所から姿を消していた。

 私はどうしたらいいのかと考えながらも、下の景色を見る。

 何気なく座っているが、座っている場所は雲。特に魔法も使っていないので普通は落ちるのだが、落ちたりしない。

 座っていても意味が無いので、私はその場に立ちあがり、とりあえず歩いて行く事にする。

 途中、雲のない場所もあるのだが、足を使って触ってみるとしっかりと感触があるので歩ける事を確認する。

 しばらく空中散歩と言うのを楽しんでいた私は――。


「へ?」


 見えない床を踏み外して下へと落ちていった。


「嘘でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!」


 落ちていく浮遊感を味わいながら、私は最悪の目覚めを迎えた。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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