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悪魔と聖水

ゼンが指をパチリと鳴らすと、シュリの足元に黒い紋章が浮かび上がる。シュリの周りだけ風が吹き上げるように髪とスカートが舞い上がる。

「何!?」

シュリが一歩後ずさろうとした瞬間黒の紋章から粘土の高い液体が噴出した。そのすべてがシュリに向かい飛んでいく。

「シュリ君」

神父がとっさにシュリを突き飛ばし、自分は避けきれずに黒い液体に吹き飛ばされる。空に舞い上がった神父の体が地面に叩きつけられた。

「神父様!!」

シュリの悲鳴じみた声。神父に駆け寄ろうとした腕をゼンが掴み、シュリの細い首を片手で締め上げる。

「逃げんなよ、お譲ちゃん」

「う…ぐ…」

苦しそうにもがくシュリ。僕は見ていられなくなりゼンの服にしがみつく。

「ゼンもういいよ。僕、魂とかいらないから」

「何言ってる。魂を狩るのが俺たちの仕事だろうが」

「でも」

言いつのろうとした僕にゼンは舌打ちし、シュリを投げ飛ばす。地面を数メートルこすって止まるシュリの体。小さいく呻く声が聞こえた。

ゼンがこちらに向き直る。

「お前、そんなんだから万年最下位なんだよ」

「う…」

「いいか、願いを叶える対価を貰うんだ。どこの世界だって何すればその分の報酬を貰う。それが俺たちにとって魂ってだけだ。まっとうな仕事だろう?」

「どこがまっとうですが」

神父の声に僕とゼンが振り返る。うつ伏せに倒れていた神父が片肘を突き顔を上げていた。ゆっくりと体を起していく。打ちつけた所が痛むのだろう、ときどき顔をしかめては小さく呻いたいたが、聖書片手に立ち上がった。

「はぁ…」

深い息を吐く神父に、ゼンが舌打ちする。

「何だまだ起き上がれるのか」

ゼンが片手を上げ詠唱魔法を唱え始めた。

『地に跋扈する魔に属する者たちよ』

「わーゼン何やってるの。それ最上級詠唱魔法じゃん。そんなのくらったら神父死んじゃうよー」

僕はゼンの腕に取りすがる。

「おっ!最上級詠唱魔法覚えていたんだないつも居眠りしてたのに、偉い偉い」

「えっそう?」

時と場所を忘れて喜ぶ僕。てっちがーう。

「神父逃げて」

僕が神父を振り返ると神父は聖書を開き何かを唱え始めた。その目が据わっている。あれ、おかしいぞ。

僕の額に汗が浮かぶ。ゼンも気がついたのだろう、怪訝そうに神父を覗う。

ビシリと空気が張りつめた…ような気がした。

神父の口から朗々と紡がれる言葉

『初めに言葉があった言葉は神であった神は言葉と共にあった…』

ビシ、ビシリ。今度は間違いようのなく、僕の周りの空気が張り詰め、体が言うことを効かなくなっていく。

「あれ、体が重い…」

「くそ、神父め…」

神父が懐に手を入れ小さな小瓶を取り出す。その蓋のコルクを口で開けると、振りかぶった。

「これでどうです!!」

聖水が入っていると思われる小瓶が額が割れるかと思われるほどの猛スピードでゼンにぶち当たり、申し訳程度に聖水がジョボボと降りかかる。デジャブ…か?

「ウギャアァァァ」

「ゼンー」

ゼンが悲鳴を上げたが、これはどう考えても聖水の力と言うよりは殺人的小瓶のせいだ。あっでも聖水の力は確かにあったのかもしれない、なぜならゼンにぶち当たり跳ねかえった小瓶は神の加護のせいか、割れてはいなかった。聖水の力ってすごい。

「死ぬなーゼン」

「神の勝利です」

いや、あんたの腕力の勝利だ。



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