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元勇者パーティの同僚と一年ぶりに再会した。

作者: kanon
掲載日:2026/11/06

「んー。ここのごはん美味しい。ついつい頼み過ぎちゃった」


「よお、ローゼ」


「え……、アイザック! 随分久しぶり。一年ぶりくらい?」


「最後に会ったのが去年の冬だからな。もうそんなに経つか」


「あら貴方、何だか若返ったわね」


「お前も若返ったように見える」


「失礼な。私はいつ何時でも若々しいのよ」


「へいへい。隣の席いいか?」


「どうぞ。ついついごはんを頼みすぎちゃってね。食べるの助けて」


「相変わらずだなあ。お前はいつもあれこれ欲張って頼んでは食いきれず、みんなに分けてた。食い意地が張ってる」


「その節はお世話になったわ。……勇者パーティにいた頃のこと、思い出しちゃった。懐かしいな」


「山場を越える度、みんなでよく打ち上げしたものだ」


「みんなどうしているかしら」


「詳しくはわからん。もう随分会ってない。まあ各々の道を進んでいるだろう」


「打ち上げいつも楽しかったなあ。戦闘について意見言い合ったりして」


「ローゼは毎回俺に散々喧嘩売ってきた」


「あのね、私は体力貧弱な魔法使いなの。前衛のアイザックが守ってくれないと死んじゃうわけ。指摘するのは当然!」


「いつも守ってただろうが。なのにお前はぎゃんぎゃん文句言って」


「だって、時々怪我したもの! アイザック動きが鈍いから庇うの間に合わないことあったでしょ」


「鎧着てるやつに素早く動けとか無茶言うな。俺の守備範囲から出るローゼが悪い。それで返り討ちにあって撤退するし……」


「私が悪いってこと?」


「もちろん」


「このっ……!」


「やるか?」


「……」


「……」


「……止めた。いい加減落ち着きたいものだわ」


「気性ってやつは一生直らんらしい」


「私たちが言い合いになる原因って絶対アイザックにもあるわよね。いちいち挑発してくるんだから」


「構ってもらえるのが嬉しくてつい」


「……」


「どうした?」


「いきなりはずるいと思う」


「そりゃ悪い」


「これ食べる?」


「照れ隠しに好物譲るのも相変わらずか」


「いらないなら私が食べる」


「せっかく譲ってくれたからもらう。ありがとな」


「むう。……散々喧嘩売ったけど、いつも頼りにしてたわよ」


「俺としては、途中からもどかしかった。成長が伸び悩んだせいで、一軍について行きにくくなった」


「いつも努力してたの知ってるわ」


「お前は途中から一気に覚醒したよな。ちょっと悔しかった」


「ふふん、才能開花したからね。でも思い切り闘えたのは、アイザックが守ってくれたおかげ」


「最後の闘い、一緒に出陣できなかったのは今でも心残りだ」


「仕方ないわよ。直前で大怪我したんだから」


「情けない話だ」


「……私のこと守ろうとして、無理したから」


「無理しないとお前が死んでたから。あれはやばかったな。二人とも生き残れて僥倖だ」


「アイザックの仇はちゃんと取ったからね」


「へいへい。あのへなちょこ魔法使いがよくここまで成長したもんだ」


「何ですって?」


「やるか?」


「ぐぐ……。アイザックはいつもこんな調子なんだから」


「気安くないとこんな対応できん。ローゼもこのやりとりが満更じゃなかっただろ」


「わかりやすかった?」


「パーティ解散後に堂々と食事誘えるくらいにはわかりやすかった」


「私は全然わからなくてドキドキだったのに!」


「全部顔に出てて可愛かった」


「両想いかわからなくて葛藤してた私の切なさ返して。……これ食べる?」


「どうも。ちゃんと俺から告白しただろ。というか、俺らは付き合っても結婚しても終始この調子だった」


「喧嘩が絶えない日々だったよね。もはやあれはスキンシップだった」


「俺は喧嘩してない。ローゼが突っかかって、俺が流してた」


「むかー!」


「まあでも、子供ができてからは落ち着いた感じがある」


「流石に子供の前ではね。いくら本気じゃなくても教育にいい光景じゃないでしょ」


「いい母親だ。子供が独立してからまた元に戻った感あったが」


「アイザックが挑発するからでしょ」


「構ってもらえるのが嬉しくてつい」


「もう。……それにしても、時の経過って早いわ。出会ってから何年経った?」


「60年は超えてる」


「だよね。……突然いなくなったときはびっくりしたわよ。全然前兆なかったもの」


「俺としてもいつも通り寝たらそのままって感じだ」


「病気でもなく事故でもなく、苦しそうでもなかったのが救いだったけど」


「置いて行ってすまん。こればかりはどうしようもなかった」


「うーん。まあショックだったけど。でも私は何としてもアイザックよりも長生きする気だったわ。だから看取る覚悟はしてた」


「なんだ、そんなとこでも負けず嫌いか」


「違うわよ。アイザックがお願いしたでしょ。ローゼの死に顔は見たくない。俺よりも長生きしてくれって」


「……いつ言った?」


「深酒したときに何度か言ってた。覚えてなかったみたいね」


「うわあ」


「ふふん。体調管理頑張ったからね。目標達成」


「いやでもローゼの方が俺より三つ年下だろ。寿命的には俺の方が長生きだった」


「あー。そういう感じ? え、全然死んだ感覚ない。私も老衰?」


「何だ? 心残りでもあるのか?」


「いやないけど。歳が歳だったから、遺言もしているし。リリちゃんがあまり悲しまないといいわ……」


「あの娘は大丈夫だろ。ローゼに似て強い」


「いやどう考えてもリリちゃんはアイザック似だと思う」


「そうかあ? ……お、もう食い終わったか?」


「うん、美味しかった」


「追加注文は?」


「もういい」


「じゃあ行くか」


「どこに行くの?」


「さあ。まあ、行きつく先があるだろ」


「そりゃそうね。一年間待たせちゃってごめん」


「もっとゆっくり来てもよかった。……頼みを聞いてくれて、ありがとう」


「どういたしまして。うーん、それにしても何で若返ってるのかしら」


「最期に思い切り食えるように、じゃないのか?」


「最期まで私は食い意地が張ってたわけ」


「ローゼらしい。まあ俺としても若返ってるのは助かる。ヨボヨボじゃお前のことをしっかり守ってやれん」


「……手、繋いでていい? ちょっと怖いから守ってね、アイザック」


「ああ、もちろん。守ってやる、ローゼ」

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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