元勇者パーティの同僚と一年ぶりに再会した。
「んー。ここのごはん美味しい。ついつい頼み過ぎちゃった」
「よお、ローゼ」
「え……、アイザック! 随分久しぶり。一年ぶりくらい?」
「最後に会ったのが去年の冬だからな。もうそんなに経つか」
「あら貴方、何だか若返ったわね」
「お前も若返ったように見える」
「失礼な。私はいつ何時でも若々しいのよ」
「へいへい。隣の席いいか?」
「どうぞ。ついついごはんを頼みすぎちゃってね。食べるの助けて」
「相変わらずだなあ。お前はいつもあれこれ欲張って頼んでは食いきれず、みんなに分けてた。食い意地が張ってる」
「その節はお世話になったわ。……勇者パーティにいた頃のこと、思い出しちゃった。懐かしいな」
「山場を越える度、みんなでよく打ち上げしたものだ」
「みんなどうしているかしら」
「詳しくはわからん。もう随分会ってない。まあ各々の道を進んでいるだろう」
「打ち上げいつも楽しかったなあ。戦闘について意見言い合ったりして」
「ローゼは毎回俺に散々喧嘩売ってきた」
「あのね、私は体力貧弱な魔法使いなの。前衛のアイザックが守ってくれないと死んじゃうわけ。指摘するのは当然!」
「いつも守ってただろうが。なのにお前はぎゃんぎゃん文句言って」
「だって、時々怪我したもの! アイザック動きが鈍いから庇うの間に合わないことあったでしょ」
「鎧着てるやつに素早く動けとか無茶言うな。俺の守備範囲から出るローゼが悪い。それで返り討ちにあって撤退するし……」
「私が悪いってこと?」
「もちろん」
「このっ……!」
「やるか?」
「……」
「……」
「……止めた。いい加減落ち着きたいものだわ」
「気性ってやつは一生直らんらしい」
「私たちが言い合いになる原因って絶対アイザックにもあるわよね。いちいち挑発してくるんだから」
「構ってもらえるのが嬉しくてつい」
「……」
「どうした?」
「いきなりはずるいと思う」
「そりゃ悪い」
「これ食べる?」
「照れ隠しに好物譲るのも相変わらずか」
「いらないなら私が食べる」
「せっかく譲ってくれたからもらう。ありがとな」
「むう。……散々喧嘩売ったけど、いつも頼りにしてたわよ」
「俺としては、途中からもどかしかった。成長が伸び悩んだせいで、一軍について行きにくくなった」
「いつも努力してたの知ってるわ」
「お前は途中から一気に覚醒したよな。ちょっと悔しかった」
「ふふん、才能開花したからね。でも思い切り闘えたのは、アイザックが守ってくれたおかげ」
「最後の闘い、一緒に出陣できなかったのは今でも心残りだ」
「仕方ないわよ。直前で大怪我したんだから」
「情けない話だ」
「……私のこと守ろうとして、無理したから」
「無理しないとお前が死んでたから。あれはやばかったな。二人とも生き残れて僥倖だ」
「アイザックの仇はちゃんと取ったからね」
「へいへい。あのへなちょこ魔法使いがよくここまで成長したもんだ」
「何ですって?」
「やるか?」
「ぐぐ……。アイザックはいつもこんな調子なんだから」
「気安くないとこんな対応できん。ローゼもこのやりとりが満更じゃなかっただろ」
「わかりやすかった?」
「パーティ解散後に堂々と食事誘えるくらいにはわかりやすかった」
「私は全然わからなくてドキドキだったのに!」
「全部顔に出てて可愛かった」
「両想いかわからなくて葛藤してた私の切なさ返して。……これ食べる?」
「どうも。ちゃんと俺から告白しただろ。というか、俺らは付き合っても結婚しても終始この調子だった」
「喧嘩が絶えない日々だったよね。もはやあれはスキンシップだった」
「俺は喧嘩してない。ローゼが突っかかって、俺が流してた」
「むかー!」
「まあでも、子供ができてからは落ち着いた感じがある」
「流石に子供の前ではね。いくら本気じゃなくても教育にいい光景じゃないでしょ」
「いい母親だ。子供が独立してからまた元に戻った感あったが」
「アイザックが挑発するからでしょ」
「構ってもらえるのが嬉しくてつい」
「もう。……それにしても、時の経過って早いわ。出会ってから何年経った?」
「60年は超えてる」
「だよね。……突然いなくなったときはびっくりしたわよ。全然前兆なかったもの」
「俺としてもいつも通り寝たらそのままって感じだ」
「病気でもなく事故でもなく、苦しそうでもなかったのが救いだったけど」
「置いて行ってすまん。こればかりはどうしようもなかった」
「うーん。まあショックだったけど。でも私は何としてもアイザックよりも長生きする気だったわ。だから看取る覚悟はしてた」
「なんだ、そんなとこでも負けず嫌いか」
「違うわよ。アイザックがお願いしたでしょ。ローゼの死に顔は見たくない。俺よりも長生きしてくれって」
「……いつ言った?」
「深酒したときに何度か言ってた。覚えてなかったみたいね」
「うわあ」
「ふふん。体調管理頑張ったからね。目標達成」
「いやでもローゼの方が俺より三つ年下だろ。寿命的には俺の方が長生きだった」
「あー。そういう感じ? え、全然死んだ感覚ない。私も老衰?」
「何だ? 心残りでもあるのか?」
「いやないけど。歳が歳だったから、遺言もしているし。リリちゃんがあまり悲しまないといいわ……」
「あの娘は大丈夫だろ。ローゼに似て強い」
「いやどう考えてもリリちゃんはアイザック似だと思う」
「そうかあ? ……お、もう食い終わったか?」
「うん、美味しかった」
「追加注文は?」
「もういい」
「じゃあ行くか」
「どこに行くの?」
「さあ。まあ、行きつく先があるだろ」
「そりゃそうね。一年間待たせちゃってごめん」
「もっとゆっくり来てもよかった。……頼みを聞いてくれて、ありがとう」
「どういたしまして。うーん、それにしても何で若返ってるのかしら」
「最期に思い切り食えるように、じゃないのか?」
「最期まで私は食い意地が張ってたわけ」
「ローゼらしい。まあ俺としても若返ってるのは助かる。ヨボヨボじゃお前のことをしっかり守ってやれん」
「……手、繋いでていい? ちょっと怖いから守ってね、アイザック」
「ああ、もちろん。守ってやる、ローゼ」
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。




