03-02.
チェックインを済ませると、弘臣さんを部屋まで連れていく。
「お水を飲めますか?」
「ああ」
ベッドに座る弘臣さんはぼんやりとした顔でグラスを受け取ると、ゴクゴクと喉を鳴らして水を飲み干す。
わずかに口元から溢れ落ちた水が、弘臣さんの喉元を伝うのが妙に色っぽく感じられて、私はその様子を食い入るようにうっとりと見つめた。
「お酒、あまり強くないんですね」
「君が強すぎるだけだろう……。あまり酔っているようには見えない」
「そうですか? これでも結構酔っているんですよ?」
私はそう言って微笑みを向けると、弘臣さんのネクタイに触れる。
「苦しそうなので、首元を緩めますね?」
上質なネクタイを滑らかに外すと、私はゴクリと唾を飲み込んでシャツのボタンに指をかける。
一つ、二つとボタンを外す度に、私の胸は高揚していく。
指をかすめる彼の熱に、しっとりと汗ばむ肌に、行き場のなかった私の心が少しずつ満たされていくのを感じる。
開けた彼の胸元を見ているだけで、心震えるほどの充足感を抱いていた。
「まぁ、随分鍛えていらっしゃるのですね」
鎖骨の下に覗く胸板は想像してたよりずっと厚い。
弘臣さんの首から胸元にかけての色っぽさに、私はドキドキと胸を高鳴らせた。
「医師は体力勝負だからな……。それに……弛んだ体なんてみっともないだろう」
「ストイックなんですね。それなら――」
私は弘臣さんの眼鏡を外すと、トンッと肩を押してベッドへ倒す。
「もっと見せてください」
「おい、何をする」
「弘臣さんは――」
私は弘臣さんを見つめながら、ゆったりとのしかかった。
「性格も、表情も、話し方も久我さんとは似ていませんが……顔立ちと声が似ていますね」
私は弘臣さんのわずかに崩れかかっていた髪型を大胆に崩す。
「ほら、眼鏡を外して髪を下ろすと余計に……それに名前も――」
弘臣さんが私をじっと見つめているのが、ゾクゾクして堪らなかった。
久我さんの目には葉月さんしか映っていない。
でも、久我さんと似たこの人の目には、はっきりと私が映っているのが見える。
この人なら、ずっと満たされなかった行き場のない気持ちを満たしてくれるかもしれない。
目の前のこの人なら……。
弱った心では、もう自分の暴走を止めることができなくなっていた。
私は笑みを浮かべて目の前の人の胸元にツーッと指を這わせると、さらにシャツのボタンを外していく。
「ねえ……私を抱いてください。――『久我さん』」
私を『久我さん』のものにしてほしい。
ただただそう願った。




