虎雨まいと鍵のトリセツ
ヂリリ…
七時。カーテンの隙間から朝日が差し込み、キラキラと輝いている。
「ドベコック〜、朝ごはんまだ〜?」
「うるへー食いしん坊! 今卵を焼いとるわ、あと5分待ちなはれ!」
ドベコックとはまいの義姉、虎雨あみのことで、長谷田大学の落ちこぼれだ。虎雨家の食品関連は全て彼女が管理している。
「ごちそうさま! お義姉ちゃん、弁当ありがとう。いってきまーす!」
8月は中学生は夏季休暇だ。今日も朝っぱらからちほと遊ぶ。
「それでね、ちほ〜? この鍵がないと頭が痛くなるし、それどころかこれを持っていると頭が冴えた感じがするの。」
「結局インフォメーションセンターには届けてなかったんですね…。でも、うん、興味深い鍵ですね。頭が冴えた感じがするって、どんな風に?」
「なんかね、頭が透き通ってるというか…、遠くまで見えるというか…、今まで気にもとめてなかった色んなことが気になるようになってきたの。今も、あのごろごろいってる機械で何かありそうだな〜、とか思ってた!」
2人はイロンモールのフードコートで水すら取らずに座っているわけだが、そのすぐ斜め前にあるウォーターディスペンサーが異常に音を立てているのだ。
ポンッ!
甲高い破裂音とともに、その異常な音は止まった。と同時に、黒煙を吐き始めた。
「まいちゃんの予感が現実になりましたよ! 火災報知器とか、スプリンクラーとか、作動するかもしれないです、何もない今のうちに離れましょう。」
「待ってよちほ〜、あそこ、なんかいるよ〜。」
なんか といったが、本当になんか だ。ウォーターディスペンサーから出てきたそれは全長5cmほどで、全身が黒く、足は8本あり、人間のような顔をしている。アシタカグモのようだ。少なくともこの世のものではない。
「ひっ…! なんですか、あれは!」
顔面蒼白。
「ちほ、あれの腹部にある穴、見える?」
「えっ…、あっ、はい。」
「あれにこの鍵をさしてみたら、少女漫画みたいに何か起こりそうだな〜って、思わない?」
あまりにも適当な思考だが、まいはそう信じて疑わない様子だ。興味が体を支配し、ちほが答えるよりも先に動き始めた。
狙う、挿す、捻る。目の前が灰色に染まると同時に、反射か何かのように、体から自然と声が出た。
「鍵よ、禍殃の戸を鎖し給え!」
最後は静かであった。まいがこれを唱えた直後、クモのようなそれは動かなくなり、数秒ほどでドッグタグのような薄い板となった。これも鍵と同じくビスマスのような見た目だ。それとは対照的に、まいは頭を抑え、肩で呼吸をしていた。
「まいちゃん、大丈夫ですか。さっきの呪文のようなものは…?」
とても答えられる状態ではない。わかったのは、鍵は日常の不便や事故を閉じ込める効果があることと、使うと体力を大量に消費することだけだ。
そして、二つ目の鍵はすぐそこでまいを待っていた。
後書きがあるので、キャラについて書こうかと。
虎雨家は4人家族です。虎雨は虎が雨を縮めています。まいは諸言語で5月、あみは琉球語で雨で、どちらとも苗字に関係あるんですよ! そろそろ虎が雨関連の名前のネタが切れてきました。このままじゃ「お父さんはタイ国籍で虎雨プルッサパーコム」とかになりかねません。
今回はウォーターディスペンサーが壊れました。イロンモールの運営会社は17万5000円の被害を受けたわけですね、かわいそー。次回は2つ目の鍵をゲットし始めますよ〜〜〜:D