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教室の居場所

教室では緊張感がビリビリと漂っている。少なくとも俺には、そして間違いなくソフィアにも。生徒たちがザワザワと騒ぐ中、蓮先生が静かにするようスッと求め、ソフィアのプレゼンの順番を告げる。彼女は両手でカルテルをギュッと持ち、短く俺を見て、最後の後押しを求めるような視線を投げる。(ソフィア、君ならできる!)俺はゴクリと唾を飲み込み、計画がうまくいくことを祈る。


ソフィアは最初のカルテルをサッと見せる。そこにははっきりとした日本語でこう書かれている:

《気候の変化で声が出にくいので、ごめんなさい》

クラスはコクコクと頷き、好奇心を帯びた視線を向ける。彼女は次のカルテルにパッと進む:

《私の名前はソフィア・バレンティーナ・カタルド、15歳です。父はプロのサッカー選手です》


ソフィアは堂々と頭を上げているが、生徒たちのザワザワが大きくなる。


三枚目のカルテルにはこうある:

《実は貧しい家庭で育ち、母と二人で暮らしてきました》

彼女の笑顔は揺るがないが、目がキラッと潤み始める。教室はシーンと静まり返り、俺の胃はギュッと締め付けられる。

四枚目のカルテルはさらに心を打つ:

《母が恋しいけど、もっと良い未来のためにここに来ました。困らないように》

彼女の目の端に涙がポロッと光るが、笑顔を保っている。(なんて勇敢なんだ、ソフィア!)俺も泣きそうになるのをグッと堪える。


五枚目のカルテルにはこう書かれている:

《この大きな変化や皆と馴染めないのが怖いです》


頬に一筋の涙がスーッと流れ、手がわずかにブルッと震える。でも、俺が心配する間もなく、彼女は最後のカルテルをバンと見せる:

《ただ、皆と仲良くしたいだけです》


彼女の小さなすすり泣きがヒッと教室の静寂を満たす。

(一瞬、クラスが冷たく反応するんじゃないかと怖れる。彼女みたいな境遇の人が受け入れられなかったら?)だが、突然、大きなすすり泣きがワッと静寂を破る。ジェニファーが涙で目をキラキラいっぱいにしながら立ち上がり、ソフィアにダッと駆け寄って首を抱きしめる。


《そんな大変な思いをしてたなんて知らなかった! ソフィア、ほんとにすごいよ!》彼女は泣きながらグスグスと言う。


他の生徒たちもパチパチと拍手を始め、控えめな子もいれば、心からのニコッとした笑顔を見せる子もいる。女の子たちのグループが近づき、高級なハチミツやお茶をスッと差し出して喉を労わり、ソフィアの勇気を称え、友達になりたいと言い出す。そこには、カルテルで声を借りた俺の仲間が、泣きながらもニコッと笑い、ようやくこの新しい世界で居場所を見つけたかのように立っている。

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