決意の筆跡
二階に上がると、雑多な店がズラリと並んでいて、なんとメイドカフェまである。(学校にこんなの必要?) 文房具店を見つけ、運良く大きな紙とマーカーのセットもパッと発見した。
《これでいい!》俺は紙をトロフィーのようにガバッと掲げながら叫ぶ。《プレゼンのポスターを作ろう。言いたいことを書けばいいし、もし誰かが話さない理由を聞いたら、声が出ないってことにしよう。どう思う?》
ソフィアは首をかしげ、アイデアを吟味している様子だったが、突然、決意に満ちた表情になる。《いいね。でも、私の言葉にするなら、私が書きたい。日本語はアンタが教えてよ、ね?》マーカーをギュッと手に取り、決然とした目で俺を見る。その目に逆らうなんて無理だ。
《う、うん、いいよ》彼女の勢いに少し気圧されてドギマギしながらどもる。《でも、クラスで分かりやすく自然に聞こえるようにしないと…だから、ゆっくり進めよう》
ソフィアは店のテーブルにドスンと座り、マーカーを持って準備万端。俺は彼女の後ろに立ち、そっと手を添えて文字の書き方を教える。俺の胸が彼女の背中にスッと触れ、腕がくっつくたびに、心臓がドドドと爆発しそうなほどドキドキする。(なんでこんな気分になるんだ?)彼女から漂う、フローラルでほのかに柑橘系の香りに、ブルッと頭を振って我に返る。ソフィアは俺のリズムに合わせようとするけど、時々線がグニャと曲がったり、はみ出したり。彼女らしい小さなミスだ。それでも文字は読めるし、彼女の決意は揺るがない。その真剣な目、凛とした姿勢。(それが俺を集中させてくれる。彼女がこんなに勇敢なら、俺だって負けられない)彼女の選択に少し疑問はあるけど、これは彼女の物語、彼女の決断だと尊重する。