予期せぬコミュニケーション
スマホを手に取ってグループに返信しようとするけど、画面がフリーズ。目を細めて、軽くポンと叩く。今までそこそこマシだったスマホ、ジェニファーの写真にソフィアが送りまくる反応と絵文字の嵐に耐えきれねえ。チャットがハートやぬいぐるみのスタンプで埋まる。…ん? 首傾げる。
「飛行機の形したワニって何だよ?」と、首の後ろを掻きながら。「何見逃してんだ?」
急に、ソフィアがアルゼンチンの生活の写真を上げ始める。チャットをスクロールして、画像に引き込まれる。一枚は、錆びた遊具や壊れた遊具の前で笑うソフィア。もう一枚、土の道を歩くソフィア、短い髪が風でグシャッ、気楽な顔。次に、彼女の家。ボロボロで、壁のヒビはペンキじゃ直せねえ。周りの家、全部、鋭いトゲの鉄格子か、金属のトゲや割れた瓶のガラスが刺さった壁。ため息ついて、布団にもたれる。(治安悪いって本当だな)でも、ソフィア、なんでもねえみたいに写真撮って、全部ぶっ飛ばすような笑顔。
さらにスクロール。で、止まる。老犬が寝そべって、灰色のトラ猫がその上にゴロン。ソフィアが書く。「犬はファティガ、猫はエステラ、どっちも保護した。エステラ2歳、ファティガ16歳。」犬と猫の絵文字にハート付ける。髪かき上げて、考える。犬の16歳って、どれくらいだ? ジェニファーのペットみたいに血統書付きじゃねえけど、ソフィアの家族、苦労しててもすげえ愛情で世話してたんだな。ジェニファー、ソフィアの写真に可愛い絵文字をガンガン。ハート、笑顔、キラキラ星。心の中で笑う。(変な会話の仕方だな、でも、めっちゃ伝わる)
で、ソフィアが上げる次の写真で手が止まる。めっちゃ着込んで、明らかに母親の女の人を抱きしめるソフィア。二人とも温かい目、でも、母親のクマがヤバい。若そうだけど、仕事でクタクタって感じ。布団に寝っ転がって、部屋の天井見上げる。俺の状況考える。3時間で親に会える電車あるけど、ソフィアにはそれねえ。貧しいとこ出身でも、母親のためにすげえ野心持ってる。眉上げて、ブツブツ。
「ほんと、言葉分かんねえ国に飛び込む勇気、俺にあったかな?」
ジェニファーの新メッセージで思考がぶった切られる。スジンが学校来てるなら、誰か、たぶん先生が、彼女とコミュニケーション取ってるって。背筋伸ばして、目細める。
「なるほどな。」と、肘をテーブルに。「じゃなきゃ、教えられねえよな?」
チャットで返す。よく分かんねえけど。「で、何の案?」ジェニファー、速攻。「先生に相談して、スジンをどう説得するか聞こうよ。」腕組んで、考える。悪くねえ案だ。スジンのクラスの奴らの反応見る限り、彼女、あんま他の生徒と絡んでねえ。書く。「確かに、それいけそう。」
立ち上がって、明日の準備を始める。スマホ、テーブルに置く。休憩は後回し。やることあるぜ。




