(2) 誰も気づかぬ大目玉
俺が目指すのは謎に包まれた最強フード
謎に包まれた...とは言ってもやっぱり相棒的なのは欲しいよな
男と二人なんてのはごめんだから、もちろん女の子を探すわけだが
ほとんどをその子と過ごすんだ...
「......可愛い方がいいに決まってんだろおおおお!!」
裏切りも考えるとやっぱり奴隷なんかがいいのだろうか
訳アリ貴族なんてのは、ある程度顔もきくしいいんだが...
「とりま、奴隷商にでも行ってみるか...」
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カランコロン
「いらっしゃい」
「最高の料理はあるか」
「お客さん、うちは武器屋でっせ」
「トマトの天ぷらを頼む」
「もちろんですよ(ニヤっ)」
なんでトマトの天ぷらなのかは知らないが
裏路地のごろつきに、金をちらつかせたらすぐに教えてもらえた
「どんな奴隷をご所望で?
護衛なら獣人、愛でるなら少し値は張りますがエルフなんかも...」
「金はいくらでも構わん」
「見た目がよくて、できれば没落貴族なんかだと助かる」
「うーん、うちはこの町一番の商品数ですがなかなか
そういった、ご希望には添えないですね~」
「やっぱり、そういった子は人気ですからどの町に行っても同じだと思いますよ...」
「そうか...」
「お金を気にしないんでしたらオークションなんかはいかがですかな?
ちょうど3日後に大陸最大規模の奴隷オークションが地下闘技場であるんです...」
「本当か、助かる...」
「誰でも入れるというわけでは...」
ジャラッ
「私、ガラドの紹介といえば入れますので...
今後もおひいきに~(にぎにぎ)」
こっちの世界(裏社会)は楽だ
良くも悪くも金がすべてだ
これでも一応は勇者だから
なんやかんやと金が入ってくる
「オークション...か...」
武器なんかも揃えたいからあまり金は使いたくないけどな...
そして迎えたオークション当日
狙うは目玉のハイエルフ!ではなく、
注目されてない身分不詳の少女だ
俺が隠してるスキルの一つ
《鑑定眼》を使えばわかる
あれはうまく人に化けているが、人ではないな...
「ね、猫神族!!?」
猫神族って言ったら伝説の超越種が一つ
超越種というのは戦闘力、治癒能力、魔法理解など特定の分野に特化した
最強の種族の総称だ
数が少ない上に人とはあまり関わらない
その超越種の中でも猫神族はこのエリディア大陸の一部の深い山岳地帯にしか生き残ってないとされている...が、他の奴らは気づいてないのか?
そもそも神の使いとして圧倒的な力を誇る猫神族ならあんな檻なんて簡単に壊せると思うが...
まあなんにせよ、これで狙い目は確定だな
「こちらの身元不詳の少女は5,000タリスで落札~~」
「買えた...こんなにも安く買えてしまった~~」
宿が1泊25タリスくらいだから、これはラッキーすぎるっ
ちなみに俺の貯金は460,000タリスほどある
後に聞いた話だが、目玉だったハイエルフは580,000タリスで落札されたらしい
もしみんなが猫神族に気づいてたら危なかった...
伝説の超越種がキモデブ金持ちのペットになんてなったら
もったいないったらありゃしない...
「奴隷契約は結ばれますか?」
落札後は会場の裏で落札した奴隷と契約をする
契約を結んだ奴隷は主人には逆らえなくなる
痛めつけたりするつもりはないんだから契約しなくてもと思ったが
相手は猫神族だ
万が一にも本気を出されたらひとたまりもない......
だから一応契約はした...
「あの...よろしくお願いします、ご、ご主人様...」
「おまえ、名前は?」
「わからない...何も...わからないです...」
「そうか...アイリス、お前の名は今日からアイリスだ」
「はい...ありがとうございます...」
ぼさぼさの茶髪にメリハリのない体、顔も正直普通だ
年は俺と同じで16くらいだろうか
正直容姿は俺好みではないが、確か超越種のほとんどは自由に姿を変えられると聞いたことがある
落ち着いたらお願いしてみよう...!
「ここが、俺が泊まってる宿だ 同室でいいな」
「はい...」
「まずは、先に言っておこう
俺はお前をストレス発散の道具として買ったわけじゃない」
「俺の野望はおいおい伝えるとして、お前には前衛として俺と一緒に戦ってほしい」
「でも、私...戦うなんて...」
「お前は猫神族なんだろ?だったら戦闘技術は一級のはずだろ?」
「猫神...?なんですかそれは...」
「え!?お前自分が何者かわかんないのか?」
俺の《鑑定眼》にはちゃんと猫神族と書いてある...
「わからない...何も思い出せないんです...」
「記憶がないのか...?」
「...たった一つだけ...お母さん...?優しくて、懐かしい雰囲気だけがたまに浮かんでくるんです...」
「そうか...」
困った、どうしよう...
まあそのうち猫神族の里を探しに行くのもいいのかもな...
「今日は遅いしもう寝よう...
また明日、模擬戦でもしてみよう」
「はい...あの......///」
「あー、大丈夫よ...今のアイリスは俺の好みじゃないからな...(笑)」
「すみません...ご主人様...」
「ご主人様はやめようか」
「で、でも...」
「命令だ」
「はい...リ、リオネル......様」
「まあいいだろう...おやすみ」
「おやすみなさいませ、リオネル...様...」
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〈アイリス〉
・レベル 1
・種族 猫神族
・武器 ――
・スキル ――