村長さん
童話です。
生まれた男の子の足裏に黒いアザがありました。
昔、村長さんがいました
毎日、御馳走を食べ、高価な着物を着てたいそう立派に見えました。
けれど、村長さんは自分の贅沢には惜しみなくお金を使いましたが、
家族や村の人々にはケチで泣かせました。
村長さんが年をとり、亡くなりました。
亡くなった村長さんの足の裏に墨字で「村長」と書いて棺桶に入れました。
あの世で何かあった時、閻魔さまに生前の身分を証明したいので書くようにと、
村長さんから言われておりました。
それから年月が流れ、村長さんの奥様も亡くなりました。
月日がたつのは早いもので、
七年目の夏がきて、秋がきて、寒い冬がきました。
村一番貧乏な家に男の子が生まれました。
「おや、あかちゃんの足の裏に大きなあざがある」
お産婆さんも若い母親も気になりました。
男の子一年目のお誕生日に、お産婆さんが赤ちゃん用のおもちゃと
暖かそうな綿の入ったちゃんちゃんこを持って訪問しました。
男の子の若い母親が言いました。
「足裏のあざが何か字に見えるんやわ」
お産婆さんが、どれどれと、目を見開いてよく見ると、黒いあざは少し
薄くなっていましたが「村長」という字に見えました。