1入学式
椅子に座り僕─市村 拓人は牛乳を飲む。陰キャの僕からしたら今日は来なくてよかった日。そう、高校の入学式だ。まあ、友達作らずに、ぱぱっと、3年間を終わらせる。それが一番いいと思う。この学校は中高一貫校だから、知り合いがいる。でもその知り合いは、いないほうがマシ。だって…まあ学校に行けば誰でもわかるはずだ。僕は学校の寮に住んでいる。だから親はいない。さて、そろそろ学校に行く。寮から学校は近くて、寮から緩やかな坂を下ったところに学校が建っている。学校の門をくぐったら、見たことがあるヤンキーたちがいた。
「おう、良く来たな、市村。いや、良く来れたな陰キャくんのくせに」
そう。コイツラが僕の、唯一の知り合い。言っちゃえば最悪。できるならここでぶっ飛ばしたいけど僕はそこまで強くないから、従う以外に選択肢はない。
「中学の時に言ったアレ持ってきたよな?」
僕はうなずいて封筒を渡した。その中身を覗いたヤンキーは、
「ふざけんじゃねえ!たった千円かよ!そんなもんで許すわけねぇだろうが!」
と、怒鳴ってきた。僕が殴られると思って目を瞑ったとき。
「そーゆーの、俺は良くないと思いまーす。」
誰かが僕の前に立って、ヤンキー達を睨んでいる。
「あぁ?なんだテメェ。」
ヤンキーはその誰かさんを殴ろうとした。その、誰かさんは、その殴ろうとした拳を片手で受け止め、離した。
「ぼーりょくは、良くないよー」
誰かさんはのんびりとした口調で、ヤンキーを追い払った。そして僕の方に振り返った。僕より身長が高い。百七十センチぐらいだろうか。
「あーゆーやつに従わないほうが良いよー」
その子は言う。けど、僕にヤンキーを追い払うなんて、ゲームで言う、レベル1のプレイアーがレベル100のプレイアーを倒すぐらい難しい。だから
「…簡単に言わないでください。僕にそんなことが出来る訳が無いです。」
そう返した。
「えー、そんなにー?あ、あとこれ」
誰かさんは、さっきの封筒を渡してきた。
「さっき奪っておいた!」
いつのまに…とにかくこの人と関わると面倒くさそうだからもう別のとこに行こう。僕が歩き出した瞬間、腕を掴まれた。
「え?」
僕が振り向くと、さっきの人がいた。
「…名前何ー?」
え?僕に名前を聞いてきたのは、さっきのヤンキー達ぐらいしかなかったから正直とても驚いた。まあ、ここで名前を教えたら面倒くさそうなので教えずに
「…聞いたって意味がないと思いますよ。」
と言って逃げた。入学式会場と書いてある体育館の中に入った。たくさん椅子がおいてあり、その中で事前に家に送られた、座席表のを見ながら自分の席を探す。そして席に座る。なんとなく座ったら緊張が解けたきがする。まあもとからそこまで緊張していなかったけれど。周りを見ると、僕の元いじめっ子とかがこっちを見て笑ってる。いや、元いじめっ子じゃない子も笑ってる、なんなの?不思議に思って振り向くと笑いながら僕の頭に指で猫耳っぽいものを作っている、さっきのあの人がいた。
「は?」
思わず声が出た。この人、本当に何やってんだ?こんな僕と関わって、こんな僕にしょうもないイダスラをして。
「やっと気がついたー」
笑いながらその人は言った。
「…その指、やめてください」
僕はその人に冷たく言った。もう、なんて面倒くさい人なんだこの人は。入学式早々変なことしてくるし。イジメとは言えないけれどとてつもなくしょうもないことして笑ってるよ。その後入学式が終わって、クラス表が配られた。僕は1組だった。とてつもなく最悪なことにそのヤンキー─坂口 竜馬も1組だった。入学式早々最悪なことが渋滞している。もう大丈夫かな高校生活。