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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
後編 フィアラ戴冠編

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一件落着ですわ~!!

「フィアラ様、自分を勘当した2人を許したのか」

「寛大だねえ。俺なら適当に理由付けて牢獄に送り込んでやる所なのに」


 両親の行いを水に流すと宣言するや、成り行きを見守っていた聴衆からは関心の声が上がっていました。

 ……わたくしは最初から怒ってはいないと言っているんですから、そこまで意外な事でもないと思うのですけれど。


「改めて、済まなかった。私の浅慮な行いでフィアラには迷惑をかけた」


 立ち上がり、お母様共々お父様は頭を下げました。

 それからお母様も顔を上げ、言葉を探すように視線を泳がせながらもゆっくりと声を聞かせてくれます。


「……ごめんなさい。この人はともかく、私の言葉も、行動も、許せはしないかもしれませんが、それでも……謝らせてください」

「いいんですのよ、お腹が空いている時ってイライラしてしまうものですもの~」

「い、今の事だけではありません! あの日の事もです……! それに、フィアラだって今日まで苦しい思いをしてきたのではないのですか!? 本当に思う所がないとのですか!?」


 あの日、というのはやはりわたくしがアルヴァミラのお屋敷から出て行かされた日の事でしょう。

 当初はどうしたものかと悩んだりしましたし、危うく攫われてどこかに売られてしまう所だったりしましたが結局はカトレアに助けてもらえましたからそこまで重く考えていません。

 ……というかその後一時的にとはいえ陛下の命を狙うような計画を立てていたりしましたので、やはりお母様を責める気にはなれません。同じ1発でもわたくし達が叩き込もうとしていた1発の方がより罪が重い訳ですし。


「……大丈夫ですのよ~、お母様が案じるほどに酷い生活はしていませんでしたから~」

「そ、そうなのですか?」

「はい~! ね、カトレア、オルフェット~?」

「危ない目に遭いそうな時も私が守ってあげたりしてましたからね」

「はい、ちゃんとご飯も食べられていました」


 これまでの旅を共にしてくれた2人は頷きました。危険がないわけではありませんでしたが、カトレアや他の方々の協力もあってしっかりと乗り越えられましたからね。

 それに食事を欠かすような日もほとんどありませんでした。お2人が今こんな状況に追い込まれているのを考えると、かなり恵まれた旅だったといえるかもしれません。


「ふふっ、やっぱりちょっとした旅行のようなものでしたわね~。お友達も増えましたし、むしろ有意義だったかもしれませんわ~」


 とっても強い炎の魔術師に、帝城の料理長に気に入られている男の子、それからこの場にはいませんがヴァンパイアの王に、今や大将軍にまで駆け上がった方までいます。

 それと、皇帝陛下もその一員です。後ろに控えているリグレットに視線でそう伝えると、小さく笑いながら頷きを返されました。


「っ、フィアラ、ではまさか陛下と」

「リグレットだ」

「……そのリグレット様とも、交友を深められたというのか?」

「まあ~、紆余曲折ありましたけれども~」


 暴漢に襲われかけた所を救われたり、一転命を狙われたり、ヴァンパイアの眷属にしてしまったり……詳細を話すとまたお話しできる精神状態ではなくされてしまいそうなので、一言にまとめて肯定しました。


「交友どころか、今や姉さんは次期皇帝だもんね」

「お家を追い出された女の子が一国の主になるなんて、夢がある話ですよねー」

「は……? アッシュ、今のは一体、どういう意味だ」


 弟の言葉に、お父様は理解が追い付かないような顔をしていまいた。

 まあ通常ならあり得ないような特大の飛び級出世ですから驚くのも無理はないのですが……それにしても違和感のあるリアクションでした。

 お母様も揃って、なんだか初耳のような顔をしているのです。


「? 知ってるでしょ、姉さんはしばらく前にリゲルフォード陛下の後を継いでベラスティアの皇帝になるって決まったんだよ」

「はっ……初耳だぞ!!?」

「え、ええっ……? フィアラが、どうして……?」


 なんと、本当に2人とも知らなかったようです。わたくしとリグレットの顔を何度も何度も視線が往復します。


「ほらほら、次期皇帝の前で頭が高いですよー! 控えい控えーい!」

「は、ははぁっ!!」

「やらなくていいんですのよ~~~~!! お2人とも顔を上げてくださいまし~~~~!!!」


 カトレアの言葉を真に受けて両親はそろって平伏してしまいました。ああっまたお顔が汚れてしまいます。


「あ、あら……もしかして冗談だったのですか? も……もうお人が悪い。私達あまり人前に出ないようにしていたから、信じてしまったではありませんか」

「え!? そうだったんですの~!?」

「家も、頼れる者もいなくなってしまったからな。この機に乗じて私達を暗殺する者が現れないとも限らないから、しばらく身を潜めていたんだ」


 ここ何日かの間で皇都中その話題で持ち切りだったはずですのに、なぜ戴冠の話をまるで知らないのかと不思議でしたがそんな事情があったのですね。

 でしたら無理もありません。暗殺だけでなく、アルヴァミラの人間の身柄とあれば欲する者もいるでしょうから誘拐の可能性も考えての行動だったのかと思います。


「あの炎の災厄からフォルトクレアを守るため、私の魔力も枯渇するほどに使い切ってしまった。それが回復するまではと思っていたのだが、やはり劣悪な環境ではどうしても時間がかかってしまってな……」

「……ごめん、父さん」

「なぜアッシュが謝る。お前は陛下と共にいただけだろう?」

「うん……そうなんだけど、ごめん」


 先程もカトレアからお母様を救おうとした時に魔術を使う素振りがないのは気になっていましたが、そんな状態だったとは。

 そして子細を知らないお父様は突然のアッシュの謝罪に困惑しています。


「……ともかく、私達を助けに入ってくれた事、感謝させてほしい。フィアラ、私達を見捨てずにいてくれて、本当にありがとう」

「私からもお礼を。……あなたは、決して不出来な子なんかではなかったのですね」

「も、もう~! おやめくださいまし~! たくさんの人が見てますのよ~~!!」


 カトレア達はともかく、一般の帝国の方々に見守られる中で両親からの直球の言葉の数々は正直、気恥ずかしいです。


「……ただ、流石に次期皇帝という冗談はどうかと思うがな」

「いえ、それはれっきとした事実ですけど」

「ん……?」

「ですから、フィアラさんは皇帝になるんです。さっきのアッシュ君の話、全部本当ですよ」


 カトレアとアッシュに苦言を呈したお父様ですが、そう言われて目を丸くしてしまいました。

 それから数秒、静かな時間が流れます。


「……フィアラ、これからはやはり女王陛下とでも呼ぶべきだろうか?」

「だ、だからおやめくださいまし~~~~!!」


 青い顔をして、また2人揃って跪こうとするので必死になって止めるのでした。

 こうして、わたくしを家から追い出した両親との再会を果たした訳ですが……その雰囲気は最終的に和やかなものとなりました。

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