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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
後編 フィアラ戴冠編

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その罪の重さは、ですわ~!!

「……はあ。あのですね、いい加減にしていただけないとこちらも衛兵を、おっ……?」


 店先で伏したまま動かないわたくしの両親へ痺れを切らし、強硬手段に訴えようとする店員を止めるようにその方の前へ歩んでいきました。

 こちらの接近に気付き、店員は表情を切り替えてにこやかな顔を作ります。


「これはこれは。お客様でしょうか? 申し訳ありません騒々しくして。すぐに追い払いますので」

「いいえ、問題ありませんわ~!」


 2人を散らそうとするのを止め、わたくしは店員の方の進路を遮ります。

 怪訝な顔でみられてしまいましたが問題はありません。腕の中のオルフェットに視線を送り、お金の詰まった袋を出していただきました。


「こちらでパンを2つお売りくださいな。……できれば、美味しい生クリームも付けてあげてくださいまし~」

「……! あの、まさかとは思いますが、それは」

「あらあら、お金さえお支払いすれば売っていただけるかと思ったのですが~……足りませんでしたかしら~?」

「い、いえ、問題ありません! すぐにご用意させていただきます!」


 金貨をひとつ受け取った店員はすぐにラ・ヴィートの中へと戻っていきました。

 金額的にも問題ないし、きっとすぐに美味しいパンが運ばれてくることでしょう。


「お釣りはいりませんよー!」

「ちょ、カトレアさん! 勝手にそんな事を……!」

「う~ん、オルフェットの貰ったお金ですし、流石に余りはこの子にお返ししたいですわ~」

「別に、僕はフィアラ様が使うなら、好きにしてもらってもいいですけど」


 かっこつけてみたいと思わなくもないですが、わたくしのお金というわけでもありませんし。

 あ、でもオルフェット本人がいいというなら両親がお店に迷惑をかけてしまったお詫びという事でお釣りはお納めいただくのもいいかもしれません。


「……フィアラ? 今、フィアラと言ったか」


 そう思っていると後ろから声がしました。

 見れば、お父様とお母様は信じられないものを見る目でわたくし達を見上げていました。


「あっ……。……ええっと~。その~……。お久しぶり……というほどの間でもありませんのよね~……」

「……」


 なんともみすぼらしく、土に塗れてしまった2人の視線を受けて、なんとご挨拶するべきか悩んでしまいます。

 わたくしだけでなく、アルヴァミラ家からわたくしを追い出したお2人も気まずそうな顔で、言葉を発せないでいるようでした。


「お元気そうで何より~……なんてのも違いますわよね、見るからにお疲れですし~」

「……なんの真似です、これは」

「ご、ごめんなさいお母様~! なにぶんわたくしも急な再会だったもので、どう言ったらいいのか考えられていなくって~!」


 あたふたしていると、お母様は力なく立ち上がり、わたくしの肩を掴んで怖いお顔になりました。


「私達を笑いに来たのですか!? 家を失い、頼れる者を失った愚かな両親を!!」

「そ、そんなつもりは~! ただ想像していたよりも大変そうだったので、少しお助けしようとしただけで~!」

「何が助けですか!! どうせ心の底では嘲笑っているのでしょう!? っこの、出来損ないの、不良品のくせに……!!」


 どうやらお母様は辛い境遇に置かれ、不安定な状態になってしまっていたようです。

 怒りに我を振り上げたお母様は手を振り上げ、わたくしの顔を思い切りはたこうとしてきました。

 バシッと、加減のない暴力が叩きつけられる音が響きます。


「っ、陛……リグレット~!?」


 それを受けたのはわたくしではなく、リグレットでした。

 お母様のビンタを受けて被っていた外套がわずかにはだけ、そのお顔が2人にも一瞬だけ見えたようで、お父様もお母様も目を丸くして固まってしまいます。


「!? あ、貴方様は……リゲ」

「――リグレットだ。通りすがりの旅人……だったが、今はフィアラの用心棒のような事をしている」


 剣を振るう時と同じような素早い手さばきでフードを被り直してそう言いました。幸いにも素顔を見たのは両親だけで、集まっている民衆にはその正体はバレなかったようです。


「そ、そんな……。私は、陛下に暴力を……」

「いや、私は旅人のリグレットで皇帝とは一切の関係がない。……それはさておき、本来は家族間の話だから見守っているだけのつもりだったが、つい動いてしまった。許して欲しい」


 頭を下げるリグレットに、お母様は1歩下がってまた地面へ崩れ落ちてしまいました。

 流石のお母様もいかに心が乱れていようとリゲルフォード陛下に手を上げたとなれば、冷静に物事を理解できるくらいの落ち着きは取り戻せたようです。……まあご本人はリグレットを名乗っていますが。

 ともかくこれで少しは頭も冷えてくれたでしょう。ようやくきちんとお話できるはずです。


「……お母様、わたくし別にお2人を恨んでもおりませんし、笑うつもりだってありませんの。ただ純粋に、生きてお会いできたことが嬉しいんですのよ~」

「う、嘘よ……。陛下を利用して、私達を処刑させようとしているのでしょう、信じられません……」

「あらら~……」


 効きすぎてしまったようです。先程よりかは話が通じますが、やはり陛下のお顔に1発入れた衝撃で怯え切ってしまっています。

 リグレットも別に今ので2人を死刑にしようとまではしないはずですが、2人ともすっかり死を覚悟して震えるばかりです。

 どうしたのもでしょう……と困っていると、隣からカトレアが進み出てお母様の元へ。


「こら! 駄目ですよちゃんと娘さんの顔を見てお話ししないと!」

「ひっ……!!」


 黒鉄の触媒を両手に装備し、うずくまるお母様の肩と頭を掴んで強制的に上を向かせました。


「自分の可愛い娘を出来損ないだとか不良品だとか! こんなに綺麗なフィアラさんのどこが不出来だって言うんですか! もっとちゃんとよく見てあげなさい!」

「! や、やめろ、フォルトクレアに手を出すな!」

「あなたもです!!」

「うあああっ!?」


 お母様を救い出そうとカトレアに迫るお父様でしたが、あっさりと同じようにわたくしに顔を向けさせる体勢でがっちりと頭を掴まれてしまいました。


「夫婦揃って子供の事を信じてあげないなんて! 両親に大切に育ててもらった身として我慢できません! 死刑だなんて怖がらないで、殺される寸前まで我が子の事を信じてあげるのが親というものなんじゃないんですか!?」

「っ……!?」


 何かに気付かされるように、お2人の目は見開かれました。

 カトレアの未知の力に拘束されている恐怖はまだありそうですが、今度こそこちらの声が届いてくれそうな視線が向けられています。


「……フィアラ、本当に許してくれると言うのか? アルヴァミラの家より放逐した私と、フォルトクレアを」

「……。ですから、許すも何も、最初からお父様もお母様も恨んではおりませんわ~~~~!!!」


 ようやく話を聞く体勢になってくれたと分かり、わたくしは息を吸い込みます。

 そして、力の限りにお2人の行いを許すという意味を込めた言葉を叫ぶのでした。

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