忠実なる配下ですわ~!!
「我ら元老院一同、新たなる皇帝フィアラ様へ絶対の忠誠を誓います」
突然わたくし達のお食事部屋に乗り込んできた6人は、その場で跪き深々と頭を下げながらそう言ってきたのです。
「早ッ!? さ、さっきまであんなに姉さんの事否定してたのに……!?」
「……不思議、ですわね~……」
日没までのたった数時間で、彼らに何が起こったのかを遅ればせながら理解してしまったわたくしは、そう反応する事しかできませんでした。
「なあアッシュ、あの人らの態度、そんなに変わってるのか?」
「変わってるなんてもんじゃないよ、まるで別人だよ! 本物だったとしても、何かに操られてるみたいに思えるし……」
「おほほ~……」
元老院の皆様の変わりようにアッシュは酷く違和感を覚えているようです。
それどころか自身も聖剣に宿った人格に操られた事があるからか、正解に迫ろうとしていました。
「随分な心境の変化だな、あれほどフィアラを認めていなかったというのに。……カトレアとラトゥに脅されでもしているのか?」
「そんな、滅相もございません!」
「我らはただ、自らの考えが間違っていた事を認めたのです」
「そうです、フィアラ様こそがこのベラスティアの新たなる支配者となるに相応しい、そう理解したまでなのです!」
わたくしを蔑み、疑っていたのが嘘のようにその6つの双眸には憧憬と畏怖の感情が込められていました。
一様に、わたくしこそが次なる皇帝に相応しいと意見をひとつにしています。
「認めたのか……。うん、確かに嘘を言っている目には見えないが……」
「当然よ、こやつらは皆本心を述べているのだからな」
一転して賛成を表明した事には陛下も嬉しい知らせのようですが、やはり急すぎる意思の変化に疑いは隠せないようです。
そんなところに、おそらくこの心変わりを引き起こさせた張本人が戻ってきました。
「あ、ラトゥ~……」
「ほう、本心か。何故貴様にそれが分かる?」
「ハッ! そんなものこの我が直接吸ぐぼあ!!」
全てを説明しようとしていた所で彼の脇腹に黒鉄の鉄拳が叩き込まれ、ラトゥの言葉は止められました。
「別に、大したことはしてませんよ。ただちょっと……一緒にご飯を食べながら、お話してきただけですから」
そう、カトレアはラトゥの代わりに答えました。
……絶対に、その言葉通りの事以外もしている気がします。
「会食か。交流を深めるには正しい行為だが、それにしてもここまでの変化が1晩経たずに起こるとは思えないが?」
「おいしいご飯を食べてもらって、『フィアラさんと仲良くしてくださいね』ってラトゥと一緒にお願いしたら、みんな素直に従ってくれましたよ。ね? ラトゥ」
「う、うむ。……まあこれっぽっちも美味くはなかったがな」
カトレアの説明とは反対に、ラトゥは提供された食事に不満があるようでした。
そうでしょうね、だってラトゥの好みってわたくしのような若い人の血液だったはずですから。
そんな説明を受け、わたくし以外の3人も次第に彼らに何が起きたのか、ある程度の察しはついたようでした。
「なあ、それってつまりよお……」
「け、眷属にしちゃったの!? 元老院の面々を、1人残らず!?」
「……ククク、造作もない事よ!」
2人の行いがばれ、もう隠す必要もないと判断したのか誇らしげにラトゥはそう言いました。
多分、褒められている場面ではないと思います。
「嘘でしょ、カトレアさんどうしてそんな事を!?」
「え、だって仲間の力であの人達を信じさせようって話だったじゃないですか」
「だからラトゥの能力で元老院を眷属に変え、フィアラを信じさせるように命じた訳か。……まあ、フィアラの宣言に違わぬ形ではあるな」
「陛下~!? よろしいんですの~!?」
渋々、という思いが強そうですが、カトレアの言い分にも納得はしたようです。
捉え方によってはまあ、ラトゥのヴァンパイアとしての能力を有効に活用したとも考えられますけれど……。
「……別に、跳ね除けようと思えばこいつの従属の力くらい跳ね除けられるしな。あいつらがそうしないのなら、フィアラに従うのもそこまで嫌だった訳ではないだろう」
「あっ、そうでしたのね~。ならいいのかしら~?」
「いやぁ、貴様くらいだと思うがなあ、我は」
気になる呟きも聞こえましたが、確かに陛下がラトゥの眷属にされていながらその命令に歯向かう姿は度々目撃します。
つまり本当にわたくしの事を拒絶しているなら、あんな言葉は決して出ないという事なのでしょうか。
「……でも、本当にこんなやり方、よろしいのかしら~……?」
「いいんですよフィアラさん、この人達フィアラさんに酷い事も言ってたし、お仕置きも兼ねてこれくらいしてもバチは当たりません」
「そ、そう~?」
「はい! それにこれが1番早く片付けられますし、面倒事なんてパッパと済ませられるならそれがなによりです!」
胸を張り、彼女は悪びれる事なくそう言いました。とても自身に溢れていて、なんだかわたくしも気にし過ぎていたように思えてしまうほどです。
わたくしは気にしていないにせよ、彼女はわたくしが「不良品」と蔑まれるのを快く思っていないみたいですから、平然とそれを口にした彼らが許せなかったのかもしれません。
だとしたらある意味わたくしを想っての行動だったのかもしれませんし、あんまり強くは否定できませんね。
元老院の皆様にはちょっぴり不本意かもしれませんが、これ以上評価が下がる事はないでしょうから今後の働きでちゃらにしてもらえるように頑張ります。
「ん~……今更起こってしまった事も変えられはしませんし~……。あの、ちなみに陛下はどう思われます~……?」
「……。……まあ、フィアラの治世だ。俺は口出ししない」
「ちょっとは出してくださいますと嬉しいです~~!!」
思う所がない訳でもなさそうですが、許容範囲なのか許してくださいました。
顔に「今回だけだぞ」って書いてあるように見えますので、今後このやり方での懐柔は禁じ手にしておきます。
ともあれ、こうしてわたくしの初仕事、元老院の皆様を味方につける事は見事に……。見事に……? ……成功はしました。
今後はできるだけクリーンな方法をカトレアと一緒に選んでいきたいと思います。




