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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
後編 フィアラ戴冠編

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多分これが1番早いのですわ~!!

「……自信たっぷりだった割に特に何もしないんだね」

「うふふ、慌てず慌てず」


 なんらかの策を講じたようだったカトレアですが、その後特に何をするというわけでもなくわたくし達と一緒にお食事をしていました。

 ちなみに今日は陛下とロズバルトも同席しています。


「俺がいない間にまた凄い事になっちまったんだなあ……」


 お茶を飲みながらお昼に起きた事を聞いていた彼は力なく笑っていました。


「今回はフィアラではなく、その仲間がいかに帝国へ貢献するかを見られている。お前にも頑張ってもらう必要があるぞ、気張れよ」

「できるもんかねえ。姫さんがどこにいたのか知ってたんなら、その連中は俺の事も知ってんじゃねえかなあ……」

「ご心配なく。ロズバルトさんはとりあえず新しいお仕事覚えるのに集中しててくれていいですよ」


 食事を終え、同じく温かい紅茶を楽しむカトレアはロズバルトへそう言いました。

 どうやら彼女の計画の中にロズバルトの事は含まれていないようです。

 大将軍として色々とやらなくてはいけない事もあるでしょうし、その上元老院の6人から信頼を得るのは大変だとカトレアも思ったのかもしれません。


「そりゃありがてえ。そんな連中に気に入って貰えるほどの学もないだろうしなあ」

「ところでロズバルト、大将軍としてのお仕事はちゃんとやれそうですの~?」


 突然の大出世を果たしたロズバルトですが、いったいどんな仕事をしているのかまではわたくしは知りません。

 きっと分からない事も多いでしょうから、しっかり新しい職場に慣れているのかは気になってしまうところです。


「ん……まあそれなりにはな。あの視線にはしばらく慣れねえだろうけど」

「視線って、やっぱりあまり受け入れられていないという事~……?」

「どっちかっつうと、その逆だな」

「逆~?」


 てっきり彼の出自が知られていて、蔑みの視線が飛んできているのかと思いましたがそうではなかったようです。


「ほら、オルガスを倒した時にカトレアに力を借りちまっただろ? あれを見てた連中が俺の勇姿を広めてたみたいでな……。大将軍どころか、皇帝様の言う通りに『大炎将軍』とか呼ばれててな」

「あら~、大人気じゃありませんの~」

「早速兵からの指示を集められているか。俺としても喜ばしい限りだ」

「こっちはまるで喜べねえけどな……! あんな羨望の眼差しなんざ初めて浴びたし、『あの炎撃をもう1回見せてください!』ってひっきりなしに言われて誤魔化すのも大変なんだからよ!」

「見せてあげればいいじゃないですか」

「できねえんだよ俺にそんな力はないんだから!!」


 分かっているでしょうにカトレアはそんな事を言います。

 ロズバルトも真実を隠し通すのは大変かもしれませんけれど、そこは頑張っていただくほかありませんね。その内直接様子を見に行ってあげたいと思います。


「それにしてもロズバルトに用事がないという事は~……カトレアが手伝って貰おうとしているのはオルフェットですの~?」


 元老院からの帰り道、カトレアは誰かに力を借りようとしている素振りでした。

 もちろんわたくしの仲間の内の誰かなのでしょうけれど、彼でないのなら必然的にそうなりますよね。


「えーまさか。オルフェット君だってお料理の勉強で忙しいし、そんなのに付き合わせられませんってば」

「……えっ、では、もしかして~」

「クアハハハハ!! 我は再び重大情報を持ち帰ったぞ!!」


 オルフェットでもないとすると、そう思った矢先に豪快に扉を開いてラトゥが入ってきました。


「ラトゥ、でいいんですの~?」

「他の2人は忙しいですからね」

「……意外ですわ~」


 カトレアが彼を頼ろうとしているのは、シンプルにその一言でした。

 あまりラトゥの事を好意的に思っていないはずのカトレアがその手を借りようとは……。


「重大情報か、よし、聞かせてみろ」

「陛下、多分聞かなくていいかと……」

「フッ、聞いて驚くがいい! なんと昨夜に引き続き、城内付近で外套を纏って何かを探ろうとする怪しい人影の目撃談が相次いでいたのだ!!」

「やっぱり……」


 昨夜に引き続き日除けの外套を纏って情報収集をしていたラトゥの報告に、アッシュは頭を抱えて嘆息しました。

 ……まあ、どうやら他の異常はないみたいですし、今のラトゥなら暇かもしれません。


「ふむ、念のため城内の衛兵に警戒させておくか」

「いえ陛下~? 多分ラトゥの事ですから、そこまで神経質にならなくとも~……」

「というかそいつが動きにくくなるだけだから、僕も今まで通りでいいと思います」


 しかし陛下は真面目にも警備の強化を考え始めてしまいました。

 流石にそんな徒労をさせてしまうのも他の兵士の方に申し訳ないので、ご遠慮させていただきましたが。

 陛下にそう進言している時、カトレアは席から立ってラトゥの元へ向かいました。


「待ってましたよラトゥ、お仕事お疲れさま」

「おお、なんだ貴様? 我が齎した情報の偉大さにようやく気付きでもしたか? フハハ、構わんぞ、もっと我を褒め称えろ!」

「じゃああっち行きましょうか。丁度ご飯が用意してあるんですよ」

「至れり尽くせりだなあ! まあ正直人間の作る食事などあまり期待はできんが、供される以上は口を付けてはやらんといかんしな」


 気分よく笑うラトゥを回転させて部屋の外へと連れて行くカトレア。

 ドアを閉める直前、「それではフィアラさん、行ってきまーす」と言ってから彼女はラトゥと共にどこかへ行ってしまいました。


「……カトレアったら、いつの間にラトゥのお料理なんて作ったのかしら~?」

「ずっと僕達と一緒にいたよね」

「体よく連れ出す口実だろうな。アレがどんな作戦を考えているかは知らんが、あのヴァンパイアはおだてれば簡単に動かせる」


 陛下はそう推理しました。なるほど、実際彼は疑うこともなくカトレアについて行きましたものね……。


「しかし、あれを使ってカトレアさんは何をしようとしてるんだろう……」

「あいつあんまり複雑な事できそうじゃないもんな。できるのは割と単純な作戦くらいじゃねえのか?」

「その上短期間で元老院の方々を篭絡しようとしてますのよね~……。わたくしも考えたら分かるとは仰っていたのですが~……」


 単純に考えるなら、戦闘面で秀でた彼の力であの6人を組み伏せようとしているのでは、とも考えますが、それでは信頼なんて得られません。

 あとは……。


「あ、姉さん何か気付いたの?」

「えっ!? い……いえ~、何も~……おほほ」


 考えが顔に出ていたのか、アッシュに内心を察されてしまいましたので咄嗟に顔を逸らします。

 なんにせよ、そう遠くない内に答えは出るでしょう。

 彼女の考えた解決策がどんなものなのか、何も気付かなかった事にして結果を待ちたいと思います……。

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