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生き残りですわ~!!

「ひっ……」


 カトレアがわたくしを引っ張っていった先には、草の中に隠れるように小さな男の子がおりました。

 わたくしたちを見て怯えた声を上げる彼は、どうやら身なりを見るにあの盗賊達の仲間だったようです。


「1番弱そうなのを残しておいたんです。これで迷わなくてすみますね!」

「加減ってそう言う事でしたのね~……」


 てっきり全滅させたのかと思っていましたが、1人だけ魔法の対象外にしたのですね。……これを加減と呼んでもいいのでしょうか。

 そう思っている間にカトレアはうずくまっている彼を掴んで立ち上がらせました。


「さ、道案内をお願いしますね?」

「ご、ごめんなさい……こ、殺さないで……!」

「もう、そんなことしたら私達また道に迷っちゃうじゃないですか。ほら、あなた達のアジトまで連れて行ってください」


 泣きながら命乞いする少年の年頃は、カトレアよりも一回り下くらいでしょうか。

 彼もわたくしたちを襲った盗賊の1人ではあるものの、その幼さも相まって、少しかわいそうな気持ちになってしまいます。


「あの、カトレア? もう少し優しくしてさしあげて」

「え? でもさっきの盗賊の仲間ですよ。そんなことする理由ないと思いますけど」

「……弟に似てますの」

「そうなんですか? フィアラさんがそう言うなら、分かりました」


 カトレアは納得してくださったようで、盗賊の少年から手を離しました。

 アッシュに似ている、と言ったのは咄嗟の出まかせだったのですが、それでも解放された少年を見るとホッとします。

 外見はともかく、彼からはどこか優し気な雰囲気を感じたのです。とても、根っからの悪人とは思えません。


「ごめんなさいね、少し怖がらせてしまいましたわ~……」

「ゆ、許してください……。僕、まだ何も悪いことはしてないんです」

「今私達の事取り囲んで襲おうとしてたじゃないですか」

「それはそうですけれども~! 今はそこは忘れて差し上げますわよ!」


 見逃してもらうための方便にも取れなくはありませんけれど、わたくしの直感がそうではないと告げています。

 他の盗賊の方々と比べると衣服も比較的清潔ですし、もしかすると彼らの仲間になったのも本当につい最近なのかもしれませんね。


「それであなた、お名前はなんと言いますの?」

「……オルフェット、です」

「そう、オルフェット。もう大丈夫ですわよ、わたくし、あなたを殺そうだなんて思っておりませんもの」


 彼を安心させるべく、わたくしはオルフェットを抱きしめて背中をさすってあげました。

 するとだんだん彼の荒かった呼吸が鎮まっていき、落ち着いてくれたようです。


「ほ、本当?」

「もちろんですわ、わたくしフィアラの名に懸けて」

「1年以内に皇帝になる方ですからね」

「それは~……まあそうしないといけないのは事実なんですけれども」

「皇帝……? じゃあ、すっごく偉い人?」

「えっと~、まあ、そうですわ~!」


 もうアルヴァミラの家からは追い出されてしまったので、正確には「そうだった」ではありますが。

 ともかくオルフェットは信じて下さったのか、わたくしへの警戒心は薄れてくれたようです。

 さっきまでの怯えた目が嘘のように、わたくしの事を尊敬するようなまなざしで見ています。


「それでわたくし達、今道が分からなくなっておりまして~……。案内、お願いできます?」

「うん、わかった!」


 わたくしが聞いてみると、オルフェットは素直に頷いてくれました。

 そうして、わたくしとカトレアを先導するように歩いていきます。

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