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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
前編 追放令嬢フィアラ編

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元最強の最弱ヴァンパイアですわ~!!

 フェリアス城のヴァンパイア、ラトゥ・ノトリアス・フェリアスは長きに渡る封印の影響か、弱くなってしまっていたようです。

 絵で見たよりも小さいですわね、なんて思っていましたが弱体化の結果身体も幼くなってしまったのかもしれません。


「ぐうう、今になって思えばこの身に蓄えられていたはずの膨大なる魔力がまるで感じられん……! ただ我を封じただけでなく、魔力を放出し続ける細工まで施してあったか!」


 リズモール様が行った封印はただラトゥを縛るだけでなく、段々と彼の力を減退させる仕組みだったようです。もしかすると、わたくしがこの部屋を見付けずにいれば人知れず彼は消滅する日を迎えたのかもしれません。……解いちゃいましたけど。

 ともかく、1000年に及ぶ封印は邪悪なヴァンパイアの王様を小さな少年の姿にしてしまうほどの力があったようです。


「ということは、体が子供の頃に戻ってしまうほどに弱まったラトゥがわたくしの血を吸って眷属にしようとしましたけれど、弱りすぎて逆にわたくしに支配されてしまったという事でしたの~?」

「そうなるな……。なんという屈辱か、1度は世界を恐怖で従える寸前まで手をかけた最強のヴァンパイアたる我がこんな小娘の下僕なるなど……」

「まあ~。小娘だなんて呼ばないでくださいまし。わたくしにはフィアラという名前があるんですのよ~!」

「分かった、これから貴様の事はフィアラと呼ぼう。……グッ、こむす……フィアラ! 二度と我に命令するな!!」


 歯を食い縛り、殺意を露わにした表情でラトゥはわたくしに叫びます。が、子供の姿ですからあまり恐怖は感じませんでした。

 それにしても……今のは意識してやったわけではありませんが、どうやら彼はわたくしの言葉には絶対服従しなくてはいけない状態のようです。

 呪いなどと似たような感じなのでしょうか。かけた呪術の対象があまりに自分と力量差のある相手だと、かけようとした術が跳ね返ってくる事はよく知られていますし。

 まさか魔術の才能がなくて家から追い出されたほどのわたくしがヴァンパイアの眷属化を返せるとは思っていませんでしたが、そのせいかちょっぴりいたずら心が湧いてきてしまいました。


「……あ~っ、やっぱりわたくしの事は『お姉ちゃん』と呼んでくださいますか~?」

「ふざけるなッ! 誰がお姉ちゃんの事をお姉ちゃんなんて呼ぶものか!! ……がああああああーーーーッ!!!」


 反抗期の弟みたいなことを言いながら、ラトゥは恥ずかしさに床を転げまわりました。いえ、アッシュはあんまりそういうのなかったんですけれど。


「おほほ、ごめんなさい~。フィアラと呼んでくださればいいですからね~」

「はぁ、はぁ……! フィアラ、我で遊んでいるな……!?」


 命令を取り消すと、悶えていた彼は疲れた様子で起き上がりました。

 そして、平静を取り戻したように静かに笑います。


「ククク、まあ構わん。せいぜい好きに遊ぶがいいさ」

「あら、急に余裕たっぷりですのね~。理由があるなら教えてくださいます~?」

「決まっているだろう、従属など主が生きているからこそ効果があるに過ぎん。フィアラを殺せば、それで我は自由になるのだからな」


 そう言うと、彼はゆっくりとわたくしへ迫ってきます。


「あ、あらあら~。全部言ってしまいましたけれど、いいのかしら~……?」

「何の問題がある。全て知られた所で人間1人縊り殺す程度、腕1本あれば我には造作もない」


 ラトゥの顔が恐ろしく歪み、一瞬で距離を詰めてくるとわたくしを突き飛ばして首へと手をかけようとします。


「死ぬがいいフィアラよ、これで我は再び真の自由を――!!」


 ……なんて威勢のいいことを仰っているのですが、彼にはまずわたくしを押し倒す事すらできませんでした。

 両手がわたくしのお腹のあたりに添えられているものの、まるで圧力を感じません。強めの風が当たっているような感じです。


「なっ、なんという体幹だ……!? まるで巨大な山岳を相手にしているかのように不動だ!!!」

「ラトゥ、あなた自分が弱体化なさっているのは忘れてませんわよね」

「ぬああああああああそうだったああああああああああ!!!!!!」


 少し体を前に押し返しながら言いますと、ラトゥはそのまま弾かれたように縦回転しながら階段の所まで飛んでいきました。

 頭をぶつけてしまったのか、起き上がった彼は額から血が流れていました。


「あ……! ご、ごめんさい、怪我させるつもりは~!」

「ククク……我の心配などしている場合か。未だフィアラの命が狙われているのは変わらんというのに」


 すごく痛そうだったのですが、そんなのまるで気にしないかのように彼は笑っています。


「まだやる気なんですの~……?」

「当たり前だ! 認めよう、今はフィアラの力の方が我より強い! だが……それは我がこの手でその命を奪うのが不可能と告げているだけに過ぎん!!」


 断言したかと思うと、ラトゥは素早く階段を駆け上がっていきました。


「ここは我の城! フィアラのようなか弱き女1人簡単に殺せる武器の1つや2つ、探せばすぐに見付けられるのだ!!!」


 どうやらフェリアス城からわたくしを殺害できるような凶器を見繕ってこようとしているようです。

 それはいけません、だってこの隠し部屋を出てすぐに厨房があります。包丁のひとつでもあればわたくしを刺し殺すには十分でしょう。

 ですが、それ以上に彼を外に出してはいけない理由があります。


「! いけませんわ~!! 今外に出てしまっては~!!」


 呼び止めますが、ラトゥは足が速いのか声は届かなかったようです。

 急ぎ、わたくしは彼を追いかけました。


「がああああああああああなんで我が城に窓がああああああああああ!!!!!」

「遅かったですわ~……」


 暖炉の隠し部屋から出た所、カトレアの増設した窓から差し込む夕焼けを浴びたラトゥが絶叫している最中でした。

 いくらヴァンパイアの王とはいえど、やはり日光は弱点だったようでひどく苦しんでいます。

 可哀そうですので、彼が陽の当らない位置まで引っ張り戻してあげるのでした。

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