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契約の代価ですわ~!!

 きょとんとするわたくしを、カトレアはじっと見つめてきています。

 まじまじと見ると可愛らしい顔をしていました。それこそわたくしといい勝負の……いえ、ギリわたくしの勝ち……、負け……?

 まあ引き分けという事にしておきましょう。そんなのどうでもよくなる程度には衝撃的な発言でしたから。


「ええっと、カトレア?その……召喚の代償、と言いますのは」

「そうですね、やっぱり魔力とかになるかと」


 恐る恐る聞くわたくしに、カトレアは平然と返します。

 呼び出した使い魔に魔力を与える、というのは不思議な事ではありませんし、むしろ当然の流れとも言えます。

 しかし当然ではあるものの、アルヴァミラ家の人間にあるまじき魔力しか持たずに生まれてきたわたくしには背筋がゾクッとする返しでもありました。


「……わたくしの魔力で足りますのかしら~……?」

「驚くくらいに足りません」

「ですわよね~」


 聞いてみたものの、やっぱりまるで釣り合わないみたいです。

 当然ですわね、だってわたくしがリズモール様なのでは、と思うほどに強い方なのですから。炎の魔女を名乗られるカトレアがわたくしのなけなしの魔力で満足できるはずもありません。


「このまま代価を貰えないと、私は元いた場所に帰っちゃいますし、フィアラさんの体は焼かれて死んじゃいますよ」

「そうなんですの~!? ど、どうかお許しいただけませんこと~……?」

「私じゃなくて、その「契約の指輪」の効力みたいなので、私の意思ではどうする事も……」


 一難去ってまた一難とはまさにこの事でしょう。

 アッシュ、あなたのくれた指輪のおかげで攫われずには済みましたけど、これって絶体絶命なんじゃありません?


「で、でもわたくしの魔力はどうにもできませんし……。何か、代わりに捧げたりはできませんこと?」

「……あ、そういうのはいけるみたいです。貴重な物とか、大きな目標を立てて、それを果たす事を誓うとかで魔力の代わりにできますよ」


 どうやら結構融通の利く指輪だったようです。それならわたくしにもなんとかできるかもしれません。

 とはいえ貴重品なんて持っておりません。アッシュから貰った指輪以外は家に残したままです。大半はお父様やお母様に買っていただいたものばかりなので、持ち出すのも気が引けましたし。

 そうなるとわたくしに払える代価は……大きな目標、でしょうか。


「では……家から追い出されてしまったわたくしが立派な家を手に入れる、というのは」

「うーん、ちょっと弱そうです」

「も、もっとですの? ……では思い切って、爵位を得るとか」

「もうひと声欲しそうです」

「これ以上ですの~!? 公爵……いえ、もしかして、皇帝に……?」

「おお、いけそうですよ! それじゃあそこに期限も設けちゃいましょう!」


 光明を見出したようにカトレアの声は明るくなります。

 ……なんとかなりそうなのはいいのですけど、わたくし、もしかしてとんでもない事を約束させられていません?


「え、わたくし皇帝になるんですの? ……ま、まあ50年ほどいただければ、どうにか頑張れるかと」

「あ、駄目そうです。もっと思い切って短くいきましょう」

「ええ~~!? じ、10ね……5年でどうかしら~!?」

「その調子であと1歩踏み込みましょう!」


 そうして、カトレアに乗せられるようにわたくしは声を張り上げるのでした。


「い、1年! 1年でわたくし、皇帝になりますわ~~~~!!!!」


 わたくしの宣言と同時に指輪が光を発し、それからようやくカトレアが首を縦に振ってくださいました。


「釣り合い、取れたみたいです。これで私の召喚が正式に成立して、フィアラさんも焼かれなくて済みます」

「ひええ~、とんでもない事を誓ってしまいましたわ~~……」


 助かるためとはいえ、口に出すのも憚られるような目標を打ち立ててしまいました。

 これ、達成できなかったらやっぱりわたくし焼かれてしまうんですよね?


「わ、わたくし、今年中にこのベラスティアの皇帝にならなくてはなりませんの~……?」

「頑張りましょうね、フィアラさん。私もお手伝いしますから」


 カトレアは微笑んでわたくしを勇気付けてくれます。

 彼女の強さは先程目にはしましたけれど、果たして何の後ろ盾もないわたくしがこの国の頂点、皇帝になるだなんて事ができるのでしょうか。

 お父様、お母様、そしてアッシュ。申し訳ありません。わたくしはアルヴァミラ家の長女として生まれたのに魔術の才能がないばかりか、このベラスティア帝国をわがものとしようとしております……。

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