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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
前編 追放令嬢フィアラ編

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よからぬ事ですわ~!!

 倉庫の中から聞こえてきたのはオルフェットの声。どうやら彼が何事かに制止をかけているようです。


「へへへっ、そんなこと言うなよ。せっかく色々持って来たんだぜ」

「でもこんなの、誰かに見つかったら……」


 中からは複数の声がします。オルフェットの様子から、見られては困る品が持ち込まれているのでしょうか。


「気にするなってそんなの。むしろ、誰か来たら見せつけてやろうぜ?」

「だ、だめだよぉ……」

「ぇ~~……!?」


 おおっと、どうやらよからぬ方向へ話が進んでいるようです。

 小さな悲鳴を上げるわたくしですが、中へ突入する勇気は出ませんでした。


「フィアラさん? 入らないんですか?」

「い、いえ! もう少し様子を見ましょう~!!」

「様子?」

「……姫さん、何やってんだ?」


 倉庫のドアに耳を当てて音を聞くわたくしに、ロズバルトは不審者を見るような目を向けてきました。

 少しばかり怪しい行動なのは事実なんですけれども、お邪魔していいものかどうかまだ判断ができませんし……。

 そして中ではまた動きがあったようです。


「あ、大きい……。すごい、僕こんなのはじめて見たよ」

「へへっ、そうだろう? ほら、匂いも凄いだろ。味見してみたくなってきたんじゃないか?」

「で、でもこんなところで、そんなの」


 なにかを押し付けられ、オルフェットが喉を鳴らす音が聞こえます。

 迷うような口ぶりではありますけれど、彼も興味がないわけでもないのかその声には誘惑に抗いきれていない印象が強く、このままでは屈してしまいそうな予感が。


「……ど、どうすればいいんですの~!?」

「どうもこうも中に入ればいいんだよ! なんでさっきからドアに耳当ててんだよ、仕事しに来たんだからさっさと行くぞ姫さん!」


 オルフェットがどうなってしまうのか気になって動けなかったわたくしを押しのけ、ロズバルトが扉を開けてしまいました。

 彼はわたくしとカトレアを引き連れて倉庫へ足を踏み入れてしまいます。


「ああっ~ごめんなさいオルフェット、お邪魔しますわ~!」

「わっ? フィアラさん? どうしたんですか?」


 倉庫で起きていた事を想像してわたくしは手で目を塞ぎ、カトレアにも腕を回して視界を遮りました。

 そのままロズバルトに続いて進んでいくと、オルフェット達が息を飲む音が聞こえてきます。


「えっ、フィアラ様?」

「急に入ってきてしまって申し訳ありません~!! ……もう服は着ましたの~?」

「服……? はい、着てますけど」

「ではもう大丈夫ですわね~!」


 伏せていたまぶたを開くと、そこにはやはりオルフェットが多数の男性に囲まれている姿が。

 木箱の上に座らされた彼は、その周囲をたくさんの食べ物で囲まれておりました。


「……あら~? これは~……」

「お前ら、こんなところで何してやがったんだ」

「あーロズバルトさん……。これはその、あはは」


 苦笑いしてオルフェットを囲む方の1人の手には、大きな燻製のお肉が。

 煙の香ばしい食欲を誘う匂いは、少し離れたわたくし達の元まで漂ってきます。


「あ、あら~。これはこれは大きな……燻製肉ですのね」

「わー、ほんとだ、美味しそうですね。……フィアラさん、なんかがっかりしてません?」

「……お前ら、荷運びサボってガキに餌付けしてたのか」


 溜息を吐くロズバルトの言葉によく見てみると、オルフェットを囲んでいた方々の中には先日武具を買い集めに行った際にお見掛けした顔触れが。

 そういえばあの時もオルフェットはご飯を食べさせられようとしておりましたわね。

 よからぬ事をされているのかと心配はいたしましたが、わたくしの勘違いで安心しました。

 あと、別にガッカリはしておりません。本当に。


「餌付けとは失礼な! これは俺らが町で発見したとびっきりの美味いモンですよ!」

「そうっすよ、交代で荷物運びから抜け出して、オルフェットのためにと一生懸命選んできたんですぜ!?」

「ほおー、全員交代で仕事をサボってたって事か」

「……。へへへ、ロズバルトさん、ちょっと食ってきます?」


 笑いながら男性はオルフェットへ差し出された食べ物を一口だけ切り落とし、ロズバルトへと差し出されました。

 ロズバルトはそれを受け取り、口の中へと運んでいきます。


「おお、こりゃあ美味いな」

「でしょう?」

「ああ、いい物見付けてくる才能があるぜ。ってわけで、お前らにはこれから物資調達班に行ってもらう事にするか」

「そ、そんなぁー!!」


 転属を言い渡され、彼らは絶望の表情を浮かべて崩れ落ちていきました。

 定期的ではないにしても、こんな事をしていては反乱軍に物資が行き渡らずに大変な事になってしまうかもしれませんしね。

 オルフェットに良くしてくださっていたのは嬉しいですけれど、バレてしまったからには仕方がないでしょう。


「……って事で荷物運びの人員がほぼ全滅しちまった。悪いが姫さん、適正とか関係なくここで働いてもらうぜ」

「が、頑張りますわ~!」


 こうしてわたくしはカトレアも含めて荷物運びのお役目を果たす事となりました。

 多くの人員がいなくなってしまいスムーズにお仕事ができるのかは不安ですけれど、やってみるしかありません。

 あまり腕力には自信はないのですが、反乱軍のお役に立つためにも頑張りますわよ!

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