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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
前編 追放令嬢フィアラ編

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じ、事故ですわ~!!

 衝突してしまった兵士の方は地面にお尻をつけたわたくしを見下ろしてきます。

 ちょうど逆光になってお顔はよく見えませんが、なんとなく怒っているような雰囲気は伝わりました。

 無言のまま、彼はわたくしの方へと歩いてきます。


「っ、おおおおおおおおおっ!!」

「ひゃぁ~!? な、なんですの~!?」


 わたくしへと伸ばされた兵士の手を遮るようにロズバルトが絶叫と共に割り込んで来ました。

 兵士やカトレアだけでなく、周囲の往来の方々すらも足を止めて彼を見ますが、そんな事は構いもしていないみたいです。


「こいつに、手は出させないぞ!!!」

「本当にどうしましたの~!? 皆様見ておりますわ~……!」


 そして、なんとロズバルトはわたくしを兵士の方から守るように抱いたのでした。

 好奇の目線が飛んでくるのがわかりましたが、彼はまるで意に介してしません。それとは別に何かを恐れているのか、声は震えていましたが。

 兵士の方も伸ばした手をどうするべきか決められず、固まっておいででした。


「……なんだ? あんたの嫁さんかなんかか? 他の男に触られたくないんだったら、ちゃんと見ててやらないと駄目だろ」


 困った様子の兵士はそう言って、わたくしが取り落としてしまったリンゴを拾い上げると泥を落とし、こちらへとお返ししていただけました。


「まったく、新婚なのか知らんが、そういうのは誰も巻き込まない家とかでやっててくれよな」

「あの~、わたくしは別にロズバルトの夫では~……ああ興味ありませんのね~」


 おかしな納得をした兵士は特にわたくし達の正しい関係には興味が無いのか、それだけ忠告すると足早にどこかへ行ってしまいました。きっと陛下を探しに行かれたのでしょう。

 すぐに彼の姿は見えなくなり、一件落着と見たのか周囲の視線も次第に減っていきました。

 ですが、ロズバルトは体を震わせたまま、わたくしから離れようとしていません。


「……ロズバルト~? もう兵士のお方はいなくなりましたけれど」

「……っ」

「こらー! いつまでひっついてるんですかー! 離れなさーい!!」


 わたくしの声も届いていなかったようですが、カトレアによって強制的にロズバルトは引っぺがされてしまいました。

 彼はいつの間にかお顔が真っ青になっていて、脂汗をかいていたようです。まるでおばけにでも出会ってしまったかのよう。


「やっぱりあなたもフィアラさんの事狙ってたんですね! 許しませんよ、状況を利用してベタベタフィアラさんに触ろうなんて!!」

「カトレア、それ全部あなたにも返ってきません~?」


 わたくしの方を抱きながらカトレアはロズバルトから距離を置こうとします。

 対するロズバルトは今も呆然とした顔で俯いて動けなくなっているようでした。


「ロズバルト、本当にどういたしましたの~?」

「あ……。ああ、すまない。……あの兵士が、お前を……いや姫さんを殺そうとしているような気がしてな。つい、あんなことを」

「そうでしたのね」

「えー、私はちょっと無理ある言い訳に聞こえますよ? あの人全然殺意とかなかったですし。やっぱりフィアラさんに触るのが目的だったんじゃないですか?」


 カトレアの追及にロズバルトは苦笑しました。そしてそれ以上反論する気もないのか、何も言わなかった彼にカトレアはより一層警戒を露わにするのでした。

 彼女の方はもうそういう事で決まったようですが、わたくしにはロズバルトが本当に下心だけで行動をしたのかは疑問が残る所でした。

 まあ帝国への反乱を企てている方なのですから、帝国の兵士に対し敏感になってしまうのも仕方のない事でしょう。他意はなかったとして、水に流す事にします。


「少々驚きはしましたけれど、わたくしを助けようとして動いてくださったんですのよね、ロズバルト? それについては感謝させていただきますわ~!」

「――。そうか、その言葉が聞けただけで、俺も嬉しいよ」


 立ち上がり、わたくしはロズバルトへ礼を述べました。

 結果はどうあれ彼が帝国兵からわたくしの身を守ろうとしていただいたのは事実。その行動にはやはり感謝をすべきでしょう。

 するとロズバルトもようやく普段の調子が戻ってきたのか、強張っていたお顔を少しだけ綻ばせました。


「さ、オルフェット達と合流して帰るといたしましょう~!」


 波乱に満ちたお買い物となってしまいましたが、わたくしが迷っている間に必要な物は全て購入できたようですから、後は反乱軍の拠点がある町まで帰るだけです。

 わたくしはリンゴを綺麗に拭いて、先日の念願だったそれに齧りつくのでした。


「甘酸っぱくて美味しいですわ~!!」

「そうか、そりゃあ良かったな」

「ふふん、私が真剣に選んできたやつですからね」


 新鮮な果汁が喉を潤していく感覚に癒されながら、素直な感想を叫びます。

 そんなわたくしを見てロズバルトは呆れながら笑うのでした。

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