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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
前編 追放令嬢フィアラ編

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迷子ですわ~!!

 わたくしたちは町の武具屋様を手分けして回っていきます。大勢で押しかけては不審に思われてしまいますからね。

 お金についてはカトレアが以前に盗賊の方々から頂いた物を使わせていただきました。わたくしのためとはいえ、つい彼女の手が出てしまったがゆえの買い出しですから、これも仕方のないことです。

 といった具合でして、お買い物自体は順調ではあったのですが。


「……ここは、どこなんですの~?」


 なんと、気が付いた時にはわたくしはロズバルト達とはぐれてしまったのです。

 カトレアも手を握っていてはくださったのですが、少しだけ手を離した瞬間がありまして……辺りにはわたくしの知っている方は誰もいなくなってしまっていました。


「か、カトレア~? いらっしゃいませんの~……?」


 周囲に呼び掛けてみますが反応はありません。人通りが少ないわけではございませんが、みな知らない顔ばかり。

 危険な人物が潜んでいるかもしれない町で取り残され、わたくしは強い不安に襲われます。


「うぅ~、このままでは皆様にご心配をおかけしてしまいますわ~。早く合流しませんと!」


 じっとはしておれず、わたくしは足早に往来する人々を掻き分けて彼らを探すのでした。

 特にカトレアは独りにしておけません。彼女は特にわたくしを大切に想ってくださっている所がありますので、わたくしがいなくなってしまったのに気付けばまた暴れてしまうかもしれませんし。


「えっと、こっちかしら~?」


 彼女を安心させてあげるためにも、わたくしは急ぎ見知らぬ町の中を駆けまわります。




 ロズバルト達を見失ってから、しばらく経ちました。


「……ま、まったく見覚えがありませんわ~!」


 わたくしは町中をさまよい続け、今度は薄暗い裏道のような場所へとやってきていました。

 そこは先程まで走り抜けていた道とは違い、不気味なまでに人気がありませんでした。なんといいますか、「ここに入ってはいけませんわ~!」とわたくしの脳内で警鐘が鳴らされているような気がいたします。


「どうしましょう……ここは表の方へ戻った方がいいような~……」


 暗がりや影の中からどなたかがわたくしを見ているのか、複数の視線が道の向こう側から投げられているような気配。

 尋常でない雰囲気を察しますが、この先に行っていないのもまた事実。もしかすると、この先にカトレアやロズバルトが待っている可能性も……。


「くっ、仕方ありません。……わたくし、ここは勇気を出しますわ~!!」


 考え、わたくしは前に進む事にしました。

 視線は気になりますけれど、そこは問題ありません。町の入り口で会った兵士の方が言うには、わたくしは「印象に残る、目立つ人物」だそうですから。物珍しさに見られているだけでしょう。

 仮にここが危険な場所だったとしましても、まだ襲われたわけでもありません。危なくなったのなら、その時に逃げれば問題はないのです。


「……み、見られてますわ~……!」


 裏道へと1歩踏み出すと、わたくしへ向けられる視線がより強く、多くなるのを感じます。

 ちょっぴり怖くなってきましたけれど、顔を振って恐怖を押し隠しました。こういった場所では恐れを見せない事が大事なはずですから。

 胸を張って、堂々と裏道を進んでいきます。

 ……すると、暗闇の中から4人ほど現れまして、わたくしの行く手を塞ぐように立ち並びます。

 彼らの顔はみな一様にぎらついており、一目で尋常な方々でないのを理解してしまいました。


「……。さ~て、やはり表に戻ってカトレア達を探しませんと~」


 このまま進めば間違いなく悪い事が起こると考え、わたくしはすぐさま踵を返します。


「ひぃっ~!」


 ですが、振り返った先には彼らの仲間と思しき集団が。こちらにも4人ほどおりまして、なんとその手には鈍く光る刃物や、金鎚が握られていました。


「おお、こりゃいい女だ」

「可哀そうになぁ、こんな場所を通らなきゃなぁ」

「楽しみにしてておくれよ、その綺麗な顔を綺麗に歪ませてあげるからよ」

「普通の生き方、できないようにしてあげるね」

「と……とっても危ない方々ですわ~!」


 背筋の凍るような声で、同じく背筋の凍るような事を言われてしまいます。

 反対方向に逃げようにも、そちらにも既に仲間がいるのは知っています。彼らもじりじりと歩いてきて、わたくしの事を追い詰めようとしていました。

 はっ、もしかして先程兵士の方が探していらっしゃったのは、この方々なのでは……!?


「カトレア……いいえ、誰でもいいですから、助けてくださいませ~~~~!!」

「誰も来ねえよ。ここは俺達の縄張りだ」


 男たちの1人がそう言います。張り裂けんばかりに叫んだのですが、カトレアも近くにはいないのかその姿を見る事はできません。


「さ、おとなしくしてろよ。そうすりゃ痛いのは後にしといてやる」

「あ、後で痛い事をされますの~~!? やめて、触らないでくださいまし~~!!」


 彼らの手が伸ばされ、咄嗟にそれを振り払います。

 すると、弾かれた方の目つきが変わりました。


「……、邪魔な腕だな」


 据わった目でその手に握られている金鎚が振り上げられてしまいました。


「!? い、嫌……」

「そこの貴様ら、その程度にしておけ」


 この数瞬後に起きるであろう出来事にわたくしの顔から血の気が引いた時、凛々しい声が彼らの奥から聞こえました。

 ここにいる全員の視線はその声の主へと向けられ、わたくしを襲おうとしていた方も怖い顔をして彼を睨みつけます。


「あ? 誰だてめえ」

「なに、通りすがりの帝国市民さ。醜悪なものどもの蛮行を見過ごせぬ、義に駆られた一般人と思ってくれ」

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