家柄で採用を狙いますわ~!!
「そう、わたくしはフィアラ……、フィアラ・リズモール・アルヴァミラなのでしたわ~!」
高らかに、わたくしはアルヴァミラ家の生まれである事を宣言いたします。
いかに使える部分の少ないわたくしといえど、帝国に襲い掛かろうとする彼ら反乱軍にとってこれは流石に利用価値があるでしょう。
もはや過去の栄光のようなものではありますが、嘘を言っているわけではありませんし。
「アルヴァミラ……!? じゃあ姫さん、あの『太陽』のラグレイズの娘だってのか!?」
「太陽? フィアラさん、なんですそれ」
「二つ名ですわ。お父様、と~ってもお強いんですの」
多量の魔力を有し、それを見事に制御できるわたくしの父は、そんな呼び名が付けられるほどにはアルヴァミラ家の中でも優れたお方。
そんなお父様に恥じぬ強さをわたくしも受け継いでいたら問題はなかったのですが……運命とは無情なものですね。
「……うん? だがさっき、魔法は使えないだとか言ってたよな」
「まあそれが理由となっての追放でしたので~」
とほほ~、と肩をがっくり落としながらおどけてみせます。
今はもはやただのフィアラとはいえ、それでもお父様と共に過ごした時間まではなかった事にはできません。
だとすれば、わたくしにも必然的に「価値」が生まれるというものです。
「その話がマジだって言うんなら」
「人質としての価値はある……ですわよね?」
ロズバルトの瞳を見て、わたくしはそう言葉を継ぎます。
戦う事も、その支援もできずとも、わたくしのこの家柄だけは反乱軍にとって有用でしょう。お父様とて、人の子なのです。
「え、フィアラ様、人質って」
「オルフェット、静かに。あれはフィアラさんなりの交渉なんです」
急にそんな事を言い出したものだから、オルフェットは驚いてしまったようです。カトレアが小声でなだめてくれたのですぐに落ち着きはしましたが。
「いかがかしら~? いかに追放された身とはいえ、お父様だって血も涙もない方ではございません。わたくしをこの反乱軍に加える意味はあるのではなくて~?」
「っ、確かに、いかに翳りが見えているとはいえ、『太陽』は厄介だ」
そう、お父様ももう若くなく、全盛期ではありません。年を取り、魔力の量にも衰えが見えてしまっているのです。
もちろんそれでもお強い方です。わたくしを人質とすれば、もしかするとそんな強力な魔術師を止められるかもしれない、そうロズバルトも考えてくれているようでした。
しばらく沈黙しておりましたが、それでも決断はお早いようです。
「……いいだろう、姫さん、あんたをこの反乱軍の捕虜とする」
「やりましたわ~!!」
「そんなに喜ぶ事じゃないだろうに……」
わたくしは飛び跳ねて喜びます。これで反乱軍の一員となる事ができました。
立場的には虜囚の身ですが、きっとロズバルトもお父様を無為に怒らせるような事はしたくないでしょうし、手荒な扱いは受けないはず。
「ま、そういう訳であんたは役立たずから一気に文字通り囚われのお姫様って事だ。逃げられないように俺の手の届く範囲にいてもらうから、そのつもりでな」
「は~い、わかりましたわ~」
「……。あれ、聞き捨てならない事言いました?」
「カトレア? どうして手袋取ろうとしてますの~!?」
急に触媒を出そうとする彼女の手を握って必死に止めます。
ともかく、こうしてわたくしは無事に反乱軍と行動を共にできることとなりました。
後は、ここからこの方々の信頼を得て、無事に皇帝陛下を倒せるようにしていくだけです。
わたくしの手腕が試されるわけですね。腕が鳴ります!




