入団希望ですわ~!!
「なっ、お前……俺達の仲間になりたいのか!?」
「ええそうですわ~! わたくしも皇帝の座を手に入れなければなりませんの~! そちらも戦力は1人でも多い方が喜ばしいでしょう~!?」
わたくしの言葉は彼の想定になかったのか、信じられないような顔をしております。
それも仕方ありません、わたくし達3人は一見すれば無力な少年少女の集まりにしか見えないのでしょう。
「本気で言ってるのか? 俺達は帝国との殺し合いを、戦争をしようとしてんのが分かってんだろうな? お前らに何ができるってんだ?」
ロズバルトから飛んできたのはわたくしの想定通りの疑問。
得意気に笑い、わたくしはカトレアとオルフェットを前に立たせます。
「ふふ~ん、カトレアはと~っても強い炎の魔術師なのですわ~! オルフェットは戦いこそ得意ではありませんけれど、わたくしを守るためになら勇気を出せる、とても仲間想いの良い子ですわ~!」
「……魔術師か。それは是非とも欲しい戦力だな。魔法が使える奴はウチには少ないからな」
「フィリアさんのためにしか使いませんけどね」
値踏みするような視線にカトレアはわたくしの腰に抱き着いてきます。指輪でわたくしと契約したわけですが、どうやら他の方の命令を聞くつもりはないようでした。
「そっちのガキは……まあ戦えねえにしたって荷物運びくらいは役に立つ、か」
「ですけれどまだ子供ですから、あまり大変な事をさせないであげてくださいまし~」
「分かってるっての。で、お前は何ができるんだよ」
「わたくし、ですの~?」
このまま彼らの一員になれそうな流れでしたが、わたくしにもロズバルトは「どう役立つか」を示させようとしてきます。
「そっちの、カトレアだったか。そいつと同じで魔法が使えるのか?」
「わ、わたくしはその~、魔術の才能がありませんでして~……。それが理由で家を追われ、今ここにおりますの」
「じゃあ、剣は? 剣以外でも、使える武器があるなら戦力にはなれるが」
「その、ですわね~……。わたくし、剣術なんかの才能も~……」
「……はぁ。何の役にも立たねえって事か。まあ外見通りで安心はしたがな」
見るからに落胆なさった様子のロズバルト。わたくしが争いごとにおいてなんの貢献もできないことを察されたようです。
とはいえ魔術はともかく武器を用いての戦いならば、今からでも練習をすれば形にはなるかもしれません。……数年ほどのお時間を頂ければ。
「……もしかしてわたくし、不合格ですの~?」
「いや、人手は足りてねえから裏方作業とかなら歓迎する。料理、洗濯、武具の修理に作成。どうだ、得意な事は?」
「!! ぬいぐるみを作るのでしたらできますわ~!!」
「こっちも全滅か……」
ロズバルトは顔が見えなくなるほど深く頭を垂れてしまいました。
失礼な方ですわね、今挙げられたものだって練習すれば上達する自信はあります。……やはり1年以上はお時間が欲しいですけれど。
「この2人はともかく、何もできねえんじゃなぁ……。皇帝の座がどうとか言ってたが、流石に夢見過ぎなんじゃないか? 姫さん」
「憐みの目を向けないでくださいまし~!」
夢見がちなお姫様だと思われてしまったのでしょうか。ロズバルトはもうわたくしへの興味を失っているのか顔を見ようともしてくれません。
「な、なんだよおじさん! フィアラ様の事を馬鹿にしないでよ! フィアラ様にだっていい所はあるんだ!」
「へえ、どんなだよ」
「それは! フィアラ様……」
オルフェットは「言ってやってください」とわたくしを見てきます。
わたくしのいい所……少し躊躇われますけど、乞われては仕方ありません。胸に手を当て、堂々とロズバルトに教えて差し上げます。
「そう、わたくしは……この美しさがありますわ~!」
「ほお、それが戦争でどう役立てられると?」
「……あら~?」
「フィリアさん、多分そっちじゃないです。ほら、こういう時はやっぱり立場を」
カトレアの囁きに、そちらでしたのねと理解して咳ばらいをひとつ。
それはそれでもっと躊躇われるんですけれど、このままでは肝心のわたくしだけが反乱軍に入れてもらえなさそうなので、申し訳なくも利用させていただきましょう。
「改めまして~。……実はわたくし、皇帝陛下とは縁深い、アルヴァミラ家の令嬢でしたのよ~!!」




