どなたかと似ているのですわ~!!
「そ、その顔……!」
リーダーの方は月光に照らされるわたくしを見て絶句しています。そして、自分が見たものが正しい事を確かめるように部屋の明かりを点けました。
そして、そこには依然としてアルヴァミラ家の令嬢であるわたくし、フィアラ・リズモール・アルヴァミラが腕を縛られたまま座しているのでした。
……元、ではありますけれどね。
「ご、ご機嫌よう~……な~んて」
苦笑いをしながら可愛らしくご挨拶してみますが、目を瞠った彼は言葉を失ったままです。
拳を握り締め、彼はそのままわたくしの前までやってきました。
「お前、俺の顔に見覚えはあるか?」
「あ、あなたの、ですの~……?」
ちゃんと眠れているのかも不安になってしまうような、とても疲れた……まるで何かに絶望したかのようなお顔。
見覚えはありませんけれど、もしかするとわたくしか、それともアルヴァミラ家の誰かに恨みを抱えていらっしゃる方なのでしょうか……。
なんと返答するべきか迷っていると、そんなわたくしの態度が答えには十分だったかのように彼の顔はさらに曇ってしまいました。
「……。そうか、そうだろうな。……すまない、また驚かせた。忘れてくれ」
「お、驚きましたわ~……」
「命拾いしましたね」
てっきり暴力を振るわれてしまうかと思いましたが、そうではなかったようです。……そしてカトレアはいったいどちらへ向けてそれを言ったのでしょうか。
ともかくわたくしに恨みがあるわけではないご様子。冷や冷やする場面はありましたけれどひとまずは安心かもしれません。
「そういえば、まだ名乗りもしていなかったな。俺はロズバルトと言う。ここの反乱軍のリーダー、ということになってる。そっちは?」
「わたくしですか? わたくしはフィアラ・リ……ではなく、ただのフィアラですわ~! そしてこちらの女の子がカトレアで、そっちの子はオルフェットですわ」
ロズバルトと仰る反乱軍のリーダーに名乗りを求められたため、わたくしは応じました。
するとロズバルトは一瞬悲しそうな顔をして、それからその感情を顔から消します。
「フィアラか。……ああ、いつまでも縛っておくのも窮屈だな。今解こう」
「先にカトレアとオルフェットからお願いいたします、わたくしは最後でいいですわ」
小さい子が両手を縛られて身動きできなくなっている光景はあまり見ていて気持ちのいいものではありません。
なので先に2人の解放をお願いしたのですが、ロズバルトは素直に応じてくれました。
手早くカトレアとオルフェットの縄を解くと、彼はわたくしの方へ。
「……? あの~、どうされましたの~?」
「……重ねて、こんな事を聞くのは申し訳ないのだが……。ファルメリア、という名に心当たりはないか?」
「ファルメリア、ですの~?」
聞いた事のないお名前です。アルヴァミラ家の誰かではあるかもしれませんが、少なくともわたくしの両親ではなく、そのまた両親のお爺様やお婆様の名でもないのは確かです。
使用人も大勢おりますが、そのような名前の方はいなかったはず。
「そうか。……そうだな、何度もしつこくすまないな」
またロズバルトは勝手に納得し、気が付けばわたくしの縄も解いて立ち上がりました。
「さ、これでひとまずお前達は自由だ。繰り返しになるが俺達の襲撃が始まるまではここにいてもらう、それまでは適当に……」
「あっ、それについてはわたくし達、お話がありますの~!」
「ん、なんだ?」
なんとも気がかりな言動ですが、それは一旦置いておく事にします。
ようやく自由に動けるようになったわたくしは、彼へ本来の目的を告げる事にいたしました。
「わたくし達も、その反乱軍の一員にしてくださいませ~!」




