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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
後編 フィアラ戴冠編

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外出禁止ですわ~!!

「しばらく、外出は禁止だ」


 お買い物の際、暗殺されかけたわたくしに陛下がそう仰ったのが4日ほど前。

 不穏分子を排除に陛下がべラスティア各地へ赴かれる事になってしまいましたので、少なくとも今週いっぱいはわたくし、お外へ出てはいけなくなってしまいました。

 ですので、今は退屈さを紛らわすためにお部屋の窓から城下を眺めています。


「あら、綺麗になってますのね~」


 暴走してしまったレゼメルによって生まれた破壊の痕。それも少しずつ修復が始まって焼け跡がお掃除されていました。

 焼き溶かされた石壁が削られ、新たな石材が積み上げられて壊れたものが直されていくさまにわたくしはにっこりします。


「……ふふ、皇都にも日常が戻り始めていますのね~」

「ところでフィアラさん、たった1週間で帝国中を見回ってくるなんてできるものなんです?」


 窓から皇都を眺めていたわたくしにカトレアがそう聞いてきました。陛下の事ですわね。


「まあ~、陛下って行動が素早いですからね~」


 以前もお城をこっそり抜け出してわたくしが滞在していた町の付近までやってきたりしていましたし、陛下はとても迅速に動けるのです。

 それこそ広大なベラスティアを短期間で見て回る事も容易でしょう。危険な方々を逃がさないようにするために、速度は大事ですからね。


「え? ま、まあ行動が速いのはいいことだと思うんですけど……ベラスティアっておっきい国だって聞いてたんですが、時間的には余裕あるんです?」

「心配は無用ですよ。現皇帝陛下は剣術だけでなくその機動力も神速、ただ1周するだけなら早朝から日没までには可能なのです」

「へえー」


 彼女の疑問を聞いていたお母様が代わりに答えました。先日パン屋さんの前で仲直りして以来、住む場所もなくなってしまいましたので一緒にお城で暮らすことになったのです。


「ところでフォルトクレアさん、普通の人だったらどのくらいかかります?」

「そうですね、何分広大な領土を誇る帝国ですから……1年はかかるかと」

「……フィアラさん、あの皇帝ってほんとに普通の人間です?」

「ま、まあ陛下ってばお強いですから~」


 思いっきり眉をひそめて小声でカトレアが確かめてきます。

 ここに来るまでにリゲルフォード陛下の実力の片鱗を幾度も見た上で、常人との差を知って改めて陛下の飛びぬけたお力に疑問を抱いたのかもしれません。

 とはいえ若くしてベラスティアの皇帝となられた陛下ですから、帝国を統べる者として相応の力があってもわたくしはそこまで不思議には思いませんが。


「それにしても、まさかフィアラが襲われるとは思いませんでした。……やはり、力を持たぬ者が帝位に就く事を快く思わない者は多いのですね」


 私が言えた義理ではないのかもしれませんけれど、とお母様は息を吐きます。

 戦いにおいて絶対的な力を有し、知性の面においても優れる陛下の後を継ぐのがわたくしであることに不満を持つ方はやはりいらっしゃったのでしょう。


「陛下と一緒に触れ回ったりもしましたが、どうしても受け入れらない方々は出てしまいますのね~……」

「別に力なんてどうでもいいと思うんですけどねー。こんなに美人で優しいんだから、それで十分なのに」

「フィアラの蔑称が原因なのかもしれません。魔術師として欠陥があるせいで、統治にも欠落があると思い込ませているのかも」


 わたくしがあだ名された「不良品」という呼称。それが足を引っ張っているとお母様は考えたようです。

 どうしても不名誉ではありますよね……仮にも皇帝となる人物にそんな噂がたっていては話に尾ひれがついて拡散されていないとも限りませんし。


「……せめて、今からでも剣術を修めてみますか?」

「む、無理ですわよそんな~~!! わたくし剣の扱いも大したことはありませんし~!!」


 魔術ではなくこちらに適性があるのでは、と試した事もありますが、とても武力として誇れるほどのものは身に付けられませんでした。

 当時にお母様も見守っていたはずですが、そんなことは気にせず首を横に振りました。


「いいえ、策はあります。……我がアルヴァミラ家で管理する大火山、あの場所に眠る聖剣であれば、もしかするとフィアラにも扱えるかもしれません」

「それは……その~。お、お考えになられない方が、よろしいかと~……」


 秘策といって出されたもののお話に、わたくしは思わず顔を伏せました。


「どうしてです!? あれはアルヴァミラの家に伝わるリズモール様の用いた剣。その血を受け継ぐフィアラにも聖剣が応えてくれるかもしれないではないですか!」

「あっフォルトクレアさん、実はその剣、こわ」

「そうですわお母様~~~~!!!! そろそろお腹が空きませんこと~~~~!?!?」


 カトレアが真実を告げてしまいそうだったので、咄嗟にそんな事を叫びました。

 アルヴァーン大火山に眠っているはずの家宝である聖剣レゼメル。……それが今粉々にされてしまっているだなんて、お母様だけでなくお父様にも明かせはしません。

 無理にでもレゼメルの事から意識を遠ざけたかったのですが、なんとかお母様はきょとんとした顔で言葉を止めました。


「え、そこまででは。朝食もしっかりと頂きましたから。それよりも聖剣についてですが」

「わ、わたくしの仲間であるオルフェットの様子を見に行きたいのですわ~~!! 厨房で働いておりますから、お母様も一緒に行きませんこと~!?」


 お城から出てはいけないと言われていますから、行き先は限られています。

 この場でじっとしていてはお母様のお話も軸が動かないでしょうから、数日ぶりに彼がどうしているか確認しに行こうと思いつきました。


「……この間の少年ですか? 別に構いませんが」

「いいですね、今日のお昼ご飯は何か偵察に行っちゃいましょう!」


 わたくしの押しに負けたのか、お母様も動揺しながら首を縦に振りました。

 よかった……多少強引さは目立ちますが、これでどうにかレゼメルについては後にしてくれるでしょう。


「それではご案内しますわ~! 行きましょうお母様、カトレア~!」

「こ、こらフィアラ! 引っ張らなくってもついていけますよ!」


 またお話を戻されないようにお母様の手を引き、わたくしはカトレアと共にオルフェットのいる厨房へと向かうのでした。

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