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追放アンド婚約破棄ですわ~!!

「フィアラ、お前は我がアルヴァミラ家の人間として相応しくない。本日をもって、この家を去ってもらう」

「えぇ~~~~~~!? なんでですの~~~~~~!?!?」


 前略お父様お母様。わたくしフィアラ・リズモール・アルヴァミラは、なんと家から追い出されてしまう事が決まってしまいました。

 いえそのお父様とお母様本人からそれを言い渡されてる最中なんですけど。


「聞くまでもないでしょう! アルヴァミラの家は炎の魔術の家系、……だというのに、お前はまるで魔力が無いのですから!」


 お母様から厳しい叱責の声が。

 そう、わたくしは栄えある炎の魔術師の生まれながら、ま~~ったく魔術が扱えるほどの魔力を持って生まれてこなかったのです!

 ……まあこんな日がいつかは来るだろうとは思っておりましたが。だって5年ほど前から2人がわたくしを見る目が冷たくなっているのには気付いておりましたし。


「お前が18歳になるまで待ってはいたけれど、一向に魔力も増えなければ魔術もろくに扱えない、本当に出来損ないのような娘でした」

「……母様、何もそこまで言わなくっても」

「アッシュ!! なぜこんな出来損ないの肩を持つのです!? こんな姉を持ってあなただって恥ずかしい思いをしてきたでしょうに!!」

「そんな……、……」


 わたくしの弟であるアッシュが見かねて諫めてはくれましたが、凄まじい剣幕のお母様に気圧されたのか、押し黙ってしまいました。

 いいんですよ、事実は事実ですので。


「……言葉は厳しいが、フォルトクレアも言った通りだ。フィアラはまだ15歳の弟にも劣る魔力量。成人まで待ってはみたが改善の兆しも見えず。炎の魔術師として長年帝国に貢献してきた家の娘としては、あまりに不適格だ」

「お、お父様もですの~? ですけどわたくし、皇帝陛下との婚約が決まっておりましたはずでは……」

「それも既に破棄とさせて貰った。お前では陛下の役には立てん」

「そ、そんなぁ~~」


 がっくりと膝を突くわたくし。

 落ち込んでいるのも事実、ではあるものの、これも実はある程度分かってはおりました。

 アルヴァミラ家の初代様はと~っても強い炎の魔術師としてわたくし達の住まう帝国……ベラスティアを守護していた方でしたから。

 その魔術の力を認められて代々皇帝陛下の身を守るお役目を授かっておりまして、わたくしも陛下の伴侶となりつつ陛下を守る役目がありましたので。

 そりゃあまともに火も出せないようなわたくしでは役立たずと判断されても仕方ない事でしょう。


「私達の言いたい事は理解しましたね? では、今夜までに荷物を纏めてこの家から出て行きなさい!」


 鋭く言い放つお母様。

 反論もあるっちゃあるんですけど、両親もそこまで間違った事を言ってはいないと思うので、わたくしは諦めてアルヴァミラ家を出て行く準備をするのでした。






「お父様もお母様も、急すぎですわ~~……」


 涙目で自室の荷物を整理するわたくし。とはいえ予想できてはいた展開でもあるので持っていくものはもうある程度以前から準備できておりました。

 わたくしの腕力でもなんとか持てる程度の重さに着替えやらを収めたカバンを肩にかけ、部屋を出ようとした時。


「……姉さん、まだいる?」


 控えめなノックと共に、アッシュがドアの隙間から顔を覗かせました。


「あらアッシュ、何の用ですの? あんまりわたくしとお喋りしてると、お父様とお母様への印象が悪くなってしまいますわよ!」

「だから見つからないように来たんだよ。……入るよ」


 音も立てずにドアを閉め、アッシュはわたくしをじっと見つめてきました。

 可愛い~。3つ下の弟として生まれてきたアッシュは、わたくしの弟だけあってとても可愛らしい顔立ちをしています。

 お父様もさっき言っていた通り、魔術もとっても上手く扱えて、わたくしの代わりにアルヴァミラ家を支えていく者として申し分ありません。わたくしも安心して家を出て行けます。


「あらあら珍しい。いつもあなたをを虐めてたのに最後に会いに来てくれるだなんて。どうしたのかしら?」

「や、全然虐めてなかったでしょ」


 アッシュは否定してきますが、そんなことはありません、わたくしは彼の事を徹底的に虐めておりました。

 アッシュが欲しがったものをぜ~んぶ先回りして買い占めてやったり。まあわたくしが欲しい訳じゃなかったんですぐいらなくなって、お下がりをくれてやりましたけど。

 ブクブクと太る弟が見たくってアッシュの好きそうなご飯のおかずはぜ~んぶわたくしの分まで食べさせたり。企みは失敗してスクスク育ったアッシュはスラっとした体形のままでしたが。

 あとわたくしの代わりに魔術の本をぜ~んぶ読ませました。おかげで本を読むのが大嫌いだったアッシュはすっかり……本が好きになったみたいです。

 他にも色々と……彼の事はずっと虐めておりました。いつかわたくしが家を追い出された時、清々するようにと気持ちを込めて。


「……あれだけの仕打ちを受けたというのにそんな反応ができるなんて、アッシュは本当に強い子に育ったのですわね~!」

「だからさぁ……いいやもう。それより、姉さん本当に出て行くの?」

「仕方ありませんわ、わたくしでは陛下をお守りする事もできませんし。アッシュはわたくしの代わりに頑張るのですよ!」


 心変わりもありません。したところで、今さらお父様もお母様もわたくしを家に置いておく理由なんてないでしょうし、無駄ですから。

 陛下の事は心残りではありますけれど、多分弟がなんとかしてくださるでしょうから、心配もしておりません!

 そんなわたくしにアッシュは少しだけ悲しそうな顔をしました。


「……分かったよ。じゃあ、これだけ渡しておくね」


 と言いながらアッシュはポケットの中から何かを取り出すと、それをわたくしの指につけました。

 それは指輪でした。銀で出来たリングに、真っ赤で綺麗な宝石の嵌められた綺麗な指輪。


「あらあらアッシュ~! これはもしかして、わたくしにプロポーズしようというのかしら~~!?」

「そ、そうじゃないよ!」


 顔を真っ赤にして否定するアッシュにわたくしは笑顔になりました。

 でもアッシュ、それならもっと別の指に付けるべきでしたわよ。

 まあ折角ですからこのままこの位置に嵌めておきますけど。


「そ、そういうのじゃなくて、それは姉さんを守るための指輪で……あ、いや、これも別に、そう言う意味じゃなくて」

「はいはい、おおかた使い魔とかを呼べるとかそういうのでしょう?」

「……う、うん、そんな感じ」


 アッシュがくれたのは何かを召喚できる指輪だったようです。

 魔力を通して、召喚者を守る存在を呼び出せるみたいですけれど。


「でもわたくし魔力なんて生まれつきすっからかんですからな~~んの意味もないかもしれませんわよ?」

「それは分かってるんだけど、無いよりはいいでしょ。もしかしたら気が合う誰かが助けてくれるかもしれないし。ダメだったとしても売ればお金にはなるし」

「売るなんてもったいないですわ~! せっかくアッシュがくれたんですもの~!」

「き、気にしなくていいからね。帝国だって夜は危ないんだから、野宿なんて考えないでその指輪すぐ売ってでもちゃんとした場所で過ごしてよ?」


 心配性なアッシュは、こちらの身を案じるような事を仰ってくれました。

 わたくしに優しくしてくれる義理なんてないでしょうに。


「……ふふっ、わたくしもいい弟を持ちましたわね」

「わ、ね、姉さん……?」


 小さく笑い、わたくしはアッシュを優しく抱きしめました。

 いきなりだったので驚かせてしまったようですけど、少し我慢してもらいます。


「優しいアッシュ。どうかわたくしの代わりに、皇帝陛下と、お父様とお母様の事、よろしくお願いしますわ」

「っ……。うん、任せて。姉さんも、元気でいてね」


 弟の温かさを確かめるようにしばらく抱きしめ、それから少ししてわたくしはアルヴァミラ家を出て行くのでした。

 アッシュとも約束しましたし、家を追い出された身ではありますけれど、平穏無事に過ごしてみせますわ!!

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