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コモン・ピープル

作者: 横瀬 旭

 僕は世界一不幸な人間だ。全世界、全人類の不幸を僕が背負ってやっている。だから君たちは普通か、普通以上の生活を営んでいける。そう思うのは、僕がこの先、生きていても幸せになれるビジョンが全く見えないからだろうか。


 『いじめはどうなのか』と問われれば、「僕も受けたことがある」と答える。『じゃあ戦争は』と問われれば「嫌いな奴に攻撃できるだけマシだろう。僕は口が付いていても文句ひとつ言えない。手も足も付いてるけど暴力を振るえない。相手も何も言ってこないし、攻撃もしてこない。しかし職場の全ての人間から無言の暴力を感じる。全員が僕を嫌っている」そんな自問自答を繰り返している。


 「私たちのことは?僕たちのことは?」と次々に質問される。「アース・ソング」という曲がある。あれは確かサッカーの試合のハーフタイムショーで二分くらい突っ立っているだけでも歓声が鳴りやまない、神様が歌っていた曲ではなかったか。


僕はあの曲が世界一嫌いだ。生まれた時はただの人間だったくせに、神様みたいな振る舞いをしやがる。あの曲のPVをテレビで見ると画面に尻を突き出したくなる。


 その神様は医者に睡眠薬を過剰に投与されて死んでしまった。いや、神様だから生きているかもしれないけれど。


「不幸だと思うならさっさと自殺すればいい」と自分に言われる。


しかし、自殺は与えられた寿命を踏みにじる最悪の行動だ。それに僕は、全人類の不幸を背負わなければならない。なんなら、不幸を文章にして有名になりたい。読んだ誰もが絶望する話を書きたい。


 アンディ・ウォーホールは「誰でも十五分だけ有名になれる」と言った。僕の場合、有名になるのは犯罪を犯した時だろうか。


 普通の人間になりたい。お前みたいに、普通の生活を送ってみたい。


普通以上の人間は普通になれる。しかし、普通以下の人間が普通になるのは、とても難しい。

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