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喫茶エデン 銃好き馬鹿達の日常編

 喫茶エデン。超能力者達が犇く裏社会の住民が集うこの店の店主、元傭兵の葦雅羅稀嚴が、常連達から代金の代わりに今日の物語シナリオを聞く。


-銃好きの馬鹿共編-

 平日の昼下がり。男女4人(1:3)の常連客達が珍しい時間にやって来た。"依頼"を受けに来たらしいソイツらはボックス席に腰掛けて銃器を横に置く。この四人組の能力は、それぞれの持つ銃器と合わさったものだ。

 桃髪の自信と実力を兼ね備えたLMG女が練弦心。戦闘指南もできるスペシャリスト。

 黒髪赤メッシュの気分屋泥棒猫のような拳銃女は辺蘭黎子。コイツの悪い噂は絶えない。

 橙髪のAMRを背負って異邦の神気を纏う男っぽい女が善児奈。通常狙撃で4kmは堅いらしい。

 最後に、薄茶髪で弄りがいのある唯一の男が園田匠鬼。コイツはソウドオフショットガンを持ってる。

 今日はコイツらの話を聞いてみよう。きっと面白え事が聞ける筈だからな。

[喫茶エデン 店内]


 カランコロンと、来客を知らせるドアベルの音。依頼整理を済ませ、カップを磨いていた俺は「よーぉ、久しぶりだなぁ〜?」と4人に声をかける。この店に来るのはどいつもこいつも特徴が強くて覚えやすい。

「直接はご無沙汰ね。まだくたばってなくて安心したわ」と練弦が言う。ひでぇ。軽い軽口を叩きつつ注文は全員いつもの。練弦&黎子が自家製パフェ[パラダイス・スペシャルDX]二つにそれぞれトマトジュースと珈琲。善児奈はサンドウィッチと緑茶。匠鬼はカルボナーラとオレンジジュース。

 そして、耳に入る依頼の話。俺の斡旋した依頼だが、やはり詳細は気になるものだ。助手兼店員のソフィアにも手伝わせて注文を仕上げた。

 ボックス席のテーブルに並べ、注文に間違いはないか確認する。ただ、それは本題じゃない。「でよぉ、テメエらの話を聞かせなぁ。礼にドリンク代くらいはチャラにしてやるぜぇ〜♪」この店自体俺の趣味だ。赤字でも俺の稼業が潰れなきゃ問題はねえ。だからこうして話を聞きつつ暇を潰すのが楽しみの内の一つ。客も対価があれば飯を食いつつ流暢に話してくれる。Win-Winってのはこの事、ってな。

 さ、4人の話だ。俺の分のボトルも取り出して軽い宴会だ。どうせこの時間は客が来ねえ。少しくらい騒いだってバチは当たらねえ。「さ、話してみな。食べ終わるまでに終わるといいがなぁ、お代わりは有料だぜぇ?ヒャァハハッ♪」



>視点変更:練弦心


 それじゃ、私から話すわ。黎子は脚色が多いし、善児奈は覚えてないわよね。匠鬼はまだ食い気が激しいもの。

 私達が依頼を受けたのは一週間前よ。霞綱工業っていう小さい会社だったわ。依頼内容は、彼等の会社の高度な技術を狙う大企業グループから守り、そして手を引かせる事。依頼内容自体は珍しいわね。でも大企業っていうのは…そ、あの会社よ。また何か作りたかったようね。こんなに正面から来るなんて思わなかったケド。

 それに社長の娘が可愛かったもの。あんな健気な子の顔を曇らせるなんて戦闘のスペシャリストとして恥ずかしいわ。

 ちなみに、私から話すのは防衛側の話よ。メンバーは私と善児奈。市街地の工場だから、十分戦略の練りようがあって楽しかったわね。味方にスナイパーが居ると少しの無茶もできて血が沸るわ。アハハッ、思い返すだけで興奮してきたわ。

 …ココで発砲なんてしないわよ。けど、一週間近く戦い詰めだったからまだ気分が抜けてないのよ。

 話を戻すわ。初日と二日目は一般人のヤクザ達だったわ。だから軽く教えてあげたら、次からは同類の甘ちゃんが沢山来たわ。けど──


[霞綱工業]

時刻変更:四日前


 耳元の通信機が何かを受信する。距離が遠いから不安定だけど、少し調整して鉄塔の方向にハンドサインを返すわ。

『──(ノイズ)、あー、あー、聞こえる?今、そっちに…10人が向かってる。全員人型で、リーダーっぽい奴今はすっごい油断してるからいつでも脳天入れられる』

 善児奈からの報告は受け取ったわ。場所は…正面道路を北上した先ね。数が少ないから、今は向かいの倉庫で待ち伏せ。強襲部隊を奇襲で潰すなんて皮肉が効いていて面白いわね。

 数分待ったわ。一般人に偽装しているようだけど、私達からすればバレバレ。力が丸見えだもの。能力者とはいえ、末端の末端もいいところの甘ちゃん達みたいだし……んふふふ、指導してあげなくちゃ。

 リーダー格が隊列を整えようとしたタイミングで善児奈に狙撃支援を要請。間違いなく善児奈の弾丸はリーダーの中枢を貫いたわ。それによって生まれた一瞬の隙を突いて私は飛び出す。「アハハッ!スペシャリストの私だけで十分ね!」とつい興奮して笑っちゃったけど、流石は甘ちゃん達。烏合の衆みたいにあたふたとして怯んだまま。

 両手で持つ私の愛銃、[DCG-アンク]から放たれる銃弾の一発一発が命中して、機械の肢体を消し飛ばしていく。あら、人の形を保っていると思ったら、最初から人工物だったのね。或いは、クローン?ふぅん…技術だけは目を見張るものがあるのね。勿論、戦闘のスペシャリストたる私の前には虫ケラ同然だけど。

 そうだ。アンクの事を教えてあげるわ。この子は私が改造して調教した軽機関銃よ。服飾のスペシャリストでもある私が、綺麗に着飾ってあげた銃だから、"DCG"──"Decoration-Gun"を略して名前に付けてあげたの。声が大きくて、しかもじゃじゃ馬で手のかかる可愛い子よ。

 光の速度まで動ける私達能力者は、狙いを定めても普通の手段じゃまずじゃ当たらないわ。その点、このアンクはレートが高くて狙いをつけるまでもない。だって、相手が勝手に当たってくれるもの。まるで空中に浮かぶ機雷のようにね。だから今更回避運動をした虫けらが死角から跳弾してきた弾丸に当たって、行動不能になった。本当に、私の意思を汲み取って当ててくれる愛しい子だわ。

 それに、戦いで沸って沸って仕方のない私の狂乱の血が流れていると、この子はもっともっと良く動いてくれるの。怪我の治りが早くなって、リロードがスムーズになるし、反動も弱くなる。きっと私とアンクの深い絆のなせる事よ。

 ついでになのだけど、善児奈が自分の血で作った"血の弾丸"は、善児奈のAMR(アンチ・マテリアル・ライフル)の[ORION-II]で撃つ事で射程と引き換えに亜高速の射速を得るの。今の狙撃は通常の炸裂弾だったみたいだけど、白兵戦闘の距離ならそれを生成して撃っているわ。

 善児奈との模擬戦の時なんて、伏せ狙撃の体制だった善児奈を狙って近距離戦に持ち込もうとしたら唐突に跳び上がったの。そのまま、木の上まで目で追いかけたわ。すると、善児奈の背中に月と羽根が生えたような幻覚が見えたの。すると、次の瞬間には寸分の狂いなく私のターゲットが撃ち抜かれていた。戦闘のスペシャリストの私でもつい見惚れるほどの動きができるし、狙撃の腕なんて私は足元にも及ばないわ。けど、正面きっての戦闘なら当然、私の方が強いわ。ふふん。

 さぁ、現実に戻るわ。丁度最後の一人を無力化したの。周囲の工場達も私達の味方。鳴り響く銃声は、工場の賑やかな音に混ざってハーモニーを奏でたの。だから通報なんてされないし、悪いのはこの虫けら達。あぁ、もう学習する脳みそ(CPU)も残ってなかったわね。「フフフ、誰も私を倒せないっ…!」

 周囲に敵がいない事を確認した善児奈が戻って来るまで、メモリーをハッキングして情報収集。けれど、面白そうな事はないわね。手下は遠隔操作の子機のガラクタで、リーダーの一人だけが元人間だったみたいね。あの企業の内通者から買ったドローンで強引に再起動して上下関係を教えてあげたら、簡単に話してくれたわ。

 この作戦を指示した組織は予想通り。作戦の規模や、本拠地の情報も手に入れたわ。このデータを襲撃組の二人に送信。軽く指示を出していたら、今日は夕日が沈んでいたわ。久しぶりの銭湯で休んで、終わりね。


[喫茶エデン]

時刻変更:現在


「四日目は数が増えただけね。けど、五日目からは楽しくて楽しくて仕方なかったわ。強敵も増えていたし、十分満足できたわ。最終日なんて…ねぇ、そっちは如何なの?」

 3杯目のカルボナーラを食べた匠鬼にも話を振るわ。そろそろパフェを食べたいもの。「ふぅ…食った食った…あ?俺?…あぁ…こっちはこっちで大変だった」と匠鬼は腹を摩っているわ。

 稀嚴は面白そうに聞いているわね。「ヒャァハハハハハッ……そうか、そうかそうかぁ…痛快にぶっ潰したんだなぁ♪ならぁ…もっと"美味しい"依頼を回してやるぜぇ〜♪」…お手柔らかに頼むわ。

 さぁ、改めて匠鬼の番ね。同じ依頼を受けたけど、襲撃側はあまりわからないのよね。私も楽しみにしながら、パフェのフルーツとクリームに舌鼓を打つわ。…はぁぁ…甘くて最高ね。



>視点変更:園田匠鬼


 かなり食ったが、話が面白いからもうちょっとチャラにしてくれるって言うなら話すしかねえか。「じゃ、俺からは作戦基地を潰した話だな。所詮末端組織の作戦だ、そこまでデカくはなかったな。だから…本襲撃当日の話だけさせてもらうぜ」


["末端組織"近くの裏路地]

時間変更:昨日夜


 ビル街の裏路地。言う事を聞かない俺の[Loki-B6]の弾を確認しつつ、偵察中の黎子姐を待つ。俺の愛銃…というより相棒は、バレルの殆どないいわゆるソウドオフ・ショットガン。だが中折れ式のシリンダーが付いている。だがどんな弾が何発出るかは俺にもわからないし、毎回全弾リロード必須。…でも、俺の相棒は不思議なことに魔弾としか言いようのない弾道を描く。突然発火したり、呪いの手が掴みに行ったり。正直俺も能力は把握してないが……ま、とにかくすげえやつって事だ。

 黎子姐の愛銃は、そこそこ潜入向きだ。[ベレト-72]。ぱっと見はちょっと趣味の悪い拳銃だけど、その能力…俺達は[悪魔の弾丸]って呼んでるが、射程限界まで目標に向けて加速し続けて、追尾するクソみてえな弾丸。しかも先に分かってればセンサーの類は出来るだけ避けていく。

これで警備装置をピンポイントで破壊して、後は基地をぶっ潰すだけ…ってのが心さんの指揮だ。今電話しても首魁と戦闘中で狂ってるだろうから確認できないが、善児奈がいるしあちらは心配ないだろう。

 そして、黎子姐がコンビニおにぎりを持って帰ってきた。「少ね〜ん、腹拵えでもしておこうぜっ♪」…少し酔いどれ風に話すが、これが黎子姐のシラフだ。見た目だけは本当に黎子姐はいいんだ。見た目だけは…ってそれはどうでもいい!おにぎりを食べてから俺たちは基地に突入したんだ。


後編に続く。

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