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とある猫のお話

作者: オオトリ

 どうも。

 

 私は、小林家の一員である。


 小林家には、お父さんとお母さんと私。そして、私の弟のヒロがいる。


 名前を「ふぁろんまろん」という。


 私は猫である。


 ヒロは、私が小林家の一員となってから1年後にやって来たので、私の一歳下の弟である。


 このヒロというやつは、なかなかニブイやつで、始めの何ヶ月かは自力で歩くことも出来なかった。


 何かあるとすぐに、ニャアニャアと私を呼ぶ。


 言葉も下手くそで、全くなにを言っておるのかわからんが、ひとまずうるさいので横に並んで尻尾であやしてやる。…痛い!掴むにゃ!


 空腹時等は私の尻尾の絶妙な技をもってしても鳴き止ますことは出来ぬ。

 その時は、お母さんを呼んで乳を与えてもらう。お母さん!私も抱っこ…!


 昼間は、ヒロはほとんど寝ているので、私は横に付き添ってやらねばならない。

 尻尾でリズムを取ってやると、あっと言う間に…ムニャムニャ…


 そうしているうちに、私が教えてやった甲斐があり、しっかりヒロも歩けるようになった。

 そうだ。右と左、前と後の足を順番に出すのだぞ。走るときは、前足と後ろ足は揃えるのだ。うん。まだ上手に走れぬか…。焦らず付いてこい。…痛い!耳を引っ張るにゃ!


 …なんと…。ヒロは私よりも先に二足歩行が出来るようになったか。

 うん。目出度いな。心の広い私は、弟の成長は喜ぶぞ!

 …ちょっとそこに掴まって立つ練習でもしようかな…。…痛い!お母さん助けて!爪が布に引っかかって抜けないニャー!


 ヨタヨタと二足歩行の練習をしているヒロだが、まだ不安定でしょっちゅうあちこちにぶつかっていく。

 そのため、私はぶつかると危ないところに爪でしるしを付けてやらねばならない。カリカリ…ガリガリ…。ふう、スッキリした!


 ヒロの二足歩行が安定してくると、今度はまた私を真似て高いところに飛び乗る練習を始めたようだ。

 ヒロは、私よりも体が大きいので場所を取る。

 仕方がないので、台の上をヒロのために空けてやることとする。

 これもあれも邪魔にゃー!ポイポイなのにゃー!


 やがて、ヒロは言葉が上手くなり、私のことをちゃんと「ふぁろんまろん」と呼べるようになった。お父さんとお母さんにも、私の名前は難しいらしく「ふぁー」と呼ぶので、ヒロは言葉がとても上手いのだろう。

 上手に呼べると、褒めてやらねば。「ふぁろんまろん!」「ニャ〜!」


 その頃には、ヒロはほとんど毎日出かけるようになった。

 帰り道がわからなくなってはいけないので、毎日私は玄関でヒロを待つ。

 今日もなんとか帰って来たようだ。やめろ!なんだそれは!トゲトゲをくっつけるな!離れない!お母さん取ってニャア…!


 ヒロが出かけることが多くなってからしばらく経つと、今度はトモダチを連れて来るようになった。未だに夜は一人で眠れず、私が横にいてやらねばならない甘えん坊であることがトモダチにバレては可哀想だ。

 私が居ては、甘えたくなってしまうだろうから姿を隠さねば!

 決して、知らぬ子供に撫でまわされるのが嫌だからではにゃい!


 ヒロは、いつの間にかチューガクセーというものになったらしい。

 最近は、ジュケンセーにもなり、椅子に座っていることが増えた。

 まだまだ甘えん坊だからな。一人では寂しいだろう。机の上で見守ってやるぞ。…なぜ避ける。ここは私の場所ニャー!


 やがて、ヒロはコーコーセーになって、帰りが遅くなった。

 この頃には、もう一人で帰って来れるだろうと弟を信じて見守るのも私の役目だ。

 玄関には行かず、寝床で待っているぞ。


 未だにお父さんもお母さんも私をちゃんと呼べないでいるが、ヒロだけはちゃんと「ふぁろんまろん」と呼ぶ。今も向こうで呼んでいるが、ちょっと起きるの面倒だから、尻尾で返事をした。パタリパタリ


 今日も、遠くから「ふぁろんまろん?起きて?」とヒロの声がする。遠くから呼ばないで、近くに来い。

 いや、優しく撫でる手を感じる。これはヒロの手で間違いない。ちらりと目を開けて見ると、すぐ近くでヒロが鳴いている。

 どうした。急にしゃべるのが下手になったのか?何を言ってるかわからんぞ。

「ふぁろんまろん!目を開けて!」

 そう言われても、温い手が気持ちよくて眠いんだ。

 でも、弟が呼んでるから返事はしてやらないとな。眠いから尻尾でごめん。

 パタリパタリ


 深ーく深ーく眠りに入る前に「ふぁー!ずっとずっとありがとう!うちの猫はふぁーだけだからね!」とヒロの声が聞こえた。





 どうも。


 小林家には、お父さんとお母さんと私。そして、私の弟のヒロがいる。


 今日から「ふぁー」に改名したらしい。どうぞよろしく。


 

 私は小林家唯一の猫である。

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