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ちょちょいと

やりたいことやったもん勝ち、一次創作なら~

 行儀よくごちそうさまでしたと手を合わせる少女を見て、俺はついつい口角があがってしまう。

 そういえば他人に料理を振る舞うなんて、学生時代の男友達くらいしかなかった。そのときのスキルがまさかこんなカタチで役に立つ日がくるなんて、当時の俺はおろか、俺の友人含めて誰も想像できなかっただろう。


 そういえば、あのときの友人の中にはまだ連絡をとりあっているやつらがいたはずだ。

 ニュースで大々的に名前が乗っていたから、もしかすると俺の葬式に来てくれたやつもいたかもしれない。まあ、さすがに今の姿で会う気はないし、もしどこかですれ違ったとしても、相手が俺に気付ける確率はゼロである。

 確率0%を期待しても意味がないので、俺はその思考を振り払うように皿洗いを始めた。


「ああ、そういえば」


「なんですか?」


「風呂も洗ってあるから先に入ってきていいぞ。たまにはお湯でも張ってゆっくりしてこい」


「……なんであまり湯船を使ってないって知ってるんですか?」


 待て待て、そのジト目は一部界隈ではご褒美かもしれないが俺にはそんな趣味はないぞ?


「見た目上は綺麗に見えても、よく見てみると汚れが残ってるもんなんだよ。そうだな、シャワーで流していてもスポンジ使って洗ったりはしてなかったろ?」


「はぁ……なるほど」


 一応は納得してくれたようでホット安堵する。今の俺にゃここしか住む場所がないからな。それにお金も彼女だよりだ。

 あれ、もしかして今の俺ってヒモ男……?

 いやいや、ちゃんと家事はやるつもりだからほら、専業主夫てきな?それに今は少女の見た目だし、専業主婦でも通るというか?


「では先に入ってきますね」


「俺は一度シャワー浴びてるから、気にせずゆっくりしてきてくれ」


「シャワー?……っ!」


 ガタリと物音がしたので振り向いてみると、机の角に足をぶつけたようで涙目で悶絶している少女がいた。もしかしてドジっ子属性持ちか?あざといやつだ。


「つまりは……」


 プルプルと震えながらも、少女は涙で潤んだ目で俺を睨みつけてくる。


「私の体……見たんですね?」


 あれ、もしかしてそのプルプル震えてるのは羞恥だったりする?



=*=*=*=*=



 あのあと言葉巧みに言いくるめてから風呂に送り出して、なんとか場をしのいだ。まったく、勘のいいガキはいつもは好きだがああいうところではやめてほしいもんだね。


「ふう。皿洗いも終わりっと」


 エプロンをぬいでハンガーにかける。やはり良いエプロンだ。シンプルさの中にかわいさを忘れないデザイン。ちょうど中学生くらいの年頃に一番似合うものだ。

 本当は俺の数倍は清純さのある少女自身に着てほしいのだけれど、あの禁欲主義者が料理のために台所に立つ日は遠そうである。


「……、暇になったな」


 今日の家事は一通り終わっている。とりあえず買ってきたものでも片付けるか、とリビングにまだ山積みにされた買い物袋へと向かったときに、その事件は起きた。


「……なんかめんどいな」


 そう、その事件とは、やる気がどこかへ行ってしまった事件である。


 ああ!めんどくさい!なんだかわからないがゴロゴロしながらスマホでもいじっていたい!


 諸君にもそんな瞬間はあるだろう。人にはやらなきゃならないことを目の前にしてやる気が行方不明になる瞬間があるもんだ。

 そして、今の俺にはやらなきゃならない期限というものがない。どうせ明日も1日家にいる。つまりは片付けは明日でもできる。


 そんな俺に、怠惰になりたいという感情を抑え込めるわけがなかった。食卓の椅子で即席のベッドをつくり、寝転がってはスマホで適当にネットサーフィンをし始めた。



「お兄さん」


「ん、えあっ?」


「お兄さん、起きてください」


「あ、あぁ。いつのまにか俺寝ちゃってたか」


「そんなところで寝たら風邪引きますよ。お風呂、入ってきてください」


「ああ、サンキュー」


 寝ぼけながらゴソゴソと買い物袋を漁り、着替えを取り出す。スマホが顔面横に落ちていたのを見ると、寝落ちしてしまっていたらしい。


「……なんだ?」


「いえ……」


「ん?怒んないから言ってみろよ」


 先ほどから一挙一動じーっと見られている気がしたので聞いてみれば、少女はやたらと言い淀んでいた。


「あの、お兄さんは本当にお兄さんだったんですか?」


「どういうことだ?」


「いや、なんだか元からお姉さんだったのかなぁなんて、いや失礼でしたよね。すみません」


 なるほど、なんかよくわかんないけどまあほぼ確実に勘違いされている感じがする。


「なんでそう思ったんだ」


「だって……家事はできますし、こう女の子であることに慣れているような」


「……へっ?」


「男の人ってもっとこう、家事が大雑把だったり、荒々しい雰囲気といいますかそういったのがあるものだと思ってて」


 ふむ。まあ確かに言われてみれば、今の俺は女であることに慣れている。急な環境変化にもかわらず、だ。そういったところに違和感を覚えるのは、確かに性転換した俺の方のはずである。

 しかし実際のところ、俺はすんなりとこの環境を受け入れているし、むしろ彼女のほうが疑問をもってしまっている。


【それは僕から説明しよう】


「おまえ……生きていたのか」


 リビングの扉を開け放ち現れたのは、自称神の使いである。

 バケモノ退治後から姿を見せなかったので、存在を忘れかけていたのは内緒だ。


【忘れないでほしいなぁ】


「いやスマンスマン。それで、なんでなんだ?」


【答えは簡単さ。いちいち違和感を覚えていては生活しづらいだろう?だからすこし頭の中身をちょちょいとね?】


「えっと、それ大丈夫なのか?」


【ただちに健康への影響は確認されてないよ】


 余計に不安になってきたんだが……。


一時、ローファンタジー日間に乗っていたらしいです。ありがとうございます。

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