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深夜のラーメンは罪だよ

ネタストックとリアル予定と集中力の問題でお休みしてましたが、今日から再開できたらなと思います。


前回までのあらすじ

・魔法少女そっくりになって一緒に生活することに

・執拗に狙われる左腕

・食事は大事

 ブルリと震えて、目を覚ます。最近やたら冷えてきたせいだろうかと体を起こしてみれば、そうではなかった。


「ったくまた夜ふかしか?」


 いつも体が触れ合うほどの距離にいる魔法少女はいつのまにか抜け出している。廊下の電気はついていない。しかし、その微かに残っているぬくもりは、魔法少女が抜け出してからそれほど時間が経ってないことを表していた。


「ううっ寒い、そろそろ暖房器具も考えないとな」


 エアコンをつけっぱなしで寝ると翌朝悲惨だからな。エアコンに頼るとしても、別の対処法で乾燥を防がないと喉が死滅する。

 スリッパを履いて上からパーカーを羽織れば、多少は寒さがマシになった。


 階段を降りれば、カチャカチャとなにかをしている音がする。以前はただぼーっとしていただけだったはずだ。何をしているのか気になってそっと扉を開ける。


「……お兄さん?」


「バレたか」


 後ろに目でもついてるのか?音は立てなかったはずなんだが。


「気配がしたので」


「お前は戦闘民族か何かで?あといつものように心を読むな」


「すみません顔にかいてあったので」


 そろそろ俺の表情筋はポーカーフェイスを身に着けてほしいな。表情がころころ変わるのを楽しめるのは見ている側であって、自分がたとえそうでも嬉しくないんだよ。


「そんで、こんな真夜中に何をしてんだ」


 時刻は丑三つ時。草木も眠るとは外の静寂のことを言うんだろう。車の音すらたまにしかしない。


「それが……」


「腹へったのか?」


「そうみたいです」


 謎の物音の正体は、戸棚や冷蔵庫を漁る音だったようだ。晩飯は十分な量があったはずだが……これが育ち盛り食い盛り……?


「どのくらい腹が空いてる?」


「えっと……ほんのすこしです」


 魔法少女はそう言いながらそっと顔をそむけた。


「なるほどなるほど。で、本音は」


「……結構」


「あいや了解」


 この体になってからは控えてたアレ、きっと食い時があるとしたら今だろう。

 食卓から椅子を持ってきて、普段は開けない戸棚を開ける。


「カップ麺ですか?」


「ああ、そうだ。この時間帯に食べるカップ麺はいいぞ。まあ太るから日常化しちゃいけないけどな」


 深夜ラーメン。この文字列だけでよだれが出てくる。なんで深夜帯の麺類ってこんなにも魅力的なんだろうな。やはり不健康は美味しい。いままで健康(?)な生活をおくってきた魔法少女には、適度な毒だろう。


「あの……カップ麺は初めてで」


「なるほど。いい機会だ、調理を教えてやる」


「……はい」


「まずはエプロンをしようか」


 俺のと色違いのエプロンを、袋からとりだす。いずれは魔法少女にも台所に立ってもらうつもりで買っておいてよかった。


「つけました。おそろいですね」


「エプロンよし。じゃあまずやかんに水をいれよう。俺の分もあるから多めにな」


 本当は電気ケトルとかあると楽なんだが、多人数暮らしの日常遣いだと多めに沸かせるやかんが便利なんだなこれが。


「いれました」


「じゃあ次は火にかけよう。おっとガスコンロの使い方は教えたほうがいいか?」


「さすがにそれくらいはできます」


 3度くらいカチカチとして火がつく。こんなガス火でも見てて落ち着くのは俺だけだろうか。いや今はそれはいい、重要な話ではない。


 数分待てばピーピーとやかんの笛がなる。


「よし、じゃあパッケージを開けろ」


「えっと……全部あけていいんですか?」


「いやまて、半分だ」


「わかりました」


 魔法少女は几帳面にきっかり半分をはかって開ける。料理は科学とはいうけれど薬品調合でもなんでもないんだからそこらへんはアバウトでいいよ。


「んでお湯をいれます」


「はい」


 こぼさないように、そして火傷しないように気をつけながら、2つのカップ麺容器にお湯を注ぐ。


「そしたら蓋を閉じて三分待つ。箸かなんかで抑えとこう」


「すこし隙間あいてますけど」


「いいんだよそれで」


 本当に何も知らねえな。てっきりカップ麺とかを常用してるのかと思ったが、一度も食べたことがないとはな。


「三分立ちましたよ」


「じゃあ蓋を開けます」


「はい」


 俺は蓋をはがされたカップ麺の容器を、食卓に持っていく。魔法少女も戸惑いながら、自分の分も持ってくる。


「あの、お兄さん次は?」


「食べます」


「えっ?」


「完成です。食べます。以上です。コングラッチュレーション」


「お、終わりですか?」


「もちろん、これで終わりだ。あとは食べるだけだぜ」


 手を合わせてから麺をすする。くぅぅ、冷えた体に温かい麺がしみるぜ。


「い、いただきます」


 ズルズルと麺をすする手が止まっていないのを見るに、どうやら気に入ったらしい。いやカップ麺を気に入られてもそれはそれで心配ではあるんだがな。



「ごちそうさん」


「ごちそうさまでした」


 どうやら満足したらしい。まあ育ち盛りとはいえカップ麺をたべりゃ十分だろう。


「うまいだろ、この時間のラーメンは」


「はい、想像以上に」


「ま、しばらくはさせないけどな」


「わかってます。毎晩起きてしまうのも困りますし」


 そりゃそうだ。せっかく最近はぐっすり寝れているようなのに、こんな空腹だなんて理由で起きてしまっていてはよくない。晩飯をもう少し考え直してみるか?でも一回の食事の量は増やせないしな……。


「まあ対処法はてきとうに考えておくよ。んじゃ、寝るぞ」


「洗い物は」


「いいから寝るぞ。とりあえず水につけておけばなんとかなるから」


「……はい」


 せっかくカップ麺であったまった体を冷やすわけにもいくまい。すこし匂いが気になるけれど、早めに布団に入るに限る。


「くれぐれもいうけどこれを日常化するなよ?」


「わかってます。時々の楽しみ程度、ですよね」


「んだよ、わかってんじゃねえか」


 それでいいんだよ。時たまに程度の息抜きで。


「トイレいってくるから先に行っててくれ」


「はい、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」


 魔法少女が寝室に向かったのを見て俺はトイレへと向かう。


【少し、いいかい?】


 後ろから急に声をかけられたのは、そのときだった。


「……トイレいってきてからでもいいか?」


【そうだね、そっちを先にしておいたほうがいいかも知れない】


 どうやら長話になるらしい。俺は徹夜の覚悟を決めつつ、危機を訴えかけてくる膀胱を救いに行く戦いへと先に赴いた。


膀胱「助けてくれてありがとう」

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