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それでいいのさ

誤字報告等、いつも助かってます、ありがとうございます!

「そうそう、汚れにはアルカリ性と酸性があってだな——」


 俺たちがお茶を飲みながら、雑談に励んでいる時だった。


【ジャスティーヌ!その子から離れるんだ!】


「神の使いさん!?」


 神の使いがとんでもないスピードで飛んできたかと思うと、俺たちと少女との間に割って入ってきた。


「おお、おつかれ。茶でも飲むか?俺の飲みかけだけど」


【遠慮しておくよ。それより——その腕はどうしたんだい?】


「ん?いや、これはバケモノにだな」


【嘘だね。この子からやられたんだろう】


 有無を言わさないように、神の使いは断定してきた。


「あの、神の使いさん?いったいなにが」


【この子は……君たちと関わっちゃいけない側の存在なんだ】


「でも魔法少女ですよね?あちらにも神の使いさんがいると聞きました」


【その件に関しては……後で説明するよ】


 神の使いの目線で、謎の少女はゆっくりと後ろに下がる。敵意は見えないあたり、神の使い野郎が言うようなヤバい存在には見えない。


【説明する必要はありません】


 突然、謎の少女のすぐ横の空間が歪む。そこからのっそりと出てきたのは、これまた神の使いと似たぬいぐるみみたいな奴だった。


【はじめまして、正義の魔法少女ジャスティーヌ】


 しかし魔法少女はキッと睨みつけるだけである。何かを感じ取っているのかもしれない。俺?何もわからん。


【そんなに敵意を剥き出しにしないでくれません?】


「あなた一体何者ですか?神の使いさんと同じようで、でもバケモノの気配も混じっています」


【さすがはバケモノ退治のプロですね。彼女のように誤魔化しは効きませんか】


 神の使いもどきの体が、まるで粘土のようにグネグネと歪む。そして泡立ちながらその体積を増やしていき、まるでバケモノのような姿に——


【ジャスティーヌ、Go】


「はい」


【ぐ、ぐわーーー!!!】


 泡立った粘土は、正義の魔法少女による拳で粉々に粉砕された。


【何てやつ……!形態変化中に攻撃するなんて!それでも正義の魔法少女か!!!】


【ふふふ、君にはわからないかもしれないが……僕たちが、僕たちこそが正義なのさ】


【卑怯だ!!!】


「それは君が言えることかい?」


 グネグネとまだ蠢いている粘土を、神の使い野郎は人間形態になって踏みつける。


「十分な説明もなしに人を利用した挙句に、僕らの身内にまで傷つけたんだ。自分でなく他人に手を下させる君のほうが卑怯じゃないか」


【私は悪ですよ。卑怯な手を使ってナンボってものです】


 うん、わかる。やっぱ姑息さってあるよな悪役って。


「昔の君はもっと素直だったのに」


【知った風な口をきかないでください!】


「えっちょっと待て待て」


「なんだい?今忙しいんだけど」


「お前ら知り合いなの?」


「まあそうだね。この際だから説明しよう」


 神の使いはようやく、粘土から足を離した。


「こいつは僕の同期。元、神の使いさ。数年前から行方をくらましていたけれど、まさかバケモノの力と融合していたなんてね」


「じゃあつまり……俺も、魔法少女も、そこの少女も、お前らの因縁に巻き込まれたってことか?」


「まあ、そうだね」


「ちなみにどんな因縁があるんだ」


【こいつは……こいつは私のキャリアを傷つけた!あなたがいなければ私は今頃!】


「あれは君が勝手に自爆しただけだろう?僕のせいにしないでくれよ」


 ちょっ待てや。つまりはくだらん2人間のキャリア競争に俺たちは巻き込まれたってことか?俺の腕はそんなどうでもいいことのために吹き飛んだってか


「ふふふ、許せねえや」


「……お兄さん?」


「お前らに取っちゃ大事な問題かもだが、それで他人を巻き込んでいい理由には何ねえよなぁ……?」


 俺はようやく形の整ってきた粘土に指を指す。


「お前は絶対に許さねえ」


 少しカッコつけてみた俺には、魔法少女からのよくわからん眼差しと神の使い野郎からの困惑の眼差しが突き刺さっていた。


「ちょっと待ってくださいお兄さん。神の使いさん、バケモノの形ってことはつまり悪ですよね?」


「そうだね。バケモノと融合した時点であいつは悪だ。だからジャスティーヌ、あいつをやっちゃってくれ」


「いや待て待て」


 俺はそのまま殴り殺してしまいそうな2人を止める。


「俺にいい案がある」



=*=*=*=*=



 帰りに肉屋でさらに一枚の肉をゲットした俺は、料理に取り掛かる。揚げ物に必要なのは事前準備だ。揚げ物は揚げたてに限る。そんな誰でもわかるようなことを実際に一人でやり遂げるのは難しい。


 しかし、そう!しかし今日の俺には助っ人がいる。


「よ、よろしくお願いしますわ」


 謎の少女X。俺より幾分か成長の早い彼女が、俺の隣でエプロンを身につけて立っていた。


 さてと、始めますか。俺は油の中に箸先をつける。こうすると泡の出方で温度がわかるのだ。


「よし、じゃあ始めますか」


 飛び跳ねて火傷しては困るので俺はまくっていた両袖を下ろす。ちなみに左腕は表の世界に帰ってくるときに何事もなかったかのように治った。神の使いが何かしたらしいが俺にはよくわからないのでスルー。


「そ、その……」


「ん?なんだ」


 手伝ってくれてる少女がビクビクと震えてるので、俺はトンカツを揚げる手を止めずに聞く。


「すみません、でしたわ。まさかあんなことになるなんて」


「何言ってんだよ。お前は何もしてないだろ?それともウチの魔法少女からパンチ喰らいたいのか?」


「いや、魔法少女どうしは危害を加えられないわ」


「……ま、まあ俺は魔法少女じゃないからな!」


 ちなみに、この少女には俺の中身について話している。俺っ子ぶってる痛いやつと思われるのも嫌なんでね。


「ほら、一枚目ができるぞ皿をとってくれ」


 ふむ、なかなかの出来なきもする。一枚目が冷めないうちに仕上げたいので、速攻で二枚目に取り掛かる。料理にはスピードが不可欠だ。



「本当にこれでよかったのかしら」


「ん?何がだ?」


 俺は片手に最後の皿を、そしてもう片方の手にエサ皿を持って食卓へと運ぶ。


「いえ、当の被害者がこれでいいのなら、いいのかしら」


 不思議な言い方をするなぁと思いながら、俺はエサをねだる猫——元、神の使い兼バケモノ——を撫でてあげた。


【くくく、いずれはこの状況を打破してみせる……そのためにはとにかく生き続けねb——あぁぁぁ撫でられるの気も゛ち゛ぃ゛ぃ゛】


 心の声が俺にだけ聞こえてるってことはしばらく黙っていようと思う。


猫派の人は握手

でも犬も好き

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