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そして私は分裂した

速攻で評価してくれたニキネキがいたので、考えてた分まで書き尽くしました。本当にありがとう。

「そう、私は正義の味方!」


 そんなわけがない。そもそも正義ってなんだ。


「悪は絶対に許さないんだから!」


 許さないとは自分は何様のつもりだ。


「怪人さんも、もう悪さはしちゃだめだよ?」


 岩をも容易く割ってしまう拳をつきつけられたら誰だって首を縦に振る。



 もうすべてが限界だった。そもそも中学生である私に、日本の平和を守るだなんて責はおもすぎるのだ。


【大丈夫かい?】


「うん……。だって私が倒れるわけにはいかないんだもん」


 私は選ばれた。選ばれてしまったというべきかもしれない。私の代わりはいない。私がやるしかないのだ。


「間に合わなくて……ごめんなさい」


 まだお兄さんと呼べるくらいの青年の死体に、私は手を合わせる。腹を開かれ臓物を貪られた死体には、もう慣れた。けれど、私の良心は痛むばかりだ。最近はその痛みすらも鈍くなってきているが。


【限界……かな】


「そんなことないよ」


 あははと笑ってみせるけれど、それでこの自称神の使いさんを欺けるわけがない。私は後片付けを神の使いさんに任せて、帰路につく。汗だかなんだかわからないような液体で肌がべとべとだ。


「先に帰ってシャワーを浴びてるから」


【ああ、待って】


 そういって神の使いさんは私にペンダントを渡す。中には何かがうごめいていた。


【今日はそれを付けて寝て。理由は……明日の朝に彼と共に話すから】


 彼?とは思いもしたが、深夜ということもあって眠気が襲ってきた私は、そうそうに家へと帰るために空を飛ぶのであった。


 倒れ込むように風呂上がりのままベッドに飛び込んだ私は、ふとペンダントから「やります」と聞こえたような気がした。しかし疲れ切っていた私の意識は、それを確かめる間も与えずに眠りの世界へと誘われたのだった。



=*=*=*=*=



「それで、いったいどういうことなんですか」


「俺にもさっぱり」


 目の前の私は、まるで男の子のようにガシガシと頭をかきながらそう答えた。あぐらをかいていて私のとまったく同じパンツが丸見えである。


「ああ!お願いですから足閉じてください。見えちゃいけないもの見えちゃってます!」


「おお、スマンスマン」


 目の前の私はに言われたとおりに足を閉じる。しかし、こう安心感がない。なんでこんなことになったのだろうか。


「しっかし……まぁ不思議なこともあるもんだなぁ」


「不思議って言葉で片付けちゃっていいんですかね」


「自称とはいえ神の使いらしいから、こんなこともできるのかもな」


 頬を引っぱっている目の前の私は、私と瓜二つだ。髪の色の差や肌色の差が少しちがうくらいで、同一人物といっても8割がたの人は気が付かないであろうほどだ。


「まあなんか?やつ曰く君が溜め込んだ鬱憤みたいなのが俺らしい。けどそれっておかしな話だよな」


「そうですね。なぜその器にわざわざあなたという魂をいれたのかがわからない」


「反転した性格でもしてんのかねぇ俺と君は」


「……わかりません」


 彼との距離感がつかめない。話を聞く限り彼は神の使いさんが私のために作ってくれた存在らしいのだけれど、私の面影が容姿くらいで他は何にも共通点はない。


「まあよくわかんないけどよろしく頼むよ」


「えっ……もしかして一緒に住むんですか」


 ピタリと彼は動きを止める。そして指を一本立てながら私の方へと振り向いた。


「ここで問題です。気がついたら君の隣で寝ていた俺の家はどこでしょう」


「もともと住んでた家があるじゃないですか」


「うーん、そういうわけにもいかんだろう」


 そう言って彼はスマホをどこからともなく取り出す。一瞬私のかと驚いたが、同機種の色違いのようでホッと一息ついた。


「ほら、な?」


 大手検索エンジンのニュース欄。そこには、深夜のトラックの交通事故の記事だ。そこでは、犠牲者に男性の名前が刻まれている。言わずもがな、昨日の青年であり、そして目の前の私の中にいるらしき彼の名前だろう。


「ははっ、見ろよ。責任10:0でトラックの運転手は捕まったんだとよ」


 笑う彼はどこか嬉しそうである。自分が死んだ事件の何が面白いのだろうか。私には理解できない。


「人が死んだという記事の何が面白いのですか?」


「笑うだろそりゃ。だって俺はまだここにいる。ここで生きてる。トラックの運転手も……恐らくは架空の人物だ。それなのにニュースサイトに出てくるのが面白い以外のなんだって言うんだ」


 言われてみればそうかもしれない。しかし、何か腑に落ちない。


「やっぱりあなたとは分かり合えなさそうです」


「いいさ、俺みたいな人間を中学生が理解しちゃいけない」


「それは——」


「なぁ、腹減ったんだが何かあるか?」


 これ以上は話したくないと言外に滲んでいる気がした。


「そうですね。とりあえず朝ごはんにしますか」


 ちょうど私もお腹が空いてきた。こういうところだけは似てるんだなと思いながら、私はパジャマから部屋着に着替えることにした。


「あのな、一応これでも元男なんだぜ?警戒しろよな」


「……すみません」


 前言撤回。彼に退室してもらってから着替えを始めた。


次こそ遅くなる

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