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そして俺は転職した

徹夜深夜開けテンションなのであしからず

 ああクソ、あのクソ上司、絶対に許さねえ


 ふつふつと湧いてくる怒りを道端の石ころにぶつけながら、俺は街頭のみが照らすオフィス街を駅に向かって歩く。


 なんだかすべてにイライラしてきた。なんでこうクソみたいに駅が遠いんだうちの職場は。しかもなんだ、なんでおれはこんなクソみたいな時間まで残らされたんだ。要領が悪いわけじゃないだろうに。


 それもこれも、全部クソ上司のせいだ、絶対に許さん。


 石ころを大きく蹴り上げたところで、スマホが鳴る。


「ああもう、こんな時間に誰だよ」


 スマホの画面を見て、青ざめる。


「おい、うそだ、嘘だと言ってくれ」


 着信の相手ではない。着信画面のせいで上の方に追いやられた時間の方だ。


「終電……のがしたじゃねえか!」


 地面に膝をつきながら、俺はこんな深夜に電話なんぞをかけてきよったクソ上司に悪態をついてやると着信をとる。


『いやぁ、君、ちゃんと退勤したかと思ってねぇ』


「ええ、おかげさまで退勤して終電のがしたところですよ」


『いやぁ良かったよかった。君、困るよ~。最近は制度も厳しくなってうるさいんだから』


「……せぇ」


『ん?なんだね?』


「うるせぇのはどっちだオラァ!アアン?なんで俺が残業してると思ってんだクソ野郎!俺は仕事しねえどこぞのクソ上司の尻ぬぐいしてやってんだよ!」


『ちょっと君、お、落ち着きたまえ』


「落ち着いてられっか!もう辞めてやるこんな仕事!月曜からは自分で仕事すること覚えるんだな!じゃあな!」


 それだけ言い捨てるとブチっと電話を切る。ついでに俺のキャリア人生もキルっと。ははっ、笑えねえ。


「いいし、俺にはニチアサがあるし」


 先週は休日返上だったため録画した分が残ってる。タクシーでも捕まえてさっさと家に帰ろうそうしよう。こういう日はビールでも流し込みながらアニメ鑑賞するに限る。


【ああ、ちょうど良かった】


 人ならざる声が聞こえたのは、その時だった。


 次の瞬間、俺の胸のあたりは火傷したかのように熱くなり、次第に真冬のような寒さが襲ってきた。何が何だか分からないうちに、気がつけば俺は自分の臓物を食い散らかしているバケモノと目があって、そのあとすぐに視界が真っ暗になった。



 いや、嘘だろ。これこそ嘘だろ。夢だと言ってくれそうじゃないと困る。せめて死ぬにしてもこういい感じの理由がほしかった。ていうかあと三週間くらいでニチアサに追ってたアニメも終わるんだしせめてそのくらいは生かしてくれてもいいんじゃないか?


【生きたい?】


 こんどはさっきのバケモノとは似て非なる声が頭に響いてくる。

 鬼なのか蛇なのか知らないが、生きたいかなんて問いかけてくるのは神みたいなサムシングだと相場が決まっている。


【酷いなぁ。僕は正真正銘の神の使いさ】


 なるほど、つまりは邪神の使いか。俺そんな悪いことしたっけなぁ。


【少なくとも、今の僕は君に助けを求める立場さ。そこだけは信用してほしいな】


 ふむ。この自称神の使いはどうやら話せるやつらしい。それで、生きたいってどういう意味なんだ?


【話を進めさせてくれて助かるよ。いやぁ実は、魂が一人分欲しくてね】


 やはり死神の類いだったらしい。くわばらくわばら。


【だから違うと言っているだろう!とりあえず、僕の下で働いてほしいんだ。その魂でね】


 あ~。その言い方だと、俺は単純に生き返れるわけではない?


【そうだね。体のほうはこちらが用意した器に入ってもらうことになるよ】


 こういうのはブラック企業より真っ黒案件だっておいどんは某創作サイトにて読んだでごわす。


【そうだね。言うならば……3食昼寝付き、現金支給、ただ人間関係はイチから、ってところかな】


 やります。


【そうだよね。これだけじゃ足りないだろうから僕からも少しお金を……。えっ?】


 やります。尊敬する上司様。あなたの下で働かせて欲しい所存です。


【えっ、ええ……?まあ良い返事がもらえて嬉しい限りではあるんだけど……。人選間違えたかな……】


 このとおり!やる気なら十分あります。残業も週に5日いけます。


【……君、何をそこまで……】


 実は……私三度の飯より昼寝が好きでして。ああ恥ずかしいなぁ。だらしないと言われないか我心配ゆえ言い出せなかったでござる。


【不安になってきたけど……まあ大丈夫だろう。それじゃあ採用だ】


 なにかに引っ張られていく感覚がする。


【目が覚めたら改めて僕の担当から説明させるよ】


 いやあ、俺ってば最高にラッキーだな。仕事を投げ捨てた瞬間に次の就職先が決まるなんて。善行を無意識のうちに積んでたのかもしれねえ。まじで俺ってば最高だぜ。



「なんて思ってた俺がバカだったみたいだな」


「ああ!お願いですから足閉じてください。見えちゃいけないもの見えちゃってます!」


「おお、スマンスマン」


 俺は目の前の少女に言われたとおりに足を閉じる。しかし、こう安心感がない。スースーして落ち着かないなぁスカートは。


「しっかし……まぁ不思議なこともあるもんだなぁ」


 俺はクローゼットに備え付けの姿見で自分の姿を確認する。


 そこには、目の前の少女の2Pカラーかとでも言うくらいに瓜二つな姿の美少女が、困惑した顔を浮かべながらポリポリと頬をかいている姿が写っていた。


続かないかも

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