5話 宿舎へ移動しながら初めて魔法を使ってみた
久しぶりに投稿しました。
中々計画的に執筆出来ず申し訳ないです……
全員のステータスが無事に公開され、平均以上のステータスだったのは10人だけだった。
残り14人のステータスは平均という結果だが、極端なステータスは俺しかいなかった。
俺達のクラスは40人くらいいた筈だから、あの時教室にいなかったクラスメイトは異世界召還に巻き込まれなかったようだ。
俺達の世界も今頃大変なことになっているだろうが、俺達はこれからどこに連れて行かれるのだろうかと考えていると、
「これにて皆のステータスを無事に知ることが出来た。いきなり別世界に召還され、さぞ疲れていることだろう」
セドリック皇太子がパンパンと手を叩くと執事とメイドが現れる。
「これからこの二人が皆の宿舎に案内する。男女別々にしているのでくれぐれも間違わないように」
「皆様、今宵はごゆっくりお休み下さい」
皇太子と巫女の挨拶が済むと騎士達と共に歩いて出ていった。
執事に案内され外に出るともう夕方なのだろう、空が夕日で真っ赤になっていた。
「なーんだ、俺達はあの執事に着いていくのか。どうせならメイドさんにお世話されたかったなあ~」
あからさまに残念がる黒東を無視して俺は自分の手をじっと見つめながら宿舎へと足を進める。
(糸魔法ってどこから糸が出るんだ?それよりまずどうやって魔法を出すんだ?)
男子生徒の最後尾を歩いている俺は人差し指を立てて、
(糸出ろ、糸出ろ、糸出ろ)
と心の中で念じてみた。
今は歩いているのは普通の地面なので、地面の色に似た黄土色を頭の中でイメージすると、ニョキっと人差し指から黄土色の糸が出てきたのだ。
(おっ、糸がちゃんと出て色もイメージ通りだ。じゃあ、今度は限界まで伸びるように念じてみるか)
俺は手を下ろして人差し指を後ろに向けると、黄土色の糸は真っ直ぐに伸びてスーっと進んでいく。
しかし50m程で糸はパシンと小さな音をたてて消えてしまった。
まるで何かに当たったみたいだか道が続いているだけで壁や岩などは全くない。
「累、どうしたんだ?後ろを見て何か出たのか?」
「いや、何でもない。でも、ちょっと前の団体と少し間が空いたな」
黒東に声掛けられ咄嗟に誤魔化した俺は、早歩きで前の間を縮めようとすると―
「その言い方は何かあったんだろう。」
ニヤニヤしながらいつもより若干低めのトーンで口を開くと、黒東も早歩きになり俺より本の少し前の位置をキープしながら歩き続ける。
野生の勘とはよく言ったもので、黒東は時々勘が鋭い時がある。
今回もその勘が働いたのだろうと思った俺は観念してさっきの出来事を話した。
「それってもしかして透明化して尾行されてるんじゃないのか?」
「いや、もしそうなら俺が気づいた時点で俺を口封じしてると思う。それにあの執事が気づかないのもおかしいと思う。」
皇太子の命令で俺達を宿舎まで案内してくれているのだから、何かあったら執事が責任を取ることになる。
それこそ首が飛んでしまうかもしれないのだから、尾行を放置している筈がない。
(尾行している奴とグルじゃなければな……)
先頭で俺達を案内する執事の隣には小金井が歩いており、執事となにやら喋っているが、最後尾の俺達には聞こえない。
「じゃあ、お前の糸が消えたのは限界まで伸びたからって事か。累は大袈裟だな~」
黒東はまるで何か起きてほしかったみたいに残念がりながらも、俺をおちょくった風に言ってきた。
俺は手から糸を出すと道の左右にある木の根元に巻きつくように念じると、糸は横にピンと張った状態で木に巻きついてくれた。
俺が糸を出したことに気付いていない黒東はそのまま真っ直ぐ歩いていきそして―
「いっっ!?」
糸に引っ掛かり盛大に転ぶ黒東に前を歩いていたクラスメイト達も気付いて振り替える。
「る、累~、お前の仕業か?」
「黒東はおっちょこちょいだな~。気を付けろよ」
疑惑の視線を向けてくるが俺は黙殺し、いつもからかってくる黒東の口調を真似して手をさしのべる。
俺の手を取り立ち上がりパタパタと制服をはたく黒東は、制服は汚れているものの顔面から転んだ筈なのにかすり傷一つついていなかった。
「こりゃまた派手に転んだな~」
「あんな転び方して無傷とかお前人間か?」
俺達のすぐ前を歩いていたクラスメイトに若干からかい気味に声を掛けられるが、
「いや~何か出て来ないかなと思って、あちこち見ながら歩いてたら転んじまった」
俺が黒東を転ばさして何だが、あっけらかんとした口調で返答する姿を見て人が良すぎるのではと思った。
「最後尾の皆様、余り離れすぎないようにお気をつけ下さい」
「おい、後ろ!あんまりスティーブさんを困らすな!」
執事さんの声を書き消す位の小金井の大きな声が聞こえる。
「執事の割にはワイルドな名前だな」
「お前執事は皆セバスチャンだと思ってないだろうな」
「いやー、そんな訳ないだろ~」
前との距離を詰めるため小走りで呟きながらツッコミ入れると、黒東は笑って誤魔化している。
一応後方をチラリと視線を向けると、何も変化は無く今まで歩いてきた道が夕日で赤く見えるだけだった。
その色が血のようにやたら生々しく見えてしまったせいか、突如として悪寒に襲われたのだった。
心臓がバクバク鼓動が早く鳴っており、ハアハアと呼吸が浅くなる。
黒東は前にいる生徒と話しながら歩いていたので此方には気付いていない。
俺は深呼吸を繰り返し呼吸を整えながら移動を続けるのだった。
ちょこっとキャラクター紹介
櫻井 貴子
誕生日 4月10日
身長 160㎝
体重 46㎏
帰宅部員だが実は華道の娘であり帰宅後は稽古に励んでおり、発表会では数々の賞を受賞している。
運動は余り得意ではないため累は彼女の高ステータスに驚いていた。
因みに華道の跡取り娘だからと他人に特別扱いされるのは嫌っており、学校では誰にも(教師には他の生徒に口外しないように口止め済み)打ち明けていない。