3話 ステータス公開
暑い日が続いてますが、皆さん熱中症に気を付けてお過ごし下さい。
自分も体調に気を付けながらコツコツ書いています。
「じゃあ、まずは赤池さんから」
小金井は鏡の横に立ち出席番号順にクラスメイトを鏡の前に呼び出す。
その様子はまさにリーダーの様だった。
一番始めに呼び出されたのは、弓道部の赤池真矢さんだった。
彼女は友人に頼まれて弓道部に入った初心者だったが、今では大会のレギュラーを勤める程の実力を持ち、顧問からは『天才』と評されている。
「ここに両手をあてればいいのね」
赤池さんはスタスタと鏡の前に立つと、小金井に確認してすぐに両手を鏡にあてる。
鏡はまた光だしたが小金井程眩しくなく、鏡の前に―
赤池 真矢
レベル1
魔法属性 炎
筋力 16
耐久 19
鋭敏 16
魔力 15
幸運 20
赤池さんのステータスが公開され、小金井より少し低いけれど、またしても平均以上のステータスを持った者が現れたことで周囲から称賛の声が漏れる。
「とても凄いステータスですね」
「……」
笑顔で誉めるルーチェに対し、赤池さんは無言のまま鏡の前から俺達がいる方へ移動した。
「赤池さんもスゲーな!早く俺の番になんねーかな~」
「……」
隣でワクワクしている黒東に対して、俺は内心不安だった。
(小金井も赤池さんも生徒や先生達から称賛されている二人が高いステータスだったということは……)
俺の予測は赤池さんの次の生徒のステータスを見て確信に変わる。
石黒 弘輝
レベル1
魔法属性 岩
筋力 12
耐久 14
鋭敏 10
魔力 11
幸運 10
小金井や赤池さんのように高いステータスではなかったので、公開された後も先程のような歓声はなかった。
(俺達の世界でも、この世界でも優遇されるのは小金井達見たいな人達だろうな……)
まだ自分の番まで間があるが、異世界物の小説や漫画のようにいきなり凄い力が手に入る訳がないと思うと、少し残念な気がした。
何人のステータスが公開されたが、小金井達のような高いステータスの生徒はおらず、そして―
「やっと俺の番か!!」
「鏡に触れるだけなんだからそんなに気張る必要ないだろ」
「なあ、親友が一世一代の舞台に立つのにその塩対応は冷たくないか?」
「まだ半分以上の生徒が残ってるんだからさっさと行ってこい」
しっしっと手を振る俺に黒東はあっかんべーをして鏡の前へと移動する。
「黒東文也です。宜しくお願いします!」
「元気がある少年だな。それでは両手を前に出すがいい!」
黒東の毅然とした態度に皇太子達に好印象を与えたように見えたが、黒東の頭の中は自分の魔法のことで頭がいっぱいだろう。
(あいつも色んな人に好かれるよな)
黒東の陸上部の成績から察するにきっと高ステータスなのは分かるが、どんな魔法属性なのか少しワクワクしていた。
黒東が両手を前に出すと鏡が輝きステータスが公開される。
黒東 文也
レベル1
魔法属性 文字
筋力 16
耐久 16
鋭敏 19
魔力 18
幸運 17
「へ?文字魔法?」
三人目の高ステータスの生徒に騎士達から再び歓声が上がるが、黒東から間抜けな声が漏れていた。
「凄いですね、黒東さん!あなたは優秀な後方支援の魔法使いになれますよ」
「えーと、文字魔法ってのは一体どんな魔法なんですか?」
黒東がステータスが公開する前とは違い弱々しい声でルーチェに質問する。
「文字魔法とはパーティーの前衛に強化をかけたり、魔方陣の作成にも必要な魔法なんです。皆様を召還した魔方陣も文字魔法の使い手の皆さんが作ってくれたんです」
「そうなんですか……」
きっと前衛系の魔法属性が手に入るのだと思っていたのだろう。
皇太子や大勢の騎士達の前でなければ黒東はショックで泣き、違う魔法がいいと駄々をこねたに違いない。
「黒東、お前も凄い魔法で良かったな」
傷心の黒東に小金井が傷口をえぐるような言葉を掛け、黒東にピシリとヒビが入った音が聞こえた気がした。
(ドンマイ、黒東)
心の中で呟かれずにはいられなかった。
ちょこっとキャラクター紹介
小金井 勇(17歳)
誕生日 5月1日
身長 182㎝
体重 67kg
小さい頃見ていた時代劇の殺陣に憧れ小学1年生から剣道を始める。
剣道部主将が生徒会長に任命されたので、彼から生徒会メンバーに抜擢される。
部活や生徒会が忙しくない時は、昔通っていた児童剣道クラブの指導を無償で手伝っている。
黒東から嫉妬の視線を送られているが、自分は何かしたのだろうかといつも考えている。