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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 敵を知り、己を知れば百戦するも危うからずと言ったのは誰だっただろうか。

 ちょっと思い出せないけれど、僕はその言葉はとても正しいと思う。

 だって当たり前の話だけれど、知って終わりはあり得ないから。


 相手を知り、自分を知れば彼我の比較が出来る。

 このままぶつかれば勝てるのか、勝ちが怪しいのか、負けそうなのか、勝ち目なんてないのか。

 だったら普通は、負けそうだったり勝ち目がなかったら戦わないし、勝つ為の準備を積めるだろう。


 勝てない相手が攻め込んで来た場合には?

 それはそもそも勝てない状態で放置してる事が問題だ。

 あらかじめ勝てないと知ってたら、攻められる前に手を打てば良い。

 相手に攻められない状況を作ったり、いっそ素直に腹を見せて降伏したり。


 要するに、知るって事は大事だと言う話である。


 そして僕は、カリーナを知っていた。

 勿論彼女がこの世界に来て築いた軍勢を詳しく知ってる訳じゃない。

 でも魔王としてカリーナの話は伝承に残っていて、同じゲームのプレイヤーとしてはその話から規模の察し位は付く。

 僕も彼女も、一つの基地では拡張し切っても保有できる戦力には限界があるから。


 また配下の構成だって、ある程度の予測は付くのだ。

 例えばカリーナの配下は、僕の組織の怪人と違って、博士が作り出した訳じゃない。

 元よりそう言う姿で生まれてくる、人とは違う異種族だ。

 基地の施設である孵化室の卵から、異種族型の怪人は生まれてくる。

 異種族の怪人は、皆が人の姿に変じる事が出来、知能が高かった。


 しかしそれ故に、カリーナの組織には金森博士やアキの様な、頼れる知恵者が居ない。

 仮に彼女の組織に金森博士やアキの様な人材が居れば、今の様な状況にはならなかっただろうに。


 まぁさて置き、配下は異種族だが、カリーナ自身は僕と同じミュータントの超能力者だ。

 そこは異種族の女王じゃないのかと思わなくもないけれど、彼女曰く異種族の配下は愛でたいが、自分がそうなりたい訳じゃないんだとか。

 カリーナはあまり設定に拘るタイプじゃなくて、戦力としての有利不利や見た目の好みを重視する。

 ナイトメア財団って組織の名前だって、何も考えずにそれっぽいから付けたと言ってた。


 それから組織の運営だけでなく、プレイヤーとしての戦闘スキルも著しく高い。

 そう、そこまで知ってる相手なのだから、当然ながら負ける要素はもう一つも残しちゃいない。

 この戦いは、最初から勝敗の決まった戦いだ。

 


「下級怪人三十、投下開始」

 僕の指示に、用意していた下級怪人達の入った投下用ポッドがカリーナの基地周辺に落ちて行く。

 そう、今僕が全体指揮を行っているのは、カリーナの基地の真上に浮かぶ空中要塞。

 ゲームの中では目立ち過ぎて、直ぐにヒーローに攻め込まれて祭りにされてしまう、キャンプファイアーとまで仇名される基地だけれども、その性能は凄まじい。

 こちらの世界には集団で攻めてくる大量のヒーローが存在しないので、目立つと言う空中要塞の最大のデメリットは、あまり問題にならないのだ。


 何よりも、空中要塞の実装はゲーム開始から一年半位のアップデートなので、確実にカリーナが対策を知らず、意表を突けると言う強みがあった。

 尤も空中要塞の実際の運用は、知識はあれど僕もこれが初めてなので、あまり偉そうな事は言えない。

 そもそもゲームの空中要塞の建設に必要な技術は、一部のお祭り好きのプレイヤー位しかわざわざ取得しなかった代物である。

 よもやその技術、飛行石の開発を、この世界に来てから技術者であるアキが行うとは、僕にも全くの想定外だったし。


 ゲームでの悪の組織同士の抗争は、大体が小競り合いに始まって、小競り合いのままに終わってた。

 小競り合いをしながら相手の基地の位置を探り、見付けて基地攻略戦が始まった所で、大抵ヒーローに乱入されて双方が痛手を負い、手打ちとなる事が多かったから。

 でもこの世界にヒーローは居らず、カリーナの基地の位置は魔王が封じられた地として、ルードリム聖教国、もとい今は聖王の降伏宣言により解体されてミルクトセイラ国に併合されたので、元ルードリム聖教国だった地と言うのが正しいが、そこより更に西へと進んだ場所だと知れている。

 故にこうして、最初からいきなり相手の基地に攻撃を仕掛ける事が出来てしまう。


 今頃カリーナは、狡いと怒り狂っているだろうか?

 それとも冷静に、空中要塞を観察して攻略を練っているだろうか?

 多分後者だとは思うが、狡いと言われれば僕も確かにそうだと思う。

 しかし僕とカリーナには、その位をしないと埋まらない実力差がある。

 だから僕は、彼女の知らない手段を使う事に躊躇いは全く覚えない。


 投下した三十体の下級怪人に対し、カリーナも迎撃用の怪人を地表に転送させて来た。

 これは秘密基地をつくろうでのセオリー通りの防衛戦術だ。

 基地を攻める側はまず下級ユニットを送り込み、保安設備を損耗させる。

 そうしておかなければ中級や切り札である上級ユニットが基地内で、同格のユニットに防衛されると勝てなくなってしまうから。

 まず最初に相手の地の利を削るのだ。


 するとそれを嫌えば、防衛側は攻めて来た下級ユニットを基地の外で防衛するより他にない。

 但し戦場を基地内に移す選択肢を握るのは防衛側で、保安設備を含めた基地施設の恩恵がある以上、基地での戦いは基本的に攻め手側が不利となる。

 昔の城攻めの様に三倍の戦力が必要とまでは言わずとも、同程度の戦力では基地を落とし切る事は不可能だろう。


 なので勿論、僕はその不利を覆すカリーナの知らぬ切り札を、空中要塞以外にも準備していた。

「金森博士、準備は良い?」

 通信機に向かって問い掛ければ、素早く是の答えが返って来た。

 空中要塞は謂わばアキが生み出した切り札だけれど、もう一つの切り札の生みの親は金森博士。

 彼が秘密結社スコルと親交のある竜、ドラゴンロードのロゴスに頼み込んで素材を分けて貰い、それを素にして完成させた、


「邪竜ニーズヘッグ、投下して」

 全長数十メートルの怪獣が僕の二つ目の切り札だ。



 真っ黒な鱗の蛇身の竜が、地に投下されて暴れ出す。

 秘密結社スコルは元の世界でも怪獣を保持していたが、素材が良質だったからだろうか、ニーズヘッグはそれと比べても性能が良い怪獣だった。

 それにしても無精卵とは言え、竜であるロゴスに卵を分けてくれと頼み込んだ当り、金森博士はやっぱりクレイジーだと心底思う。

 僕なんてロゴスが雌の竜である事にすら、どうでも良くて気付かなかったのに。


 まぁそれはさて置いても、怪獣は運用こそ難しいが、べらぼうに強いユニットである。

 それこそ怪獣とまともに戦えるのは、首領やレジェンドヒーロー等の最上位ユニット、或いは巨大ロボット位の物だ。

 また怪獣や巨大ロボットの実装は空中要塞と同時だったので、やはりカリーナはその存在を知らないだろう。

 故に彼女は決して怪獣を所持しておらず、つまりニーズヘッグに対抗できる戦力は、ナイトメア財団にはカリーナしか存在しない。


 そして並の大首領なら兎も角、TOPクラスのプレイヤーである彼女なら、プレイヤースキルでニーズヘッグに勝つだろう。

 でもそれをしてしまえばカリーナは消耗し、その後に僕と戦えば著しく不利に陥る。

 或いは中級、上級の怪人を束にしてぶつけて、数で無理矢理ニーズヘッグを倒すと言う手段もなくはなかった。

 しかしそうなるとナイトメア財団の怪人に甚大な被害が出てしまい、秘密結社スコルの怪人を止める事が出来ない。

 それ等を嫌って仮にニーズヘッグを放置し、基地の奥深くに戦力を温存して耐えようとすれば、怪獣の攻撃は外側からでも基地にダメージを与え、保安設備を始めとした施設を使用不能としてしまう。


 要するに、カリーナがどんな手段を取ろうとも、ニーズヘッグを出した時点で彼女が不利になる事は避けられない。


 だからカリーナは、暴れるニーズヘッグに対して多数の怪人を投入して来た。

 更に彼女自身も、同時に戦場に姿を現す。

 少しでも消耗を、被害を少なくする為、 カリーナの超能力で怪獣の攻撃や動きを防ぎ鈍らせ、多数の怪人の攻撃で一気に仕留める心算なのだ。

 確かにそれはニーズヘッグに対する最適解だ。

 怪獣の事を碌に知らない癖に、やっぱり彼女は正解を選ぶ。


 確かに怪獣は強大な戦力だが、決して無敵の存在ではない。

 最上級ユニットである大首領の力なら一時的にその動きを抑え込む事は可能だし、その間に上級を含む怪人の攻撃を絶え間なく浴びれば怪獣の耐久力であっても削り切られてしまうだろう。

 故に速攻こそが最も消耗少なく、ニーズヘッグを攻略する方法だった。



 ……でも僕は、彼女が最適解を選択すると知っていたから、既にその準備を終えている。

 ニーズヘッグの投下と同時に、空中要塞のジェネレーターで発生したエネルギーを主砲に回して充填していたのだ。

 もしもニーズヘッグに目を奪われず、上空を注視していたら、浮遊の為のエネルギーを主砲に回した空中要塞の高度が徐々に下がっている事に気付けただろう。


「金森博士、ニーズヘッグに防御指示。アキ、空中要塞主砲、発射カウント開始だ」

 空中要塞からの主砲に巻き込まれれば、怪獣であるニーズヘッグとて大きな傷を負う。

 だけどカリーナが率いる怪人達は、大きな傷どころでは済まないだろう。

 そして彼女自身も、死ぬ事はないだろうが、空中要塞の主砲を防げば大きな力の消耗は免れない。


 僕の言葉から三秒後、発射された空中要塞の主砲の光が、視界を真っ白に染め上げた。




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