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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 僕等がこの異世界にやって来てから二回目の収穫後、やはり今年も戦争が起きた。

 けれども今回はミルクトセイラ国から攻める番だ。

 既に小国家群を併合し、ルードリム聖教国は密かに秘密結社スコルの支配下に置かれている為、グランドリア大陸の中央部で敵対する国はフォウン帝国のみ。

 この戦争は、ミルクトセイラ国からフォウン帝国への強襲で始まる。


 当たり前の話だが、フォウン帝国は前年の戦いで負けた相手であり、あっと言う間に国土を倍増させたミルクトセイラ国に対しての警戒は怠らなかった。

 マナウ湖の傍には新たな砦を建設し、併合された小国家群を通っての侵攻ルートにも、防衛戦を築いてた。

 だから本来、フォウン帝国はミルクトセイラ国に強襲など許す筈がなかったのだけれど……。


 ミルクトセイラ国の軍は、本来人が決して立ち入ってはならぬ地である、ロゴス山を越えてフォウン帝国に侵攻したのだ。

 元小国家群からの侵攻ルートを守るフォウン帝国軍の将軍は、その報告を偽報の計略だと判断して動かなかった。

 それも当たり前の話で、ロゴス山に人が立ち入ればドラゴンロードに焼き殺されると言うのは、グランドリア大陸の中央部に生きる人間にとっての常識だったから。

 でも実際にロゴス山を越えてフォウン帝国領内に攻め入ったミルクトセイラ国の軍は、手薄な防衛軍を蹴散らしながら次々に町を陥落させ、あっと言う間に帝都までをも包囲する。


 だが皇帝は、この状況を確かに危機と認めながらも、ミルクトセイラ国の軍からの降伏勧告には応じない。

 と言うのもフォウン帝国の帝都ドラーナは堅固な城壁に守られており、異変を察知した将軍が引き返して来るまでは、籠城すれば容易く持ち堪えられる筈だから。

 そして援軍さえ到着すれば、内と外から包囲を喰い破れるだろうと、そんな風に考えたのだ


 しかしそんな皇帝の甘い考えは、帝都ドラーナの城壁が同時に三ヵ所、大きな爆発と共に破壊されて兵士が雪崩れ込んで来た事で吹き飛ぶ。

 幾ら堅牢と言われようが、所詮は石の壁だ。

 並の人間ならば阻めたとしても、怪人のノックには耐えられない。


 城壁を突き破ったのは、機人グラール、ホオジロ男、そしてカミツキガメリウスの、秘密結社スコルが誇る三体の上級怪人。

 更に彼等が率いる下級、中級の怪人達がミルクトセイラ国の軍と一緒に、帝都ドラーナに突入している。

 フォウン帝国の皇帝には悪いけれど、僕はこの戦いに時間を掛ける心算はさらさらなかった。

 何せこれは八百年も待たせている人を出迎える為の、準備の更に前段階だ。

 無用に焦る心算はないけれど、無駄に時間を掛けて遊ぶ心算もない。


 尤もミルクトセイラ国の軍と一緒に怪人を突入させたのは、モラルの低い兵士の略奪行為を未遂で防ぐ意味合いも大きいけれども。

 これから併合して支配する場所で略奪なんてされたら、後が面倒臭くなるにも程がある。

 それを説明して理解し、納得出来る賢い者はやがて出世をするだろう

 理解出来ぬまでもキチンと従う素直な者には充分な報酬を出そう。

 但し理解もしないし納得もせず、バレなきゃ良いと略奪に走ろうとする馬鹿は、見せしめの対象だ。


 一銭切りなんて故事があったけれども、わかり易いアピールは効果的だった。

 無体を働こうとした兵士を罰すれば、侵略して来たのが弾圧者ではなく、公平な支配者なのだとアピール出来る。

 故に賢い者も、素直な者も、馬鹿者も、等しく僕等の役に立つ。


 皇帝は僕等に捕らえられる最期の瞬間まで、こんな事はあり得ないと叫んでた。

 準備時間はあったとは言え、力の差を悟って自ら降伏したミルクトセイラ国の王は、こうして比べてみると優秀だったんだなと思う。

 ……まぁ未だに名前は覚えてないけれども。



 リザルトを確認すれば、大規模な戦闘での勝利と、フォウン帝国の征服、更にグランドリア大陸中央部の征服の文字が表示され、六百万を越えるポイントが加算された。

 フォウン帝国の征服は、ミルクトセイラ国やルードリム聖教国、小国家群を征服した時と同じ、百万ポイント。

 これはゲームで言う所の地域、都道府県の一つを征服したのと同じ扱いだ。

 でもグランドリア大陸中央部の征服で得た五百万ポイントと言うのは、例えば近畿や四国や中部と言った地方の制圧と同じ扱いになっている。


 勿論、僕はゲーム内で地方の制圧なんて出来なかったし、そもそもそれが達成されたと言う話も聞いた事がなかった。

 だからこれは、偉業と言っても過言じゃないんだろうなと、そう思う。

 だが今の僕は、その偉業を成した感慨には浸れない。

 何故なら先程も言った通り、これは単なる過程に過ぎず。この大量のポイントを得てやっと、僕等は戦いの準備に入れる。


「ノア様」

 傍らに立ち、一緒にモニターを通して戦況を見守っていたカラミティ・クィーンが、僕の名前を呼ぶ。

 振り返れば、彼女は何かを言いたげで、なのに少し迷っている様だった。

 この世界に来て、カラミティ・クィーンが僕を支えてくれる様になってから、もう二年が経つ。

 顔を見ればテレパシーに頼らずとも、彼女の考えは何となくわかる。


 そう、二年の時が経ったのに、僕もカラミティ・クィーンも、その姿は変わらない。

 二年あれば、ボク(ノア)の姿は(秋津・明)に追い付かなければおかしい筈なのに。


「そうだね。お祝い、しなきゃね」

 公にも、戦勝を祝う宴はしなきゃいけない。

 だがそれは一先ずの戦後処理が終わってからだ。

 具体的に言えばフォウン帝国の処遇を決めて、駐留軍以外の兵士達をミルクトセイラ国に戻した後、彼等を主役として行われるだろう。


 でも彼女が言いたいのはそう言う事じゃなく、秘密結社スコルのみで行う、謂わば身内のお祝いだ。

「区切り、ですから。これがノア様にとって覇業の過程に過ぎなくても、私達は前に踏み出せた一歩を喜び、祝いたいと思うのです」

 まぁ要するにカラミティ・クィーンは、気負ってる僕を気遣ってくれていた。

 僕と彼女の距離は、多分少し近くなってる。

 以前なら、出過ぎない様にとこんな風には言わなかっただろうに。

 ただその近くなった距離が、僕にとっては心地良い。


「じゃあ、お願いして良いかな。そう言えば久しぶりにケーキが食べたいね。生クリームがたっぷりの奴」

 僕はそう言って、祝いの準備をカラミティ・クィーンに頼む。

 すると彼女はとても嬉しそうに笑みを浮かべて、

「ノア様の御心のままに」

 すっかり見慣れた一礼をした。



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